第六節 「新たな禁術」
「暇つぶしで会いに来たのかよ……」
こんな統治者で大丈夫か?
大丈夫じゃない。大問題だ。
「申し訳ありません。こういう人なので……」
「照れるのじゃ♪」
「褒めてません! 人前なんですからシャキッと――」
この人、無駄にキャラが濃いな。それに語尾にのじゃとか初めて聞いた。
……まぁ、そのせいか竜らしい威厳がまったく無いんだが……。
「あー……。それじゃあ俺たちは行くから――」
悪いけど、こんなところであまり時間を無駄にしたくない。商人を助けてからおおよそ30分ぐらい経ってる。
「もう行くのか……。 うむ、ではわしらも付いていくとしよう。どうせわしの国を目指してるんじゃろう? それにこの人数を運ぶのに少しは手助けできるぞ?」
「付いてくるのかよ……、まぁいいけど。それより手助けってどうするんだ?」
「ふっふっふ。それは見てからのお楽しみじゃ!」
そう言ってどこからともなく立方体の箱を出してきた。
「心して見よ! わしが開発した最高傑作じゃ!」
そう言って箱を放り投げた。その瞬間、箱が急に変形した。……なんだこれ?
「驚きすぎて言葉が出てこないようじゃのう。これは“自動運搬車”というものじゃ!」
ネーミングセンスはともかく、これってトラック……でいいんだよな? 見た目は四輪の荷車だが。
「お、おう。すげぇな」
「かっこいい!」
「さすがシルヴァ法国の技術力ですね」
「うむうむ! これだけ驚いてくれるとわしも嬉しいぞ!」
うん、まぁ気にせずとっとと運ぶか。
盗賊を運び終わった俺たちは、何故か付いてくることになった2人の竜人を加えて、“自動運搬車”とかいう乗り物に乗って再び移動を開始した。
「そういえば、ナオヒトさん。最後にこの本を読んだのはいつですか?」
最後に読んだのは、アステラが出てきた時だから……。
「丁度、昨日だ。それでアステラが出てきたんだからな。それがどうかしたか?」
「そうですか……。では、いきなりですが読んでみてください。ページは適当で構いませんので。音読もお願いします」
「え!? お、おう。ページは適当でいいんだな?」
ま、適当でいいんならパッと開いたページを読むか。
「んじゃ読むぞ? 『我は焔。蒼く輝く絶対零度の焔。万物を凍らす禁じられし力。我が焔に焼かれし者、悠久の時を過ごすだろう』 これでいいか?」
これを書いた人はアレか。黒歴史を書いたのか。
「……どういう意味なんでしょうか? 炎なのに冷たい……そもそも炎とは違うのでしょうか……ブツブツ」
「あー、アステラさん? 俺が使ってみたらいい話では?」
「なるほど、その手がありました。では早速使ってみてください」
切り替え早すぎ! まぁいいや、とりあえずやってみるか。
蒼くて冷たい炎だろ?
「こんな感じでどうだ!」
そう言って近くにある木に使ってみた。すると――
「ッ!? 青い炎……それに木が燃えて……いや、凍ってる!?」
「おー、一発で成功か。上手くいくとは思わなかった」
これはマジだ。そのまま書かれてたことをイメージしただけだったから、成功するとは思ってなかった。
「これ、お兄ちゃんがやったの? すごい!」
「む? なんじゃこれは!? 木が凍ってるのじゃ!」
「これは……あなたがやったのですか? 一瞬で木を凍らせるなんて一体……」
もしかして、やりすぎたか? 絶対零度ってマジなんだ……。
「驚いてる場合じゃなかった……ナオヒトさん、もう1ページ読んでみて貰えませんか?」
「ん? もう1ページか? んじゃ、ここでいいや。……マジでこれを読むのか?」
「はい、読んでください」
うわぁ……マジか……。これを読むのか……。
「なんじゃ? 何をやるのじゃ?」
しかも今一番聞かれたくない奴も来た……
「んじゃあ読むぞ? ……はぁ。 『やっほー☆ これを読んでるキミ! 読んでるってことは、私の魔術を覚えるときがきたんだね☆ といっても、簡単に覚えられるものじゃないからしっかりと理解するんだぞ☆』 ……読むのが嫌になってきたんだけど?」
「続けてください」
「なんか面白そうじゃの♪」
俺の新しい黒歴史になりました。アステラさんマジ鬼畜。
「『私の魔術は虚無。世界でたった一つの属性だよ☆ でも、この魔術は無にする、とーっても危険な魔術なんだ。わかる? 無にしちゃうんだよ! 想像してみて? 範囲をおーっきくして一つの町にドカーン☆ すると、人どころかその町そのものが地図から消えちゃうんだよ? だからね、もし使うならこれだけは守ってほしいんだ。一つ、絶対に街中で使わないこと。二つ、悪い人と魔物以外には使わないこと。三つ、この魔法を良いことに使うこと。の三つだよ! これだけは絶対守って! あぁ、あとこの魔術はMPをまったく消費しないよ。以上! これで説明終わるよ☆ それじゃ、まったね~☆』……はぁ」
「「……」」
うわぁ……沈黙が重すぎる。にしてもこれは試すの止めといたほうがいいか。
「……虚無の魔術……ですか」
「面白そうと思ったが、そうでもなさそうじゃの。それよりなんじゃ? その本は」
あ、思ってた反応と違う。
この本は国王から任されたけど、そんな軽々と教えるわけにはいかないよな。それに――
「悪いけどそれは教えてやれない。まだ、そっちの名前を教えて貰ってないしな」
「……それもそうじゃな」
まぁ、ずっと教えないってわけにもいかないだろうから、後々教えることになりそうだけどさ。
「そろそろ町に着きますよ」
「おー、もう着くのじゃな」
この町でも観光するか、それともさっさと本国を目指すか、どっちにするか……。
「ドルフへようこそじゃ! この町は特に何も……あぁ、奴隷屋があったのう」
「奴隷屋?」
「うむ。奴隷屋はその名の通り奴隷を売っておる。奴隷の能力にもよるが、旅の仲間には必須と言っていいぐらいじゃ。行ってみるかの?」
「奴隷屋か……」
やっぱ奴隷とかあるんだな……。まぁ旅の仲間は1人でも多いほうがいいのかもな。
「わかった。んじゃあ明日、奴隷屋に行こう。悪いけど、クーはアステラに任せるわ」
「わかりました」
とりあえず、観光するか。それにしても奴隷屋……ね? 一体どんなやつがいるのやら。
*
ここはある森の中。そこをある冒険者のグループが通りかかる。
「シュタットって町、良かったな!」
「あぁ、あそこの食べ物は本当に美味い。それに雰囲気も良かったし」
「確かに、あの町は食べ物良し、雰囲気良し、女の子良し、と悪いところなかったしな!」
「お前はそこしか見てないのかよ……。女の子も良かったけどさぁ」
この冒険者たちも、直仁たちと同じくシルヴァ法国の本国を目指していた。
こちらも魔物と一度も遭遇することなく順調に進めていた。ある場所を通るまでは。
「お、おい! なんだこれ!?」
「き、木が、どうなってんだ!?」
「それもかなり広範囲だぞ!」
思わず立ち止まってしまった。普通ならあり得ない、あり得る筈がない。なぜなら、そこは木が何本も凍っていたのだ。
「誰がこんなのことを……」
こうなった理由を4人は知らない。一人の少年が、とある魔術を試しただけでこんなことになったなんて。
“統治者”と“秘書”の色を書くのを忘れてました。第五節に少しだけ加筆したので、見ていただければ幸いです。
第一節に登場したエルフの“奴隷”の名前を募集しています。(※投稿日から3日後に締切ります)
参考にしたいので感想、評価、と共にお待ちしております!
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