第九節 「クーシアのクー」
グレイプニールって俺がやったせいか? てかスキルになるのかよ。
「どうした? ナオヒトよ。その娘が魔物だったことに驚いておるのか?」
いや、そこじゃないんですが。……もう考えるのはやめるか。
「はい、少々驚いていました。ですが、たとえ魔物であっても俺は気にしません」
「そうか。我々はこの娘に対して処罰は行わない。こんな少女が自ら考えて国に攻撃をするなど考えられないからな」
まぁそうでしょうね。
「では、この娘のことはナオヒトに一任するがよいか? しかし名前が無いと不憫だな……。すまないが名前も頼めるか?」
「わかりました」
「助かる。では、勇者たちはこれからゆっくり休むといい。明日にでもこれからのことを話し合おう」
「ありがとうございます。では私たちはこれで」
そういやあまり休んでなかったな。ゆっくり疲れをとるか。
「んじゃ、部屋に戻るか」
「この子は……直仁君のところかな?」
「任されたからな。嫌だったら誰かに――」
「お兄ちゃんと一緒じゃないと嫌!」
「「「「お、お兄ちゃん!?」」」」
いつの間にか、お兄さんからお兄ちゃんに昇格してた。一体、彼女の中でなにがあったんだ?
「ま、まぁ、この子もこう言ってるからな。そういうことで、とりあえず今日は解散」
「「「「了解」」」」
「……名前どうするかなぁ」
「何の名前?」
「君の名前だよ。名前無かっただろ?」
正直、君って呼ぶとなんか偉そうだし、俺自身が嫌だしな。
「どんな名前がいいとか、あったりするか?」
相手が嫌がる名前を付けるわけにはいかないから、一応聞いておく。
「お兄ちゃんが付けてくれるなら、どんなのでもいいよ!」
おう、一番困る意見だ。どんなのでもか……。
「んー……じゃあ、今から君はクーシアだ。クーシアを短くしてクーって呼んでもいいか?」
「クー?」
「そうそう、クーシアのクー。特に意味はないし、呼びやすいほうがいいと思ったからそうしたんだが……嫌だったら言ってくれ」
自分のネーミングセンスに良いとも悪いとも言われたことがないから知らん。決して飲み物のクーじゃないからな?
「クー! クーがいい!」
本人はクーが気に入ったそうです。内心ほっとした、というのが本音。
「そうか。んじゃこれからクーって呼ぶからな」
「うん! クーかぁ……。えへへ」
名付けて貰ったのが嬉しかったのか、いい笑顔だ。
「じゃあ、俺はこれから寝るけどクーはどうする?」
「クーも一緒に寝る!」
おいおい、マジか。
「べ、別に一緒に寝なくても――っておわッ!?」
「むー……。お兄ちゃんはクーと一緒に寝たくないの?」
「いや、そういうことじゃなくてだな」
俺より年下の子と寝るとなると、なんか犯罪臭がして気が引けるんだよ!
「わ、悪かった。それじゃあ一緒に寝よう」
これ以上拒否し続けると機嫌を損ねそうだからな……。
「わーい!」
まぁ楽しそうだし、いいかな。
「それじゃあお休み。また明日な?」
「お休みなさい!」
そう言って俺は目を閉じた。……これからこの世界でどうするかなぁ。まぁ、明日に考えたらいいか。
「うーん……んー……。ふわああ……」
外が明るい。朝になったらしい。まだ少々眠気はあるが、いつも通りだ。さっさと起きて……ん? 腕が妙に重いな――
「ってなんだ、クーか」
クーが俺の腕を思い切り抱きしめていた。抱き枕がわりか? ……そういやクーのことよく見てなかったけど、綺麗な髪だな。それにちゃんと獣耳と尻尾も付いてるし。
「にしてもどうするか……。起こすのも悪いしなぁ。ちょっと試すか」
試すと言ってもただ頭を撫でるだけである。もしかしたら腕を離してくれるかも――
「ふわぁ♪ 駄目だよーお兄ちゃん」
逆に抱きしめられました。しかも、かなり強めに。
「こりゃもう無理だな。起きるまで待つか」
それから数十分後。丁度俺の眠気が覚めてきたころ、クーがようやく起きた。
「ふわああ……。おはようお兄ちゃん……」
「おはよう。眠そうだな?」
「ううん、大丈夫だよー。クー、眠くないよぉ」
完全に寝ぼけてるな。
「ほら、顔を洗いに行くぞ」
「クーも行くー」
俺の腕をつかんでトコトコと付いてくる。
「ほら、着いたぞ。先に顔を洗え」
「ん、んー……ひゃあ!? 冷たい!?」
どうやら冷たかったらしい。……うん、かなり冷たい。
「目が覚めたか?」
「うん。冷たくてビックリした」
「ならよし。ほら、歯を磨けよ?」
「はーい!」
この世界には歯ブラシが無い。しかし、代わりに筆のようなものがある。城にいたメイドさん曰く、筆の先に薬を付けてから磨くらしい。
「ちゃんと磨けたか?」
「うん! ちゃんと磨けたよ!」
「じゃあ、部屋に戻って着替えるか。俺とクーの服は確か――」
異世界から来た俺たちとクーには替えの服が無い。だからメイドさんたちがわざわざ、町から服を持ってきてくれたのだ。一度着てみたが、サイズが丁度良くて生地も良かった。
「んじゃ、クーはここで着替えてくれ。俺はさっきの部屋で着替えてくるから」
「はーい!」
ちなみに、俺たちの制服は各自で持つことになっている。まだ洗剤は持ってないが、手に入れてからしっかりと洗えばまた着れるからということらしい。
「着れたよ、お兄ちゃん!」
「よし、俺も着替え終わったわ。それじゃあ、みんなのところに行くか」
「うん!」
こうして異世界の2日目が幕を開けた。これからのことを見据えて。
クーちゃん可愛いです。
はい、ということで第九節でした! 如何だったでしょうか?
クー、改めクーシアは元々、クーフィアって名前にするつもりでした。ですが、それだと某革命機の人と同じなので少し変えてクーシアとなりました。犬になってしまいますが、妖精のクーシーと掛けたわけでもあります。断じて、飲み物のクーではありません!
現在、第2章に出てくる奴隷の女の子の名前を募集します! 種族はエルフで年齢が98歳(人間でいう12,3歳くらい)、武器が弓で風と雷の魔法が得意な子です。あと、大きい(予定)です。どこがとは言いませんが。
感想、評価、含めてよろしくお願いします!
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