きっかけのあいつ。
言えない……。違うアドレス入力しててログインできなかったなんて言えない……。
というわけでものすごーく短いです。
あの時のパーティーにはもう関わらないように。そう決めてこのゲームを楽しもうとしたが、結局。その後もあの3人――特に魔導士の男はしつこく絡んできた。
おかげで僕はめでたく他プレイヤーが怖くなりましたとさ。……全くめでたくない。
「さて、そろそろ戻るかなぁ」
30分程だろうか。存分に走り回り気分が落ち着いた僕はナセの所へ戻ろうと向きを変え、ふと右の空間に違和感を覚えた。
見た感じでは普通の森。何もおかしなところはない。
だけど、なんだろう。
「なんかチリチリする……」
――手を伸ばして。
声がした。
その声に従い、一歩。
――さあ、手を。
二歩。
――伸ばしなさい。
三歩。
手を伸ばし。
そして。
目の前が白く染まった。
――隠されし兄妹の教会が発見されました。
ミナミが走り出してから少しして。
「そこにいるんだろう? アルベール」
一人となったナセは、頭上へと声をかけた。
「おや、気付いてましたか」
姿を見せたのは魔導士の男。
過去に何度も絡んできた、ミナミが他プレイヤーと組まなくなった原因の人物である。
「アルベール。何故そんなにも俺達、いやミナミに絡む」
「ふふ、前にも言ったじゃありませんか。私はね、ただ彼と遊びたいだけなんですよ」
「にしては随分と厭らしい遊び方じゃあないか」
まあ確かに。アルベールは頷き、こんな遊び方しか教えてもらえませんでしたからね、と少し寂しそうに呟いた。
「あ、でもでも今回は私じゃあありませんよ? ただストーキングしてただけで」
「それはそれでどうかと思うが」
アルベールはそれに笑みで答える。
「ところでナセ君。ここにイノシシの肉があります。干し肉です。とても美味です」
取り出した袋を片手にくるくると回る。
くるくる、くるくる。くるくる、くるくる。
ああ、と。
「……目が回りました」
「何がしたいんだお前は」
「いえね、これは君達と初めて会った時のドロップなのですが。私、干し肉にしてみたのです。君達に食べてもらいたくて」
その言葉を聞いて、ナセは。
ああ、こいつは本当にわからないんだなと納得した。
他人との距離感がわからない。仲良くなりたいけれどもその方法がわからない。
だから、構ってほしくて狩りの邪魔をする。嫌われたくなくてプレゼントをする。
少しだけ、理解できる。誤解されてばかりの人生だったから。ひたすらに他人を避けていた頃があったから。
「おい、アルベール。お前――」
その時、ピロンと音が鳴る。
「――少し待て、ミナミからコールだ」
「いくらでも待ちますよー。時間はまだまだたーくさんありますし」
「……。おう、ミナミ。どうだ」
落ち着いたか、と続けようとしたナセは。
『ナセ、教会を見つけた! あと迷子だ!』
はあぁぁ、と大きくため息をついた。
「待ってろ、迎えに行くから」




