平凡の逃走
続きましたね、続きましたよ。
オレ、旧姓佐藤隆史です。
今クロンⅢ世って言って、王様業やってます。
で、今は寝室に居ます。だってまだ朝の6時なんだもん。眠たいんだよ許して下さい疲れてるんだよパトラッシュ。つかぶっちゃけ働いたら負けだと思うんだよね。
寝室のベッドで布団にくるまりモゾモゾしながら至福の2度寝を敢行しようと思ったら、寝室のドアが開いて声を掛けられた。
「陛下、起きてください。二度寝なされますと朝の朝議に間に合わなくなってまたアディン様達に苛められますよ?」
優しくぐずる幼子をあやす様な口振りでオレに話し掛けて来たのは、王宮の作法とか全く知らないズブのオレの身の回りの世話をやいてくれるメイドのセイナさん。
水色の髪、クリっとした茶色い瞳、整った小顔、162cm洗練されたモデル体系なパーペキメイドさん。
物腰は優しいし、いつもオレの事を気にかけてくれるし、何よりも右も左も分からなくて自暴自棄になりかけていたオレを慰めてくれたし、イジメンズに対してもオレの為にあれこれ意見してくれる、この世界で唯一オレが心を許せる人なのだ。
そして、この人が傍に居てくれているからこそあのイジメンズにどれだけ罵られ落胆されてもめげないでなんとか王様業をこなして国の為に働けている。
しかし、最近はそんなオレの頑張りが気に食わないのかイジメンズは、いままでしていなかった朝議などの会議や剣の稽古、更には公共事業などの計画をオレにやらせる様になった。
もちろん、最初は訳が分からずイジメンズに助けを求めたのだが、一に溜め息二に罵倒、三四に小言、五に落胆と答えにならない返しを喰らったオレは、セイナさんに予備知識を補って貰いながらそれらの仕事をこなしている。
まぁ殆どが、見積もりが甘いだの考え方が緩いだのこれでそれが出来ると本当に思っているのかなどとダメ出しを受け却下され続けているのだが。
唯一、イジメンズから多くのダメ出しがありながらも渋々朝議を通ったのが前の世界をモデルケースに提案した教育の整備計画だった。
この世界では、識字率が低くてこの国でも15%位らしくしか字の読み書きが出来ないそうで、しかもその殆どが人口的に少ない貴族だけだとか。
それをセイナさんから聞きかじったオレは、イジメンズに一矢報わんとこの計画を提案してみたのだ。
幼児教育の義務化とその費用を国が幇助するといった殆どまんまな提案だったのだが、この計画書類を見たイジメンズは先ず最初にこれは何処から盗んで来たのかとオレに詰め寄って来やがった。
王様が泥棒とかしても意味ねーだろ!
次に一体何処の誰からこの案を買ったのかその金の出所を問い詰められ、挙げ句の果てに三人から口頭尋問を受ける事となったが、それらの詰問に対して全て答えを述べて、またセイナさんにも裏付けをして貰い自身の潔白を証明したのだった。
そして今日の朝議にはその教育計画の予算配分についての審議となっているのだが、正直出たくない。
何せ、オレはこの世界の単価を知らないのだ。
一応予算の見積もりはまとめてあるのだが、お粗末にもまともな物ではないと思うんだよね、イジメンズに嘲笑われるのは慣れたけど一般の文官達に失笑とか嘲笑を貰ったらオレ、軽く窓からI can fly!しちゃうなガチで…だから。
「今日は1日、この部屋でセイナさんと過ごしたいな~」
なんてセイナさんの暖かくてきめ細やかで優しい手を握りながら甘えると、セイナさんは少しだけハニカみながらもオレの提案を却下し、布団と寝間着をオレから剥ぎ取って王様業用の服を着る手伝いをしてくれたのだった。
まだまだ続くのか?続くんです。
甘さ控えめ、健康的です。