三日目 ~ハッピーバースデー~
「ハッピバ~スデ~トゥ~ユ~。ハッピバ~スデ~トゥ~ユ~。ハッピバ~スデ~ディア美穂ちゃ~ん。ハッピバ~スデ~トゥ~ユ~」
火のともったろうそくが目の前にあるホールケーキに一番長いものが二本、その半分ぐらいのものが二本、立っている。
辺りは暗く、唯一光を発しているのはこの四本のろうそくの火だけだ。
「おめでと~、美穂ちゃん」
「は、はい。ありがとうございます」
「ほら、火を消して消して!」
大家さんが誰しもが歌ったことはあるであろう誕生日のお約束を行い、そして終わった後に彼女は大家さんに勧められるままに火を吹き消していく。
火が消えたことで、完全に明かりは立たれ、一瞬何も視えなくなるが、次には部屋の明かりが点き、些か眩しくて目を細めながらも視界にはその全貌が映し出される。
「それじゃあ、このプレゼント、美穂ちゃんにあげるね」
「あ、ありがとうございます!」
「それよりも、寿樹君は渡さなくていいのかな~?」
「えーと、あ。ちょっと部屋に置いてきちゃったみたいなんで、取ってきます」
「あー、それならいいって、終わった後にしなさいな」
ポケットを探ったところプレゼントを忘れてしまったらしく、急いで戻ろうとすると大家さんに止められる。
「それじゃあ、ケーキ分けますね」
「うん、お願い~」
彼女は包丁を取り出すと、ケーキを綺麗に六等分にする。
ケーキは柔らかいはずなのに、綺麗に型崩れがすることなく切られ、それぞれの目の前にある取り皿へと一つずつ置かれていく。
「それじゃ、このチョコの板、美穂ちゃんのにつけましょう」
「は、はい」
大家さんは自分のに刺さっていたチョコ板を手で抜くと、彼女のケーキの上に乗せる。
ケーキの板には、『Happy Birthday MIHO』と流れるような文字で書かれていた。
「じゃあ食べましょうか」
「いただきま~す」
「「いただきます」」
それから、ケーキを食べ終えると、大家さんは酒をかっ喰らい始め、寝た。
眠ってしまっている大家さんをそのまま放置というわけにもいかず、負ぶって彼女と部屋へと連れてって布団を敷いて寝かせた。いい大人が酔いつぶれないで下さいよ。
「それじゃあ部屋に戻ったら、プレゼント持ってくるから」
「はい」
「それじゃ――」
「あ、あの!」
「ん?」
「でしたら、片づけを終えたらこちらから部屋に行きますので、待っていて、ください。それに、話が……あるんです」
「……わかった」
そういった彼女の瞳は、何かの決意を決めたように視えて、ただ頷く事しかできず、部屋へと戻るのだった。
すいません、嘘つきました。
気づいたら22:30で急場しのぎにしかできなくてこんなことになりました。
いや、ホントすいません。
次こそは……次こそは……。