零日目 ~与えられたロスタイム~
『貴方は死にました。いえ、正確には死にます』
――死、ぬ?
『はい』
――どうして?
『覚えていますか? 思い出せますか?』
――……そうか……確か、車に轢かれて
『そうです。貴方は、轢かれそうになった二人の子供を救うために、車に轢かれたのです』
――なら、その子供たちは助かったのか?
『そうですね。助けられる際に転んで膝を擦りむいたくらいですね』
――そっか。だったらそれでいいのかもな
『後悔は、していませんか?』
――してないさ。そもそも……いや言ったところで意味は無いか。とにかく、後悔はしてないさ。
『やはり貴方は、面白いですね』
――面白い? どこが?
『人というのは、過去を得ることで現在を維持し、現在を維持することで未来へ進むものです』
――難しい話はわからないな
『ふふっ、そうですね。普通はそんなことを考える人はいませんね』
――でさ、こっち姿も視えないあなたと話してる?けど、もう死ぬんだろう?
『ええ、死にます』
――そうか、どうな風に死ぬんだろうな? 痛くて死ぬのは嫌だけどさ
『そうですね、その話をするためにここへと本来は来ました』
――え?
『三日、これから貴方は余生を生きてください』
――ちょ、ちょっと待ってくれよ!
『はい』
――どうせすぐに死ぬんだろ?
『そうですね』
――だったら、三日も生きる理由は無いはずだろう
『いいえ、貴方は忘れているだけで、理由はあります』
――あるとしても、忘れていることなんて些細なものだろ?
『それを判断するのは、確かに貴方ですが、それが本当なのか思い出してもらうための、三日です』
――なにより、車に轢かれているんだから身体が動かせないはずだ
『それなら大丈夫です、安心してください』
――お、おい
『では……』