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16話 余計なお世話

熱が38℃あるなか執筆しました。

 パアン!

 部室内に乾いた音が響き渡る。

「もう一度言ってみなさい」

 フレリアは泣きそうな顔で目の前の人物――アルバーナに問う。

「……ああ」

 アルバーナはフレリアによって叩かれた頬を押さえず、ただ淡々と口を開く。

 発表禁止という報告をシノミヤが持って来てから一日経った今日。

 アルバーナはフレリアとメイプルそして翡翠を部室内に呼び、さらに重大な新歓期間中は公演すらできないという内容を発表していた。

「何度も言ったとおり、俺は生徒会の決定に従いこの期間中は何もしないことに決めた」

 そう語るアルバーナの表情は石の様に固い。

 それは普段から不敵な笑みを浮かべて周りを引っかき回すアルバーナとは天と地ほども違っていた。

「――っ!」

 その面を見たフレリアは唇を噛みしめ、アルバーナをもう一度ぶとうと腕を上げたが。

「止めないかフレリア殿!」

 翡翠顔色を変えて後ろから羽交い締めにする。

「此度の責任、ユラス殿に何の非もござらん。ゆえにユラス殿を責めるのは筋違いであろう」

「離しなさい! 離しなさいってば!」

 フレリアは翡翠を払いのけようとするが、翡翠は超人的な力を持つ鬼族。

 ただの人であるフレリアの腕力ではピクリとも動かなかった。

 しかし、そうにも拘らずフレリアはなおも体を動かしながら叫ぶ。 

「私の知っているユラスはこんな無様な真似なんてしない! 常に大胆不敵に笑いながら、障害なんて易々と越えていくのが本当のユラスよ!」

 どうやらフレリアが怒っている理由は決定を覆されなかったことでなく、アルバーナが素直に従っていることが許せないらしい。

「っ!」

 翡翠も思い当たることがあるらしく言葉に詰まる。

「……しかし、ユラス殿も少しは成長したと考えれば――」

「これのどこが成長よ!」

 翡翠の言葉をフレリアはかき消す。

「翡翠も分かるでしょう! 幼少時からユラスの自由奔放さがどれだけ羨ましかったか! こっちが必死に努力しても無意味とばかりに越えていくユラスがどれだけ憎たらしく! 憧れたか!」

 フレリア自身もそれが勝手な幻想だということは承知しているのだろう。アルバーナはアルバーナであり、フレリアの憧れで居続ける役割は無いのだが彼女は止まらない。

「ユラスは常に自由でいるべきなの! 常に私の予想外を起こし続けなければいけないの! 常に――」

「もう止めて下さい!」

 と、ここまで沈黙を保っていたメイプルが声を上げる。

「フレリアさん、これ以上ユラスさんを責めないで下さい!」

 瞳に涙を湛えながら訴える様子のメイプルに対してフレリアは一笑に付しながら。

「はっ! あれほど憎んでいたユラスをさん付けするなんてどういうこと? ユラスはあれほどメイプルのお爺さんを侮辱しておきながらこの醜態に何も感じないの?」

 フレリアの厳しい詰問にメイプルは体を震わせながらもポツリポツリと語り出す。

「……本音はというと私もフレリアさんと同じくユラスに掴みかかって殴りたいです」

 メイプルは続ける。

「あれだけ権力に対する負け犬と嘯いておきながら自分もその権力に従うユラスさんを弾劾したいです」

 ここでメイプルは顔を上げてフレリアを見据えながら。

「しかし! 従わざる得なかった原因を作ったのが私ならば! フレリアさんはユラスさんでなく私を責めるべきなんです!」

「……どういうこと?」

 フレリアが片眉を上げて尋ねるとメイプルは苦しそうな顔をしながら。

「……カナンさんから聞きました」

 カナンの名前が出たことによって無表情を貫いていたアルバーナの顔が僅かに歪ませるが、誰も注目しない。

「先日、生徒会へ自ら出向いて私の粗相を謝ってくれたそうですね」

「カナンから何を吹き込まれたのか知らないがことは単純だ。部員の粗相を部長の俺が謝った、それだけだ」

 アルバーナは何でもないというように首を振るが、メイプルの表情は晴れず。

「いいえ! カナンさんは言っていました! もし私が何もしなければユラスさんは大人しく従わなかっただろうと! ユラスは私の停学と新歓での発表を天秤を掛けて私を取ったのだと!」

 メイプルは涙を溢れさせながらそう嗚咽を漏らす。

「……あの馬鹿」

 その様子を見たアルバーナは心の中でカナンに毒を吐く。

 カナンはメイプルにそう吹き込んだらしいが、実際はそんなやり取りなど全くない。

 形通りの謝罪の後、交渉したが無理だったという至極一般的な流れだったのだが、カナンが相当脚色したのだろう。

「それ、本当なの?」

 フレリアはユラスを鋭く射抜く。

「あんたはメイプルのために大人しく従った。本当にそれで合っているの?」

 フレリアは先程の激情から打って変って落ち着いている。

 まあ、それは表面上なだけで、内側は相も変わらず燃え盛っているが。

「……ふむ」

 アルバーナは考える。

 カナンの嘘は褒められてものではないが、それはアルバーナを想ってのことなので強く責めることはできず、この好意を無碍にして良いのか迷ってしまう。

 だが、それに乗っかることはアルバーナのプライドが許さない。

 しかし、カナンが嘘をついたと言ってしまえば三人の中でのカナンの評価が下がってしまうだろう。

 深呼吸を二、三度する時間が経った後、アルバーナは口を開いてこう言う。

「俺がそう伝えろとカナンに命令した」

 その答えはフレリアもメイプルも翡翠さえも予想外だったのだろう。

 皆しばらく目を点にして沈黙していた。

頭が朦朧としているので推敲など一切行っていません。

なので誤字脱字の報告があればよろしくお願いします。

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