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そして姫君は恋を知る  作者: 未華
狂気と愛情編~そして姫君は想いの名を知る~
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月夜の告白(1)

リルディアーナ視点。

カイルを前に、リルディアーナは話はじめる。


「大丈夫か?」


 茫然としている私にカイルが気遣わしげに言葉をかける。


「……ごめんなさい」

「なぜ謝る?」

「アランは私の友達だから」

「だとしても、お前が謝ることではないだろう。……それに、巻き込んだのはむしろ俺の方だ。俺の所為でお前まで目をつけられた」


 私から視線を外したカイルは苛立たしげに前髪を掻き揚げる。

 アランは暗殺者でカイルの命を狙っていて、私はイサーク・セサルという人に目をつけられているらしい。

 本当に何が何だかわからない話だ。


「ううん。多分、カイルと私のことは別々なんだと思う」


 もしかしてクラウスは、イサークという人を知っているんだろうか?

 アランと昔馴染みなのだからその可能性は高い。

 私はクラウスのこともアランのことも、知らないことがばかりなんだ。

 二人の間に何があって、イサークという人が誰なのかを知りたい。

 そして、私に出来ることがあれば力になりたい。

 もう守られるばかりの子供ではない。

 クラウスが私を守ってくれているように、クラウスのことを守りたい。


(再会したら、ちゃんと聞きださなくちゃ)


 そう固く決心する。 


「リルディ。あいつのこともそうだが……聞いてもいいか? お前のその姿は……」

「あっ!?」


 その言葉で考えにふけっていた私は、今自分がどんな姿かを思い出す。

 元通りの金色の髪。

 本当の私に戻っているんだ。


「私は……」

「そこに誰かいるの~?」


 口を開きかけたその時、私の声を遮る形で女の人の声が聞こえて来た。


(ネリー!?)


 この声は間違いなくネリーの声だ。

 自分の今の姿を考え蒼白になる。

 今この姿を見られるのはまずい。

 どこかに隠れようかとか、何とか誤魔化さなきゃとか、頭をフル回転させてみるけど、唐突すぎて対処できない。


「あれ? そこにいるのって……」


 ちょうど柱の陰になっていて姿は見えないけれど、確実にこちらに近づいてきている。

 ネリーも私たちの存在に気がついたみたいだ。


(だめ! ばれちゃう!!)


 ただその場に立ちつくす私を、カイルが唐突に引き寄せる。


「え?」

「……」


 そのまま私の体を抱きしめ、声のした方に背を向ける。


「へ? カイル様?」


 カイルの胸の中にいる私にはネリーの姿は見えない。

 だけど、ひどく動揺しているらしいネリーの声が聞こえてくる。

 抱きしめられていることと、バレてしまうかもしれない。

 二重の意味で、胸はドキドキどころかドクドクといつもの二倍の速さで脈打っている。


「あ、あの、こんな時間に何をされているのですか?」

「……見て分からぬか? 今、取り込み中だ」


 不遜な口調でそう言い放ち、私を抱きしめる腕に力を込める。


「カ、カイル……」


 その強さにますます鼓動が早鐘し出し、名を呼ぶと目だけで言葉を制される。


「カイル様とリルディ……え? えぇ!? も、申し訳ありません! 私ったら、気が利かなくてっ」

「分かったのなら下がれ。このことは他言無用だ」

「もちろんです! 私、お二人を応援していますから!」


 弾むようなネリーの声が聞こえてきて、見る見る体中が熱くなっていく。

 ネリーはとんでもない勘違いをしている。

 つまりは、カイルと私がそういう仲だと思ったわけで。


(これは金の髪だってバレないためにしていることよ。うん。ただのフリなんだからっ)


 飛び出しそうなほどうるさい鼓動と、真っ赤にほてっているだろう体を鎮めるため、自分自身に言い聞かせるように、何度も心の中で唱える。


「行ったか」


 パタパタと駆けて行くネリーの足音が遠ざかり、ゆっくりとカイルの腕が緩められたのだけど……。


「そこで何をしているのですか?」


 新たな声にギクリと身を固くする。

 カイルにも緊張が走る。

 それもそのはず。

 この声はユーゴさんのものだ。


(な、なんでよりにもよって!)


 ほてっていた体が、今度は一気に冷めていくのを感じる。


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