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そして姫君は恋を知る  作者: 未華
嵐の前触れ編~そして再会は嵐の予感~
78/180

ラブ・トライアングル(1)

リルディアーナ視点。

訪れたその人物の目的とは?


「はぁ~……」

「リルディ、元気ない? 大丈夫?」

「へ? あ、うん。元気だよ! うん。全然元気」


 知らないうちにため息が出ていた私を見つめて、心配そうなラウラに、慌ててニッコリ笑ってみせる。

少しだけ笑みはひきつっていたかもだけど……。


(カイル、どうしたんだろう?)


 ここ最近ずっとカイルに会っていない。

 レイと出会ったあの日、遅れて書庫に行ったけれどカイルの姿はなくて、その次の日もその次の日にも来なかった。

 急に現れなくなったカイルのことが気がかりで、ため息ばかりが出てしまう。


「リルディ!!」

「へ? あれ、ネリー?」

「はい! これ」


 いきなりやって来たネリーは、ティーセットが乗ったトレーを私の前に持ってくる。

 何だか、ちょっと不機嫌そうにも見える。


「えーと? これって……」

「見ての通りのものよ。お客様にお出しして。あなたご指名なのよ」

「私を指名?」

「そっ。客室に案内したら、あなたにお茶を持ってこさせろって言われたの。ここは場末の飲み屋じゃないのよっ。メイド指名なんて聞いたことないわ」


 不満げに口を尖らせている。


「ともかくお茶を出してくればいいのよね?」

「そうだけど。なんかいやーな感じがする。チャラチャラした感じの軟派っぽい男だし、変なことされそうになったら逃げるのよ!」

「う、うん。分かったわ」


 真剣な顔で肩を掴むネリーの言葉に大きく頷いた。


(チャラチャラした軟派っぽい男ってもしかして……)


 何となくその相手が誰なのか分かった気がする。


………………


 お客様がいるという部屋に入ると、予想通りの人物がそこにいた。


「こんにちは。リルディ」


 目の前には人懐っこい笑みを浮かべているレイがいる。


「やっぱりレイだったのね」

「やっぱり? 僕が来ることを心待ちにしていてくれたのかな? それなら嬉しけれど」

「うん。また会えて嬉しいわ」


 実は“チャラチャラした”というネリーの言葉で、レイが思い浮かんだのだけれど、さすがにそんなことは言えなくて、あやふやに笑って誤魔化す。

 と、ふと部屋の隅から微かな溜息が聞こえてくる。


「やれやれ。メイドとの火遊びのために私は酷使されたわけか」


 いきなり聞こえて来た声に驚いて振り返ると、いつの間にかそこにはもう一人背の高い男の人が立っていた。

 サラサラの綺麗な長い黒髪。

 華奢だけど引き締まった体躯。

 レイ同様、北の国風な服装をしている。

 ただレイのように華美なものではなくて、白を基調とした服装には、それほどの装飾もない。

 腰に帯びている大きな剣がひと際目を引く。

 スタスタと私の横を通り抜け、レイの座る客椅子の隣で足を止め、一歩下がり控えるように立つ。


(この部屋にいたことに全然気がつかなかった)


 けっして存在感が薄いわけでもないのに、この人がいたことにまったく気がつかなかった。

 あまりにも唐突な出現に面喰ってしまう。


「人聞きが悪い。遊びじゃない。僕は本気だよ」

「なお悪い」


 機嫌良く答えるレイに、男の人は低く呟き眉をひそめ、私へと視線を向ける。

 口を真一文字に引き結び、どこか不機嫌そうな表情をしている。


「あの?」

「あぁ。こいつは僕の供でテオって言うんだ。ほら? この間、突然いなくなった連れがコイツだ」

「いなくなったのは、お前の方だろう。方向音痴のくせに好き勝手に行動するからそうなる。少しは自覚し……」

「テオ? 君の主は誰?」


 唐突にレイがピシャリと言葉を吐く。


「……」

「誰?」


 憮然とした面持ちのテオさんと笑顔のレイ。


「……お前だ」


 少しの沈黙ののち、憮然とした表情でテオさんは答える。


「誰のおかげで、君はここに居られるんだ?」

「……レイのおかげだ」

「そうだよね? 君は僕の下僕だ」

「あぁ」


 何だか今サラっと恐い言葉を聞いた気がする。

 傍で聞いているこっちが、何だか居たたまれない気持ちになってくる。

 そんなハラハラした私の気持ちを余所に、レイは更に言葉を紡ぐ。


「僕から目を離すテオが悪い。違う?」

「悪かった」

「ふふ。分かればいいんだ」


 爽やか……とも形容できる笑顔でレイはそう言い放つ。


(な、何だかまったく納得できない理由だったけど……)


 あまりのやり取りに、私は口も挟めずにただ二人を見ていた。


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