表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
そして姫君は恋を知る  作者: 未華
出発編~そして姫君は旅に出た~
2/180

姫君、激怒する(1)

リルディアーナ視点。

それが始まりだった。

 小さな頃から聞かされていた両親の恋物語。

 寝物語に聞かされたそれは、すごく素敵で私の憧れだった。

 いつか好きな人と一緒になりたい。

 それは物心ついた頃からの私の最大の夢だった。


 それなのに……それなのにだ!


 まさかその夢が突然に、こうも呆気なく敗れるなんて誰が想像できただろうか?



「この裏切り者―!!」


 私が渾身の怒りを込めてなげたキルト布のクッションは、目標へと一直線。


「うわっ!」


 見事に命中。


 といっても、フワフワフカフカなものじゃ、ダメージなんて大したものじゃない。

 顔面直撃させても、ちっとも気持ちは晴れない。


「姫様! 気を静めてください」

「うっさい!! 私のこと騙してたくせに!」


 イライラムカムカは健在で、次は手元にあった歴史の教科書を投げつける。


「どわっ!」


 むっ。避けたわね。やっぱりさっきは、ワザと当たったんだ。

 なんて腹の立つこと!


「本は危険……って! ティーカップもダメですってば! それ、イザベラのお気に入りじゃないですか!? 彼女、泣きますよ!」


 冷め切った紅茶を飲み干して、カラのティーカップをふり被った私に、クラウスは悲痛な声を上げる。


「……」


 確かに、ローズの絵をあしらったこのティーカップは、イザベラのお気に入りで、ティータイムによく使われている。

 彼女の柔和な微笑みを思い出したら、とても凶器になんてする気が失せてしまった。


「セ、セーフ……」


 カップを静かにテーブルに戻したのをみて、クラウスは心底安心したように、額の汗をぬぐっている。

 クラウスとイザベラの力関係が見えるわね。

 イザベラはおっとりとしているようで、相手を自分のペースに持ち込むのがうまいから。

 クラウスなんて、簡単に手のひらで転がされているのだろう。


「あのですね、俺は姫様を騙していたわけではなく、口止めされていただけです」


 ぼんやりと、従者カップルの力関係を考えていた私に、クラウスは恐々と言う感じで、そう言い訳をする。


「大して変わんないでしょ! 私に忠誠を誓っている。とか言いながら、騎士として誠意がなさすぎるわよ」

「ですが、王にはお考えがあってのこと。姫様のお心を悪戯に乱すのは、俺の本意でもありませんし」

「もう十分乱れているわよ! 父様の考え? そんなのあるわけないわ。クラウスだって、あの軽い言動の数々を聞いたでしょ!?」


 あぁ。思い出しただけでもムカムカイライラとする。

 話はほんの数分前に戻る。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ