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そして姫君は恋を知る  作者: 未華
再会編~そして想いは一つになる~
158/180

決断の時(1)

リルディアーナ視点。

カイルの置き土産に動揺が続いているリルディだったけど……。


「……」

「……」


 静寂の中、私はエルンについてイセン国城の長い回廊を歩いている。


(エルンに見られた。絶対見られた!)


 去り際にカイルがした唐突な口づけは、エルンの目の前でのこと。

 我に返って振り返ると、エルンの視線はあからさまに別の方へ向けられていた。


(一切ツッコミがないのもまた居たたまれないし!)


 そういうことをするのさえ恥ずかしいのに、それを知り合いの目の前でしちゃうなんて、もうこのまま消えてなくなりたいほどに恥ずかしい。


「リルディアーナ姫」

「は、はい!?」


 唐突に立ち止まったエルンに名を呼ばれ、おかしな声が出てしまった。


「あなたがエルン国の姫君であらせられたとは知らず、ご無礼の数々どうかお許しください」


 固い表情で放たれたのは意外な言葉。


「そ、そんな。黙っていたのは私なのだし、謝ることではないわ。私の方こそ、黙っていてごめんなさい」


 膝を付き頭を垂れるエルンに、私も深々と頭を下げる。


「なっ。こ、困ります。自分のような者に、姫君であるあなたがそのようなことをされてはいけません! どうか顔をお上げください。リルディアーナ姫」

「私だって困るわ。エルンには感謝こそすれ、謝られるいわれはないんだもの。だから今まで通り、リルディって呼んでほしい」


 どこか他人行儀なエルンの声音と言葉使いに戸惑ってしまう。


「そういうわけにはまいりません。一国の姫君にそのように馴れ馴れしく……」

「私、エルンのことは兄様みたいに思っているのよ」


 イセン国で一番初めに親身になってくれた人。

 きっと兄様がいたら、こんな感じなんだろうなって密かに思っていた。


「!!」


 私の発言に絶句するエルン。

 そしてなぜか、そのまま床に手を突き、項垂れている。


「エルン? あの、具合悪いの?」

「い、いえ、ちょっと慣れない響きに胸が高鳴……じゃなくて、動揺してしまいまして」

「? えっと兄様?」

「うっ。……萌え死ぬかも」

「萌え?」


 その単語は、前にネリーから説明されたことがある。

 どういう意味だったっけ?


「な、なんでもありませんっ。その、姫君がそうおっしゃるのであれば、お言葉に甘えさせていただきます」


 エルンはガバリと立ち上がり、少し声を上ずらせながら言葉を放つ。


「姫君?」

「あ、いえ、リルディがそういうのであれば。ははっ。あなたには敵いませんね」


 困ったように苦笑するエルンからは、さっきまでの余所余所しい雰囲気が払拭されて、ほっと胸をなで下ろす。


「ところで、どうしてイセン国城に来たのか、エルンは何か知ってるんだよね? 私には訳が分からなくて。どういうことか教えてほしい」

「……申し訳ありません。自分の口からは言えません」


 私の問いに短い沈黙を挟んでから横に首を振ってから、私の不満げな顔を見て、静かに続けて言葉を放つ。


「ただ、カイル様を信じてください。あの方は本当にあなたを必要としている。そして、あの方だけでなく自分たちも」


 エルンの真剣な眼差しが私を真っ直ぐ見つめている。

 そこには何か強い意志のようなものが見えて、それ以上追及できなくなってしまう。


「ますます意味が分からないわ」

「もうすぐ分かります。残念ながら、自分が案内出来るのは此処までですが」

「え? エルンもどこかに行ってしまうの?」

「大丈夫です。あとは、彼があなたをご案内しますから」


 エルンが視線を向けた先には、あまりにも意外な人物の姿があった。


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