表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
そして姫君は恋を知る  作者: 未華
再会編~そして想いは一つになる~
155/180

イセン国城にて(2)


………………


人払いをし、カイル様へのみメディシス宰相の異変を告げる。


「やはりあの男か」

「完全に動きを読まれていますね」


 すでに“首謀者”が誰であるかは予想が付いていたこと。

 だが、このタイミングはまずい。

 報告によれば、数時間前からレイモンド様の姿も城から消えたという。

 “病に伏している”はずの王が居らず、代理であるレイモンド様も失踪。

 王は魔力を持ち、その力を制御できない身である。

 などと暴露されれば、旧臣たちはメディシス宰相の反乱に加担するだろう。

 カイル様にはまだ味方が少なすぎる。


「今ならまだ城に戻り、メディシス宰相を抑え込めます」


 魔力が安定している今なら、メディシス宰相の目論見を崩すことも可能だろう。

 リルディアーナ姫は他の者に任せ、城に向かうことが得策。

 ここで、王位を失脚させるわけにはいかない。


「ダメだ。レイの元にはテオがいる。俺でなければ、リルディを救い出せない」

「では、王位は諦めると? ですが、それではリルディアーナ姫をランス大陸に奪われることになります」


 ランス大陸に狙われている、リルディアーナ姫を守るためには王位が必要。

 しかし王位をとれば、リルディアーナ姫は連れ去られてしまう可能性が高い。

 レイモンド様の件にも、メディシス宰相が絡んでいるというのは明白。

 二人の王位継承者を遠ざけ、反乱を起こし国を奪う。

 それがいつから計画されていたものなのか、少なくともこれは衝動的ではなく計画的なものだ。

 そう分かるからこそ、迂闊な行動は出来ない。


「俺が時間稼いどいてやるよ」


 沈黙を破ったのはフレデリク・エルン。


「盗み聞きとはいい趣味ですね」


 その気配にまったく気づかなかった。

 警戒をしていなかったわけではないはずなのだが、どうにもこの男は色々な面で規格外すぎる。


「俺の得意技だからな。任せろ」


 胸を張って得意満面なのがまた癪に障る。


「一応言っておきますが褒めていません。それで、時間を稼ぐとは?」

「あぁ。ようは、そいつがリルディアーナを連れて来るまで時間稼げばいいんだろ? イセン国に乗り込んで、難癖付けて足止めしといてやっからさ」

「ですが、他国の王であるあなたを、この国の諍いごとに巻き込むわけには……」

「そんなことを言っている場合か。さっきも言ったが、俺はエルン王としてではなく、リルディアーナの父親としてここにいんだよ。親としては、娘の旦那になる奴が無職じゃ、困るわけだ。素直に頼れよ」

「……ありがとうございます」

「まかせとけ。なぁ、ユーゴ」


 そうくるだろうと思っていたが、いざ自分にふられると閉口する。


「お前さ、そこまではっきりと嫌そうな顔すんなよ。自分の国のことだろ?」

「嫌なのは、あなたと行動を共にしなければならないということです。まったく、エルン国とは二度とかかわりを持ちたくなかったというのに」

「うわっ。冷たいな。アンヌは時々お前に会いたがってるつーのに」

「……そういう無神経な男が王の国だから関わりたくなかったんです」


 それでも今はこの男の力が必要だ。

 あまりにも綱渡りの穴だらけの策。

 それが成功するかは、このフレデリク・エルンにかかっているのだから。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ