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そして姫君は恋を知る  作者: 未華
再会編~そして想いは一つになる~
149/180

闇の中(2)


………………

…………

……


(あれは……)


 どれほど歩みを進めたのか、やがて暗闇にただ一つの光を見出す。

 それは長い長い螺旋階段の先、まるで闇夜に浮かぶ月のように光り輝いている。

 そこにリルディがいるのだと、何の根拠もないというのに分かる。

 引き寄せれるかのように、螺旋階段を上っていく。


「!」


 幾重にも重なる螺旋を進み、やがて光の源へとたどり着く。

 黒い石造りの椅子に身を預け、リルディはそこにいた。

 長い金の髪が光を放ち、透けるように白い肌に純白のドレスを身に纏い、この暗闇に染まることなく容を止めている。

 その神々しく美しい姿に一瞬息を呑む。


「リルディ?」


 名を呼ぶがリルディに反応はない。

 青い瞳は確かにこちらを向いているはずなのに、その瞳に俺が映ってはいない。

 いや、それどころか、その瞳は何も映してはいないのだ。

 まるで心ない人形のように、その場に佇んでいるだけ。


「まさか……」


 跪き触れた頬には確かな温もりがあるというのに、何の反応も示されない。

 これもこの世界が創り出した幻覚であればいいと思う。

 だが、まぎれもなくリルディなのだと、精神だけだからこそ分かってしまう。


「どうすればいいっ」


 容はあるが、心はすでに闇に囚われかけている。

 リルディは魔力を拒絶し、それを自分へと蓄積していくのだと、あの男は言っていた。

 そして、この空間は魔力を吸収する。

 清らかなリルディの中にある魔力はこの空間に蝕まれ、なおかつリルディがこの空間の魔力を吸収しているとなれば、それは毒を摂取しているのと同じこと。

 リルディの力によって、この空間は半永久的に濁った魔力を生み出していくのだろう。

 リルディが完全に闇に呑み込まれ心が崩壊するまで。


「俺はお前を失うわけにはいかない。やっと見つけた俺の生きる意味なのだからな」


 リルディの体を抱き立ち上がる。


「俺が暴走したら止めると言ったのはお前だからな。期待している」


 一か八かの賭け。

 俺の中にある魔力は人のそれより数倍多い。

 であれば、リルディとこの空間。

 二つが吸収する魔力を俺に向けさせればいい。

 少なくとも、俺の魔力はリルディの毒にはならないはずだ。


「常に制御している魔力を解放したらどうなるか、俺にも責任は取れぬからな」


 自分でも無謀な賭けなのだと分かっている。

 それでも事態は一刻を争う。

 なにより、リルディが穢されていくのを黙ってみていることなど出来ない。

 抱き上げたリルディを奪い返すがごとく、空間から切り取られた黒い靄が俺の周りを取り囲む。


「こいつは俺のものだ! 触れるなっ」


 想いを言葉にし、それに同調するかのように、俺の中から発せられた魔力がそれらを蹴散らす。


「リルディ。一緒に帰ろう」


 その言葉が届くことを祈りながら、制御していた魔力のタカを外した。


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