触れ合う心と溢れる想い(2)
「カイルー!」
呼んだ瞬間、喉が詰まって視界が歪む。
「カイル、カイル、カイルッ」
呼びながら涙が止まらなくて声が震える。
迷子の子供みたいに、泣きじゃくる。
涙を止めようと歩みを止めて目をこするけど、涙腺が壊滅的だ。
「リルディ!」
近づいてきた砂馬が嘶き、砂を蹴って止まる。
止まるのとほぼ同時に、馬上の主が飛び降り駆け出す。
「カ……」
私が声を出すより早く、体は引き寄せられ包まれる。
痛いくらいに抱きしめられ、苦しいけれど、深い安堵と心地よさが大きくてそんなの気にならない。
「すまないっ」
声が降ってくる。
低い心地よい声。
「俺は……」
震え声が詰まったのは、走ってきた所為だろうか?
それとも泣いている?
「カイル、好きだよ」
“どうしてココに?”とか“何で謝るの?”とか、色々言いたいことはあって。
でも、口から出た言葉は、ずっとずっと言いたくて、ずっとずっと言えなかった言葉。
「……っ。あぁ。俺も好きだ。お前のことがずっと前から好きだった」
息を詰め目を見開き、次の瞬間に放たれた言葉に、今度は私が言葉を無くす番だ。
(好きって言った。カイルも私を好きだって)
言われた言葉を数秒のうちに何度も頭の中で繰り返して、やっとその言葉の意味を理解する。
「本当に?」
「俺はもう偽らないと決めた。だから自分の運命にも、お前への気持ちにも目を背けない。俺はお前を誰よりも欲している」
優しく口づけされ、驚き見上げると、燃えるように熱い視線とぶつかる。
「私もその……」
カイルの言葉はつまり“一緒にいたい”ということで、それは私も同じだ。
けれど、カイルのようにうまく言葉が出来ない。
そもそもいきなりキスするなんて不意打ちだ。
「私も?」
「えっと、すごくカイルに会いたかった」
促されて何とか言葉を紡ぎだすけれど、この胸を締める想いの半分も言葉に出来ていない。
なんだかもどかしい。
「あぁ、俺もだ」
それでも、ふわりとカイルが嬉しそうに笑って、私も嬉しくてほほ笑み返す。
と、またしてもキスをされる。
「…………。…………っ」
けれど、それはさっきみたいに一瞬のものではなくて、いつの間にか強く激しく深いものに変わっていた。
頭がクラクラする。
体が熱くなる。
まるで嵐だ。
これじゃあ、全部飲み込まれて溶けてなくなってしまう。
「カイ……ん……、ちょっ……、ダメッ!!」
私の叫び声でやっとカイルの動きが止まる。
「く、苦し……」
びっくりした。
息も出来なかった。
今度は酸欠でクラクラする。
(カイルって、こんなに情熱的な人だった?)
未だ抱きしめられたままで、何となく気恥ずかしくて、おずおずとその顔を見上げると、カイルは私を真っ直ぐに見つめていて、バッチリと目が合ってしまった。
「すまない。お前があんまり可愛い顔をするから、歯止めがきかなくなった」
「~っ」
多分、私の顔はユデダコみたいに真っ赤に違いない。
なんてことをすんなりと言うんだろう?
しかもそれを真顔で恥ずかしげもなく言うんだから性質が悪い。
過剰に反応している私が変みたいじゃないか。
それとも、好きあった者同士なら、これは普通のことなんだろうか?
もしそうなら、私の心臓が持つかどうか、本気で心配になってきた。