告げられた真実(2)
「なっ」
その答えに俺を含め、その場にいた面々は絶句する。
当たり前だ。
王族の、しかも王である男に魔力を持つものがいるなど、前代未聞のことだ。
差別をするべきではないことは、分かっている。
それでも、その力は忌み嫌われ蔑まれる。
この大陸では在ってはならない裏切りものの女神の能力。
「良いのですか?」
「隠すだけでは何も解決しないだろう。今回の大元が、“俺の存在”なら尚更だ。逃げることよりも、変革することを決めた。お前たちは反対か?」
凪いだ静かな問いを、ユーゴとエルンストへと放つ。
「あなたが王になったその時から、私はそれを望んでいましたよ」
「……そう決めたのなら付き従うだけです。自分は常に王の盾であり剣ですから」
淀みなく発せられた答えにイセン王は小さく頷く。
世界から蔑まれるその能力を持つものが、この大陸一の国の王。
それはまさしく、世界を揺るがす大きな“変革”となるだろう。
「ファーレンの門の封印が揺らいでいる今、俺の魔力は不安定だ。それを理由に、城を出てこの屋敷に……逃げ込んだ。だからつけ入れられたんだ。リルディを巻き込むことになった。すべては、俺の弱さが引き起こしたこと」
「……」
「俺一人では難しい。どうか、リルディを助けるために力を貸してほしい」
皆を見回しそう言い放ち、深々と頭を垂れる。
「あの! ラウラは全力でお手伝いするのですっ。リルディは大切な友達。何でもしますから」
耳長族の少女は、紅い瞳に劣らず真っ赤になりながら、そう高らかに言い放つ。
「いうまでもありませんわ。姫様を取り戻すためなら、この命をお預けいたしますわ」
「もちろんだ」
イザベラとクラウスは視線を絡め、同時に力強く頷く。
「自分もすぐにも動けます。何なりとご命令を」
「もとよりそのつもりです」
なぜか嬉しそうでもある、エルンストとユーゴの姿は少し癪に障る。
だが……。
「力は貸してやる。あいつはやらないがな」
不本意だが、リディを助け出す為には、この国の者の力を借りることが有効なのだろう。
「ははっ。これはまた異色なメンバーが揃ったもんだな。さて、どうするつもりだ?」
フレデリク王の言葉に、イセン王に皆の視線が注がれる。
「感謝する。……俺はもう逃げない。リルディを助け出し、すべての決着をつける」
押し込めていた感情を解き放ち、前を見据えるカイルワーン・イセンのその瞳には、強い光が宿っていた。