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そして姫君は恋を知る  作者: 未華
すれ違い編~そして想いは交錯する~
129/180

告げられた真実(1)

アルテュール視点。


告げられた事態は、あまりにもありえないことで……。


 その場は水を打ったように静まり返る。

 ユーゴという名の男から説明された事柄は、予想以上に突拍子なく、呆れるくらいにありえない話だった。


「……つまり、そこにいる男は静養中のイセン国王で、リディを保護したというこの屋敷の主だと。そして、リディを連れ去ったのはイセン国王の弟。そういうことで合っているのか?」


 混乱しきった頭で、何とか自分を納得させようと、ありえない現状を言葉にする。


「あぁ。そういうことだ」

「貴様っ」


 すました顔で肯定する目の前の男……カイルワーン・イセンの胸ぐらをつかみ、そのまま殴り倒す。


「っ!」


 何の抵抗もなく俺の拳を受け、カイルワーン・イセンは地面に倒れ込む。


「カイル様!」

「アルテュール殿下っ」


 同時に俺と奴の名が呼ばれ、なおも殴ろうとする俺にクラウスが、地面に倒れ込んだ奴にエルンストが駆け寄る。


「いけませんっ。どうか静まってください!」


 もう一度拳を振り上げる俺を、クラウスが後ろから抑え込む。


「ふざけるなっ。なぜそこまで分かっていて、お前は何もしない! サッサとそいつを捕まえて、リディを助け出せばいいだけだろうっ」


 リディの相手であるイセン王が、こんな腑抜けた男などとは思いもしなかった。

 顔を合わせたその時から、感情らしい感情を見せず、俺に殴られた今ですら、無表情を保っている。

 まるで人形でも殴ったかのような手ごたえの無さに、苛立ちは更に募る。


「落ち着け。アルテュール。ここで揉めても意味がねーだろ。カイルも何当たり前みたいに殴られてんだ?」


 凍り付く空気を溶かすように、フレデリク王は呆れを含んだ声を向け、俺とイセン王を交互に見る。


「ですがっ!」

「怒りは甘んじてうける。だが、後はリルディを取り戻してからにしてほしい」


 何を馬鹿なと怒気を込め睨み、そしてぶつかったその瞳に息を呑む。


(こいつ……)


 その瞳には揺るぎ無い強さがある。

 抑えられた表情だからこそ、その瞳の強さに蹴落されそうになる。


「俺は貴様を認めないっ。だが、今はリディを助けるのが先だ」


 俺の体を拘束するクラウスを払いのけ、吐き捨てるように言い放つ。


「あぁ。感謝する」

「ふんっ」


 自分を殴った相手に、なぜすんなりと礼など口に出来るのか。

 こいつにはプライドがないのか。

 気に食わない。

 俺は、こいつを一生好きにはなれないだろう。

 そう確信した時、イザベラが一歩前へ進み出て口を開く。


「恐れながら私も納得がいきません。なぜ、その弟君を糾弾なさらないのですか?」

「……レイは今、俺の職務を代行し、城に詰めている。そして、今の俺は城には近づけない」


 イザベラの問いに、淡々とイセン王は答える。


「なぜ……とお聞きしてもよろしいですか?」

「今、我が王が動けば、これを仕組んだ人物の思うつぼだからです」


 イザベラに続くクラウスの問いに、ユーゴという執事の男が静かに言い放つ。


「意味が分からない。分かるように話せ。そもそも、王であるお前はなぜ城にいない?」

「我が国のことですので。詳細を話すことは……」

「俺が魔力を持っているからだ」


 言いよどむエルンストを遮り、本人から放たれたのは衝撃の一言だった。


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