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そして姫君は恋を知る  作者: 未華
すれ違い編~そして想いは交錯する~
120/180

脱走大作戦!?(3)

(テオさん!?)


 今まさに部屋の扉を開けた……という状態で、サルのように屋根からぶら下がっている私を見、扉に手をかけたまま硬直している。


「……」

「……あはは」


 間に耐えきれず乾いた笑いを浮かべる。


 バタン。


 無表情のまま、テオさんは何事もなかったかのように扉を閉めた。


(見なかったことにされた!? 何だか捕まるより居たたまれない……)


 誰かを呼びに行ったのかもしれないけれど、さすがにこれ以上この醜態をさらすわけにはいかない。

 バルコニーへ降り立つには少し高さがあるけれど、上に昇る体力がない以上、下に降りるしかない。


「!」


 意を決して手を離した瞬間、目の前にテオさんが現れる。


「お前は本当に一国の姫なのか?」


 呆れたように言い放ちながら、私の体を逞しい腕が支える。


「あ、ありがとうございます」

「お前に傷が付けば、レイに何を言われるかわからない」


 テオさんは空中に浮かんだまま、私の体を支えている。

 一瞬で姿を現し、こうも簡単に空で均衡を保っている。

 やはりテオさんはすごい魔術師なのだろう。


「チッ。貴様には緊張感というものがないのか?」


 思わず見惚れていた私の視線が不快だったのか、彫刻のように綺麗な顔を歪ませ、舌打ちをする。


「ごめんなさい」

「……」


 盛大なため息を吐かれ、バルコニーの上へと降ろされる。


「サッサと部屋に戻れ」

「嫌です」


 私の即答に剣呑な視線を向ける。


「ネリーに会わせてください」

「私にその権限はない」

「それなら、勝手に探します」

「お前を部屋から出さぬように命をうけている。このまま、放置は出来ない」


 そう言い放ち、無造作に私の腕を掴む。


「放してっ」


 キイィン!


「!?」

「!」


 触れた瞬間、耳に痛いほどの高い音と眩い光。

 呆気にとられる私の前には、膝をつき苦痛の表情を浮かべたテオさんの姿があった。


「……お前、何なんだ?」


 何か得体のしれないものを見る眼差しで、驚愕の表情を浮かべている。


「だ、大丈夫?」


 あまりにも顔色が悪いので、今の状態を忘れてオロオロとしてしまう。


「大丈夫なわけがない。今ので、魔力を根こそぎそがれた」

「魔力? あっ」


 その言葉で、前にアランが言っていた言葉を思い出す。

 私には、相手の魔術を無効化できる力があるのだと。


「ごめんなさい。もしかしたら、私の所為かもしれない」

「どういう意味だ?」

「えっと、私、魔術を拒絶できる力があるらしくて」

「!?」


 自分でも半信半疑なその力。

 聞いたテオさんも絶句してしまっている。


(何だか自分で言ってて胡散臭いわ。本当にそうなのか、ちょっと自信がなくなってきた)


 長い沈黙が続いて、居たたまれない気持ちになってしまう。


「……そういうことか。だからあいつは……」

「え?」


 やがて呟いた言葉は断片的で意味の分からない言葉。


「来い」


 立ち上がり、何事もなかったように私を促す。


「だから……」

「会いたいのだろ。お前と来た女に」

「え?」

「会わせてやる。付いて来い」


 急に態度を変えたテオさんに、唖然としてしまう。

 付いていくべきなのか迷う間に、テオさんはサッサと部屋を出て行ってしまった。


「うん。きっと大丈夫」


 今はテオさんを信じよう。

 そう、決心して私はその後を追った。


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