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地上戦機ライジングアース -外伝-  作者: クマコとアイ


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6/6

トムスク、残響

ライジングアースに敗北した後のヴォルガの独白です。

 雪は、まだ降っていなかった。


 トムスクの空は乾いている。

 凍りつく直前の、あの無機質な透明さ。

 何もかもが静止しているようでいて、わずかに軋んでいる。


 ヴォルガは格納庫の奥に立っていた。


 そこには、何もない。


 かつて自分が乗っていた機体の輪郭だけが、空白として残っている。

 整備員たちは、もうその場所を避けることに慣れていた。

 誰も近づかない。誰も触れない。


 敗北とは、こういう形をしている。


 残骸ですらない。

 ただ、そこにあったという事実だけが残る空洞。


 ヴォルガは腕を組み、しばらく動かなかった。


 思い出そうとはしない。

 あの戦いの細部を、繰り返すつもりはない。


 だが、感覚は消えない。


 撃ち負けた瞬間ではない。

 回避を読み切られた、その一拍前。

 あのわずかな遅れ。


 ――あれがすべてだった。


 ミューナイト。

 彼女は、機体ではなく「間」を操っていた。


 そして、もう一人。斎賀。


 あの電子戦の揺らぎ。

 自分の認識に混ざり込んでくる、わずかなノイズ。

 あれがなければ、結果は違っていたかもしれない。


 だが――


 ヴォルガは、そこで思考を止めた。


 「かもしれない」は、敗者の言葉だ。


 事実は一つ。

 自分は負けた。


 それで十分だった。


 ゆっくりと息を吐く。


 悔しさは、ない。

 怒りも、ない。


 ただ、身体の奥に、まだ熱が残っている。


 戦いは終わった。

 だが、自分は終わっていない。


 それだけが、確かだった。


 背後で、金属音がした。


 新しいフレームが搬入されている。

 まだ骨組みにすぎない、無骨な構造体。


 名前は、まだ決まっていない。


 だがヴォルガは、それを見ていた。


 長くではない。

 一瞬だけ。


 そして視線を外す。


 今は、まだ関係がない。


 あれは未来の話だ。


 自分はまだ、そこにいない。


 ヴォルガは格納庫を出た。


 外気は冷たかった。


 だが、その冷たさは心地よい。


 自分がまだ生きていることを、確かめるには十分だった。


 歩きながら、ふと空を見上げる。


 何もない空だ。


 敵も、味方も、存在しない。


 ただ広がっているだけの空。


 ヴォルガは目を細めた。


 そして、ほんのわずかに――


 笑った。


 それは喜びでも、余裕でもない。


 ただ、戦士がまだ戦士であるという、

 それだけの確認だった。


こちらはアイによる執筆でした(本伝のほうはわたしが100%執筆しています)。

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