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俺とギオンとショウは、ゴブリン討伐を済ませて、冒険者ギルドに戻る。
すると、なにかギルド内罵声が聞こえる。
魔導士らしき女と戦士の男が揉めている。
「だから、あの女はダメだって、パーティがまた潰れるわ」
と魔導士らしき女は戦士の男に言っている。
「なんでだ、レベルも高いし、気もきく。いいじゃないか」
と戦士の男は言っている。
「パーティを潰したいの?」
と女は言った。
「パーティは潰したくねぇけど」
と戦士の男は口ごもった。
間で、一人の少女がうつむいたままじっとしている。
俺は、モヒカン頭の受付嬢に話しを聞く。
「何かあったの?」
「えっと……、
あの子は、ちょっと特殊な子で……。
加入をめぐって揉めてるのよ。
うんちょっと待って、センさん。あのギオンさんと、ショウさんとパーティ組んだの?」
「うん、組んだよ」
と俺は答えた。
「いや、結構厄介だって噂だよ。やめといたほうがいいんじゃない?」
と受付嬢は言った。
「あのさ、俺、まともそうに見える?」
と俺は尋ねた。
受付嬢は下から上までじっくりと見る。
腕を組んでしばし考える。
「そうだね。センさんらしいわ。お似合いかも」
と受付嬢は言った。
「だろ」
と俺は言った。
「という事は、彼女も狙い目かもしれない」
と受付嬢は言った。
「どういう事?」
と聞くと、
「あの子、間にいる子ね、レベルは高いんだけど、職業が遊び人で、戦闘では使えない。その代わり、男性相手の商談なら、大幅に有利にできるって能力を持ってるの、ただしパーティクラッシャーって言われていて、彼女が入ったパーティは必ず彼女をめぐって男同士が揉めて、争いが始まり、崩壊するの」
と受付嬢は言った。
「性格が悪いの?」
と俺は率直に聞いた。
「私は性格が悪いとまでは思わないわね。男に媚びるところはあるけど、それは仕方のない事だし、それに私もそうだけど、冒険者って孤児院出身が多いじゃない。彼女のいた孤児院は娼館の近くにあって、その影響を受けてるんじゃないかって話。だったとしたら、不運なのかもね」
と受付嬢は言った。
「どう?彼女含めて4人パーティ。違和感ある?」
と俺は受付嬢に尋ねた。
「センさんなら、大丈夫そうだね。違和感はないわ。オモシロいんじゃない」
と受付嬢は言った。
俺は「ちょいあの子を勧誘していいか?」
とギオンとショウに尋ねると。
境遇が似てるからと、快諾してくれた。
喧嘩はまだ続いている。
割りこんでしまおう。
「ちょっと待て。この子を入れたから、パーティが崩壊したって言ってるが、本気で言っているのか? 」
と俺は言った。
「そうよ。この子はパーティクラッシャーなのよ」
と女は言った。
「そうだ。こいつはパーティクラッシャーだ」
と周りからも声がする。
「じゃあ、なんでこの子を入れたら崩壊した。どうやって崩壊したんだよ」
と俺は聞いた。
「この子を取り合って、男性のメンバー同士が揉めるのよ」
と女は言った。
「なるほどな。それは確かに、この子の取り合いで崩壊したのかもしれない。しかし、それはこの子が悪いのか?」
と俺は言った。
みんなポカンした顔をしている。
「少し聞いたが、この子は遊び人という職業だ。戦闘向きではない。
どちらかというと、戦闘では弱い。
だから愛想を振るまく。
でもそれは自分に危害をくわえられないように、守ってもらおうと考えたゆえの結果だ。
それを勝手に好意だと勘違いして、喧嘩を始めて自滅したんじゃないのか?
仮にAという男だけに愛想を振る舞えば、いざというとき、Aという男以外には守ってもらえない、必然的に、他の男にも愛想をよくする。
客商売なら、普通のことだろう」
と俺は言った。
周りから
「たしかにそうかもしれないな」
という声が聞こえる。
「この子が加入したことで、パーティが崩壊したのなら、そのパーティは、そもそも信頼関係もなにもなく、しかもアホだったという事だ」
と俺は言った。
クスクスと笑い声が聞こえる。
「たしかにな、女の取り合いでパーティ潰れて、それを女のせいとかありえないよな」
そんな声が聞こえる。
「その女はずるい、女の武器なんか使って」
魔導士らしき女は言った。
化粧っけはない、なるほど。そういうことか。
この女、あの戦士の男が好きなんだな。
「あんたの気持ちは少しはわかる。
でも、それなら、男に気持ちを伝えたのか?好意を伝えたのか? 」
そういうと、女は顔を真っ赤にした。
戦士の男は、何を言っているのか理解できていないようだ。
「なぜ女の武器だとわかっているなら、それを磨かない。
冒険者だろ。
スキルは磨くだろ。それがわからないわけでもないだろう。
彼女に、魅力で負けないように、努力しようとしたのか?
それをしないでおいて、ずるいもなにもないだろう。
そうやって、正義ズラした批判するほうが、よっぽどズルい。
いまあんた自分の顔を鏡で見る事ができるか?
嫉妬で歪んだその顔を」
と俺は言った。
女は顔を抑えた。
「あんたはキレイだし、十分魅力的だ。ただその嫉妬という醜い化粧を落とさないと、好きな男はなびかないぞ」
と俺は言った。
女は、戦士の男を引っ張って、外に出て行った。
もめ事がおさまり、冒険者ギルドは、元に戻った。
俺は、問題の女性に近づき、
「という訳で、うちのパーティに入らないか?俺はセン、彼女はヒーラーのギオン、こっちは武闘家のショウ」
そう言った。
「変わり者ね」
と問題の女性は言った。
「そうだよ。自覚がある。でもそれは君もだろ」
と俺は尋ねた。
「そうね。あんたのところなら、居心地はいいかもしれないわね。でも私、悪い女かもしれないよ」
と問題の女性は言った。
「そうかもな。でも俺らは、もっと悪いかもしれないよ」
と俺とギオン、ショウは手を差しだした。
「私はジャよろしくね」
(カーン、カーン、カーン)
街の門を閉じる鐘の音がする。
活気のあった市場は、一転夜の気配に包まれる。
街のあちらこちらに植えられた白い椿のような花は、鐘の音とともに散る。
それはまるで、一つの時代が終わる事を示唆するように。
無常……
そんな、言葉が頭をよぎった。




