ショウ
俺ら二人は、冒険者ギルドの近くの食堂に行った。
常連ばかりの人気店のようだ。
みんな店に入るなり、
「いつもの」
と言い注文している。
あぁいうのカッコいいな。
俺は思った。
いつの日か、常連になって、いつもので覚えてもらう。
俺らは、カウンターに座り、メニューをみる。
(いつもの・・・0.03G)
そう書いてあった。
俺とギオンは目を合わせる。
これってひょっとして、隣の冒険者風の男のメニューを見る。
黒っぽいパンとゆで卵、そしてカフェオレのような飲み物。
背を伸ばし、他のテーブルのメニューも見る。
みんな同じ。
店主がこちらを見て聞く。
「いつもの二つでいいかい?」
俺たちはうなずいた。
カフェオレ風の飲み物は、甘ったるいが、コーヒーのような苦みはなかった。どちらかというと、麦茶に砂糖を加えて、ミルクで煮たようなそんな味だった。
癖はあるが、慣れれば美味いと感じるのかもしれない。
ギオンは気に入っていた。
黒っぽいパンは、ライムギでフランスパンを焼いたような味だった。
独特の風味に、堅めの食感。
周りを見ていると、カフェオレ風の飲み物に浸して食べていたので、真似をしてみた。懐かしい味がした。
隣に少し体格のいい少女が座った。
無駄のない引き締まった身体。
盛り上がる上腕二頭筋に軽装。
戦士職ではない、シーフ……。
いや舞踏家か?
いや舞踏家にしては、筋肉がつきすぎている。
まぁブレイキンなら、あの筋肉もあり得るか。
違うよな、武道家のほうか。
そう思っていたら、少女にどこかの冒険者が絡んできた。
「誰かと思ったら、武闘家のショウじゃねぇか。
まだ武道家なんか使えない職業にこだわってるのか?
シーフとかのほうがマシだろ。
さっさと職替えしろや」
と男は言った。
なんだこの男は……。
「武道家は強い。お前には関係のない話だ。
どっかに行け」
と少女は言った。
「ちっ、生意気な女のくせに、
そんなに筋肉ムキムキになりやがって、
武道家なんか、装備補正が効かない。
魔法使いのほうがいい。
広範囲攻撃できるしな」
男はそういい、どっかに去っていった。
そうか。
この世界には武道家という職業があるのか。
俺はそう思った。
ギルドに顔を出して、モヒカン頭の受付嬢に、聞いてみる。
「武道家っていうのは、数が多いものなのか?」
すると受付嬢は、「昔はいましたが、今は1人だけ、うちでソロでやってもらっているショウって子くらいです。3年ほど前までは、彼女の師匠もおられて、そのお弟子さんたちもおられたのですが、今はもう皆さん現役を引退されて」
と言った。
なるほど……。
レアな職業なんだな。
「ちなみに、モブリストって言うのは多いの?」
と聞くと、苦笑いされた。
どういう意味なんだろう。
俺たちは、ゴブリン討伐のクエストを受注し、森に向かう。
5分ほどすると、ギオンがベストを引っ張る。
俺は警戒態勢に入る。
遠くで、声がする。
静かに近づく。
すると、冒険者が10数体のゴブリンに囲まれている。
これは助けないと、
俺は、スリングに石を乗せ、ゴブリンに向かって投げつける。
(ヒュンーーーどか)まず1
(ヒュンーーーどか) 2
(ヒュンーーーどか) 3
(ヒュンーーーどか) 4
(ヒュンーーーどか) 5
あとは様子を見る。
これで8対1か。
勝てるかな。
おや。あれは、格闘技。彼女はショウって子か。
俺らは戦いを見る。
「彼女、強いな」
と俺は言う。
「本当ですね。なんかカッコいいです」
とギオンは言った。
「前衛とか向きじゃない」
と俺は尋ねる。
「そうですね。接近戦が私たちは得意じゃないので、彼女がいれば、安心です」
とギオンは言った。
それから10分ほどし、彼女は8体のゴブリンを全て倒した。
俺たちは、彼女に近づく。
「ありがとう。助かった」
と彼女は言った。
「君強いね」
と俺は言った。
「師匠が強いからな。でも師匠にはまだまだ追いつかない」
と彼女は言った。
「囲まれてたみたいだけど、なにかあったの?」
と俺は尋ねた。
「子リスがケガをしていて、それを助けようとしてたら、囲まれたんだ」
と彼女は言った。
「子リスは?」
と俺は尋ねた。
「ここだ」
と彼女は胸の中から、子リスを出した。
「それでか。動きがぎこちなかったのは」
と俺は言った。
「よくわかったな」
と彼女は言った。
「カッコよかったからね。本当はもう少し助けたほうが良かったんだろうけど、勝てそうだし、見学させてもらったよ」
と俺は言った。
「そうか、あんたの武器は?あれは石を投げたのか?」
と彼女は言った。
「あっ、俺はセン、職業はモブリスト。武器はスリングっていう石を投げる道具。彼女はギオン、職業はヒーラー。あっギオン、子リスにもヒールできる?」
と俺は言った。
「できるよ。この子にヒールかけても良い?」
とギオンは尋ねた。
「すまん、頼む。薬草しかなくって」
と彼女は言った。
ギオンがヒールをかける。
(神の灯を、生命の息吹を、大地の御使いを、純白の魂に、幸あらんことを……
ヒール)
光が子リスを包み、子リスは元気になる。彼女はギオンに礼を言い、子リスを離す。
「今度はあなたの番よ」
ギオンがヒールをかける。
(神の灯を、生命の息吹を、大地の御使いを、純白の魂に、幸あらんことを……
ヒール)
光が彼女を包み、彼女の傷は消える。
「おぉ、すごいな。ありがとう。なにか礼がしたい。何か欲しいものはあるか?」
と彼女は尋ねた。
「もしよければでいいんだけど、俺たちとパーティを組まないか?」
と俺は尋ねた。
「知らないと思うが、武闘家なんか使えないって言われてるんだぞ。装備補正が効かないから、魔法使いのほうがいいって。そういう奴もいる」
と彼女は言った。
「君はそう思っているの?」
と俺は尋ねた。
「装備補整が使えないのは事実だ。でも使えないかどうかは、私が証明したい。使えるって」
と彼女は言った。
「じゃあ、その使える証明の手伝いを俺たちがするっていうのはどうだ?」
と俺は尋ねた。
「しかし、今あったばかりだぞ」
と彼女は言った。
「まぁいいじゃないか。そんなこと。君に才能に一目ぼれした。それだけじゃダメか?」
と俺は尋ねた。
「ショウだ」
と彼女は手を差し出した。俺とギオンはショウとかたく手を握った。




