スキルとガチャ
この世界に来るまでは、異世界では、レベルが上がれば、スキルが自動で取得できるものだと思っていた。
少なくとも、俺が見たラノベやアニメは、ほとんどそうだった。
なんてeasyモードなんだ。
と今の俺は思う。
この世界のスキル取得は、とにかく金がかかる。
俺らパーティは、それなりの実績を上げているが、余裕はほどんどない。
衣装代や装備品には金はかかっていない。
宿泊代も4人で一人部屋に泊まっているから安い。
ギャンブルもしない。
酒も飲まない。
飲食代もホルモン料理があるから格安。
なのに、余裕がほとんどない。
なぜか?
ほぼすべて貯金とスキル代に消えているのだ。
貯金は報酬の25%を貯蓄する設定にした。
報酬の25%貯金はガス会社の社長の影響だ。
ちなみに前世では5%が限界だった。
たしか本田なにがしという人物がやっていた蓄財法で、その人物は億万長者になったそうだ。
冒険者というのは、ギャンブル性の高い職業だ。
だからこそ、可能なところでは堅実に生きたほうがいいだろう。
この世界では、レベルが上がるとスキルが使えるが……、
このスキルは通販で購入する事になっており……
結構 値段が高い。
もちろん、
このスキル通販も国営だ。
しかも、レベルが上がるたびに、オススメのメールがめっちゃ届く。
ついつい買ってしまうので。
でもろくなスキルがない。
ろくなスキルがないのに、なぜ買うか?
通販のスキルを買うとガチャが回せる。
ガチャのスキルがいいので、ムダスキルをついつい買ってしまうのだ。
例えば、どんな相手でも急所を貫くと倒せる。
急所学というスキルがある。
初級・中級・上級・特級とあり、
これはガチャアイテ厶だ。
例えば、俺の持っている投石初級だと、いくら初級のまま磨いても、ある一定以上にはそのスキルは伸びない。中級、上級、特級を取っていかないとダメなのだ。
しかも、通販のアイテムは人に見せる事はできない。
そしてそれぞれ、取得するのに時間がかかる。
例えばほうるもん料理の初級から中級に行くには、お金だけでなく、ほうるもん料理を15回作る経験が必要になる。
ただ本を読んだだけでは、ダメなのだ。
まぁ俺も含め、みんな無駄なスキルを持っている。
そして無駄なスキルを習得するために、無駄な労力を使っている。
俺は裁縫スキルを中級まで上げたが、修繕する服などもなく、使うことはほとんどない。
中級まで上げるために、ニコニコショップで1か月間毎日夜に2時間、裁縫の手伝いをした。
まぁそこそこいい小遣い稼ぎになった。
別にがちゃをするためだけに、スキルを買ってムダにしてもいいのだが、それはシールが欲しいからと言って、メインのお菓子を捨ててしまうようで、俺にはできなかった。
これは皆も一緒。
だからムダスキルがどんどん増える。
今俺とショウが狙っているのは、急所学の中級。
急所学中級が手に入れば、討伐はかなり楽になる。
先日の腱の話と少しかぶるが、討伐の際に、パワーが必要になるのは、打撃を与えるという思想があるからだ。
それと急所学はまったく違い。
急所学を極めれば、細い針一つで大型の魔物を倒すことさえできる。
これだと、パワーがいらない。
俺のスリングでの投石や、ショウの拳での攻撃も、急所学をベースにすれば、最強クラスに早変わりする。
ギオンが狙っているのは、通る声の中級。
ギオンたちヒーラーは、基本的に手かざしできる範囲でしかヒールを行えない。
しかし、通る声を使えば、離れた位置の仲間にヒールをかけることができる。
初級で10m。中級だと100mまで可能になる。
ジャが狙っているのは、打ち解けるの中級。
ジャは基本的にジャの外観に興味を持つタイプだと、ほぼ100%交渉事を有利にできる能力を持つが、そうでないタイプだと、その能力は発動しない。
しかし打ち解けるの中級を身につければ、外観に興味を持たない相手でも交渉事を有利にできる。
つまりこれで彼女は外交のスペシャリストになれるのだ。
こないだの腱のことと、このスキルの件で、この世界のシステムがうっすらと浮かんできた。
この世界はステータスではなく、どのように要素を使いこなすかが、重要なポイント。
例えば、レベルが上がってスピードが速くなっても、体幹の制御ができなかったり、腱の強度がついてこないと、一回のパンチで身体が崩壊したりする。
つまりもっとも重要なのは、コントロール力。それさえあれば、強大な力はおおきなメリットになる。
しかしコントロール力がなければ、巨大な力はおおきな災いの種にもある。
俺は何かに似ているなと思った。
今日も、一つスキルを習得することにする。
俺はメールを読み込む。
なんだろう。
この『小食スライム』ってスキルは。
68Gもする。
しかも、なんのスキルか書いてない。
皆にも聞いてみる。
誰も知らなかった。
ついでに冒険者ギルドでもみんな知らなかった。
なんだ怪しすぎるな。
やめとこう。
と閉じたら、
(小食スライム注文ありがとうございました)
とメールが来た。
えっウソ。
こないだの。68Gが完全に消えた。
クレームを入れようと思ったが、そんな機能はどこにもない。
まぁ仕方がない。
内容を読んでみるか。
――――
小食スライム
小食スライムとは、スライムの中で特に小食の個体を見つけ、それを仲間にして、いろいろ役に立ってもらうスキルです。
このスキルを購入した時点で、あなたは小食スライムを見分けることができるようになりました。500匹に1匹の割合で出現しませんが、これを取ると、スライムが洗髪の代わりになったり、お風呂で垢を落とす代わりになったりしますので、いつも衛生的に過ごすことができます。
1匹当たりで1日4~5人分の垢を食べることができます。
――――
とあった。
めちゃくちゃ便利そうじゃないか。
俺は皆に説明して、小食スライム探しにでかけた。
まる1週間。
俺らは、スライム多量討伐イベントをやり続けた。
皆、ちょうど上げたスキルがあったので、スライム多量討伐イベントは好都合だった。
そうして小食スライムをついにゲットする。
宿屋に戻り、俺はまず小食スライムを頭に乗っける。
小食スライムは、じわっと頭に浸透し、毛穴から余分な脂分を吸収する。
3分ほどで頭はスッキリした。
みんな興味津々。
ギオン、ショウ、ジャの順に小食スライムを頭に乗っける。
みんなスッキリしたようだ。
この小食スライムは、頭皮の油分は吸うが髪の毛の脂までは吸わないようで、髪の毛は皆洗った後のようにさらさらしていた。
これで終わりにしよかなと思っていたら。
「次は体だよね」
とギオンは言った。
「そうだな。試してみて。セン」
とショウが言う。
ギオンもジャもワクワクして見ている。
俺は服を脱ぎ、小食スライムを体にのせる。
まず顔にべっとりくっつき。徐々に耳や耳の裏、首筋、
わき、腕、胸、お腹、お尻、足、そして……
という順にスライムは動いていく。
みんなスライムをじっと見てる。
恥ずかしい……。
10分ほどたち、全身の汚れを食べ終わったようだ。
皆俺の身体をペタペタ触り、観察する。
「大丈夫そうだね。じゃあ私から」
とショウは服を脱ぎだし、スライムを体に乗せる。
その後、ギオン、ジャとスライムを使った。
心なしか、スライムはお腹いっぱいそうだった。
俺は試しに、革のベストの上にも置いてみた。
先日の戦いで、血が付着しており、黒のベストが濁った黒色になっていた。
みんなワクワクして見ている。これも10分ほどでキレイになった。
「これも試す」
とみんなまた服を脱ぎだす。
だいじょうぶか。スライム。




