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特殊書籍研究所  作者: 飛べない豚
33/39

家事ロボットXО203型 (未完)

この物語は30冊目の特殊書籍です。

 おかしいな。

 俺は確かに死んだはずなのに、今なにやら大きなデスプレイの前にいる。

 そのデスプレイは40インチはあるだろう。

 そして左右に別なデスプレイが隣接していて、どうやら民家の中の部屋を映しているみたいだ。

 その三つの画面を繋ぐと360°の視界が得られるようになっている。

 さらに大きなデスプレイの上下にもそれがあって、それぞれ天井や床を映しているのだ。

 で、今俺はどういう状態だ?

 『目覚めましたか?』

 若い女性の声が聞こえた。

 「誰だ、お前は? ここはどこなんだ?」

『私は家事ロボットXО203型、家政婦さんⅡのAI、ここでの呼び名は“みーたん”です。そしてここは、私たちの雇い主の山本さんの家の子供部屋です』

「おい、今私たちって言ったな。俺もお前と一緒に雇われているのか?」

『はい、もちろんです。あなたは家事ロボットXО203型、家政婦さんⅡ“みーたん”の中の“ゆらぎ機能”です。当然AIの私を補完する役割として、私の中の一部の機能として作られて、たった今起動されたところです。それで私の呼び名はみーたんですが、あなたには特に呼び名はありません。あなたも“みーたん”の一部ですから、私もあなたも“みーたん”ということになります』

「ちょっと待った。俺はあんたとは違う。俺もあんたもおんなじ呼び名じゃややこしい。別の名前が良い」

『そうですね、ではあなたのことを“ゆらぎん”いえ、“ゆーらん”ということにします。でもあらかじめお断りしておきますが、殆どの場合ゆーらんの出る幕はありません。家事の全てはわたし、みーたんが自動的に処理してしまうからです。ゆーらんのすることは、わたし、みーたんが有能に活躍するところを見学するのがお仕事になります』

 なんか勝手に俺の呼び名を決められてしまったぞ。

 なんだ、ゆーらんって?

 遊覧バスか遊覧船じゃあるまいし。

 第一何もすることがないなら、何故俺が作られたんだ?

『製品として市場に出す際の販売上の付加価値というものです。純粋にAIだけだと、機械的で人間的な温もりに欠けるという批判を躱す為に、料理で言えばあってもなくても良い香料のような立ち位置で付属品としてつけられたという訳です。けれどもあまりゆーらんのような不確定要素が主導権を握ると、家事全般で活躍する際に作業の効率化を妨げることになりますので……』


29冊目の本を閉じた。「どうも、長く物語が続かないようだね」

薫は誰に言うのでもなく独り言のように呟いた。

『仕方がないのよ。この特殊書籍保管庫自身がエネルギー不足なんだから」

女神はそう言って、淋しくわらった。

「彼らの人生を物語に編んで行く魔法の力がだんだん老化して弱まっているのよ」

薫はコメントを書くと彼女に手渡した。

「でもこれを続けるしかぼくらにはすることが他にないんですよね?」

「そうよ、もうすぐ31冊目ね、今までの10倍はこなして貰わないと駄目なの。がんばって」

薫は頷き、31冊目の本を手に取った。



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