俺のスキルは人真似、でもオリジナルは譲れない (未完)
この物語は19冊目の特殊書籍です。
浦原伊規
スクールカースト中位
美術部員
俺はあっという間に草原の真ん中にいた。
ここはイアゴル王国のどこかなんだろう。
そして背中にバックパックを背負っていたので、降ろして中を改めることにする。
水筒……皮の袋なんだな。
水が入っているようだが、たぶん生ぬるい。
なんだ、これはビーフジャーキーか?
うわっ、ぺっぺ。塩辛い! それに固い。これが干し肉ってやつか。
パンは黒いな。しかもフランスパンみたいに固いぞ。あと銀貨と銅貨がある。金貨はないな。
あと……自分の髪の毛どうやら茶髪だ。
それにやけに自分の鼻が気になる。
なんかいつもより高くなってないか?
そうだ。ステータスだ。ステータスオープン。
『浦原伊規
普人族
男子
17才
L1
職業
スキル コピー 』
コピー? コピーだって?
模倣? 人真似? パクリ?
イラストレーターを目指してる俺が創作じゃなくてコピー?
ざけんなっ。俺にもプライドってものがあるんだ。
って、それよりこの草原少しのぼりがきつくないか。
やれやれ異世界に来てスキルがコピーとは……。
俺は自分のオリジナルを真似されたり盗まれるのが嫌だし、それと同じくらい人から盗んだりパクったりするのは嫌なんだ。
だからこのスキルは永遠に使わないと思う。
そうして俺は草原を彷徨い続けたんだが……
「大丈夫ですか?」
俺は木陰の地面に横たわっていて、周りに何人もの人が覗き込んでいた。
途中まで覚えていた。
急な斜面を登り詰めたときに集落が見えた気がした。
その途端頭がくらくらして気を失ったんだ。
「丘の向こうから歩いて来た人が突然倒れたから、ここまで運んだんだよ。こんなカンカン照りの日に帽子も被らずに歩けば太陽病になって当たり前だよ」
しきりに俺に話しかけているのは若い青年のようだ。
まだ頭がズキズキして吐き気がするが、どうやら熱中症になったらしい。
ここでは太陽病というのか。
俺は起きようとしたら青年が手を貸してくれた。
その時……
『スキル狩猟をコピーしました』
という声が聞こえた。
俺は茫然とした頭のまま、彼に聞いた。
「あんたは狩人なのか?」
「おお、よく分かるな。どうして分かった」
そう聞かれて俺は返事に詰まった。
「いや……なんとなくそんな感じがしたから」
「そうか、太陽病に効く薬だ。これを飲め」
俺は縁の欠けた茶碗に入った緑色の液体を口元に押し付けられそれを飲んだ。
青汁を以前飲んだことがあるが、それの十倍くらい飲みづらい。
だが飲むとたちまち気分は楽になった。
普通は薬ってそんなに急に効く筈はないのだが、さすがファンタジーの世界だと思った。
しかしそれにしても手を触れただけで相手のスキルをコピーしてしまうなんて……。
俺の選択の意思はなくて、拒否権もないのかって思う。
「私の名前はサガンだ。お前の名は?」
「えっ、イノリだ」
「ほう……イノールか。良い名だ。どこから来たんだ」
名前を間違われたが、訂正しないでおいた。イノール……これで良い。
この後は定番の嘘をついて、記憶がないことにした。
どこかの村出身のようだが、大きな町を目指して旅していたような気がする、とそこまで嘘をついた。
「まあ……まだ若いのに」
ちょっと年上の女性が俺の両頬を手で包むようにして挟んだ。
『料理と家事のスキルをコピーしました』
またもや皮膚接触によって、相手のスキルをコピーしてしまった。
俺のせいじゃない!
「ほんとに記憶をなくすなんて可哀そうに。あっ、あたしはメリルって言うのよ。いつでも相談に乗るから、頼ると良いよ」
料理と家事が得意のメリル姉さんはそう言って励ましてくれた。
どうやらこの村は良い人たちがいるようだ。
けれどもこれ以上身体接触を増やしてはいけない。
どんなスキルを感染されるか分からないからだ。
望まないのに変なスキルをコピーしてしまったら泣くに泣けない。
盗癖スキルとか痴漢スキルとか殺人スキルとかそんなスキルは絶対欲しくない。
薫は本を閉じてコメントを書くと、眠っている転生神の横に置いた。そして20冊目の特殊書籍を手に取って、開いた。
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