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特殊書籍研究所  作者: 飛べない豚
18/39

闇の子 (未完)

これは特殊書籍の17冊目です。


僕は昔から、暗闇の中にいると落ち着く。子どもたちとかくれんぼをすると、僕はなかなか捕まらない。暗い隅っこにじっとしているのが得意なんだ。


暗い場所でなくても、息をひそめてじっとしているのが好きで、周りの子供たちは僕がいることを忘れてしまうことがよくあった。


それと僕は、たまに配給されるお菓子などをすぐに食べないで隠しておくのが得意だ。後で食べようと取っておくのは子供たちの間でもよく見られることだけど、たいていの子は大きい子に見つかって食べられてしまうことが多い。でも、僕が隠すと絶対に見つからない。


別に特別な場所に隠しているわけじゃないんだけど、大きい子は僕が隠している場所に気づかない。もちろん、僕もお菓子を隠した場所の方に目をやることはない。「お前、お菓子をどこに隠したんだ?」という誘導尋問を受けて、うっかり隠し場所の方に目をやることで場所を当てられる、というパターンにはならない。第一、僕は大きい子にそういう誘導尋問を受けることさえないのだ。


スキル判定

僕が12歳になったとき、教会本部の神父が来て、他の同年齢の子たちと一緒にスキル判定を受けた。


一緒に受けた子は、孤児院の同期が僕を含めて4人、街の子が12人いた。本部から来た神父は、水晶の玉でできたスキル判定の魔道具を持ってきていて、名簿に判定結果を書き込んでいる。判定結果は教会本部に報告しなければならないらしい。


水晶にはスキルの種類が映るらしく、本人と神父だけが見ることができる。字が読めない子は、神父が耳元でこっそり教えるようだ。僕は字が読めるけど、読めない振りをしている。基本的に僕は、自分の個人情報を隠すことにしているからだ。


「生命魔法だ!」


スキルの内容を本人以外には言わないはずの神父が、大声で叫んだ。町の子で金持ちのナンシーという女の子が、体を硬直させている。


生命魔法について、僕はシスターから聞いたことがある。生命魔法を使えるのは女性のみで、穢れのない体ゆえに『聖女』と呼ばれる。体の欠損もすべて治し、死直前の重傷もたちどころに回復させる。さらに老人の体を十代後半の絶頂期の肉体に若返らせることもできるという。


当然、王族や有力者を中心に、その聖なる力は常に使われることになる。その力が枯れ果てるまで。けれども、力を使い果たした聖女は、結婚しても子をなすことはない。女の印のないまま年を重ねたため、穢れない体のままだからだ。だから、一生独身で終わるという。


そして、生命魔法のスキルのように国の為になるスキルだけは、このように公表してよいことになっているらしい。つまり、彼女には逃げ場がない。実家にも彼女にも莫大な財産が付与されるが、ただそれだけの話だ。


この騒ぎで、後に残った判定はスピードアップされてあっという間に終わった。


「ロイド・ミズリー、来なさい」


神父が僕を呼んだ。ロイドは僕の名前で、ミズリーは孤児院になっているミズリー教会のことだ。


「水晶玉に手をかざして」


僕は言われた通りに手をかざす。すると水晶玉の表面が暗くなって、そこに闇夜のカラスのように暗い文字で『闇属性魔法』という文字が浮かんだ。


「君、何か見えるか?」

「いいえ」

「じゃあ、スキルなしだ。えーと、次は……」


僕の判定はそれで終わった。神父は僕のように暗い画面の視力が効くわけじゃないらしい。それだけでなく、ナンシーのことで頭がいっぱいで視線が定まっていない。おそらく僕のスキルもろくに見ていないだろう。スキルなしというのもよくあるらしく、珍しいことでもないと聞く。


仲間の所に戻ると、口の軽いエンリコが僕に「どうだった?」と訊く。僕は肩をすくめてみせた。


「なんだ、ハズレか」


エンリコはもう僕に対する関心をなくして、自分のスキルである『鍛冶スキル』のことを他の仲間に喋って自慢している。話し相手は『裁縫スキル』をとったリーサだ。まあ、お似合いかもしれないな。


リーサがエンリコの自慢話を遮って僕の所に来た。

「ねえ、ロイド、本当にスキルがなかったの?」

僕はリーサに対しても肩をすくめてみせる。

「なか……ったんだ。そっか」


なぜかリーサはがっかりした様子だ。それで良い。あとはエンリコのように僕に無関心になってくれ。リーサだけは、かくれんぼの鬼になったときに僕を見つけそうになったことが何度もあるんだ。正直、この子は苦手だ。僕に対して特別な嗅覚を持っているみたいなんだ。まあ、今までは見つかったことはないけど、この先どうなるかは分からない。


リーサとの約束

同じ教会内の孤児院に戻ってから、リーサは僕の所に寄ってきた。何かを嗅ぎつけられるんじゃないかと僕は警戒する。


「ねえ、ロイドはこの後どうするの? 私は裁縫スキルがあるからお針子になろうと思うけど」

「うん、僕のようなスキルなしは冒険者になるしかないと思う」

一応無視できないから答えてやる。

「冒険者ってゴブリンやオークを殺してお金を貰うんでしょ? 危なくない?」

「最初からそんなことしないよ。最初は……」

「分かった、薬草採取でしょ? でも薬草採ってる間に魔物に襲われたりしない?」


なんだ、こいつ。どうしても僕に危険な目に遭わせたいのか?

「違うよ。12歳から僕たちは自活しなきゃいけないんだから、まず仮登録してから街の雑務をやるんだ」

「自活と街の雑務は何が関係あるの?」

「街の雑務にはいろいろな仕事がある。清掃関係や、子守やペットの世話、薬師や料理屋の手伝いって、生活に必要な色々な経験ができるじゃないか。そうすれば、一人で生きていくのに必要な力が身につくんだ。自活に役立つだろう?」

「へえーーーっ」


リーサは僕がそういうことを言ったら、意外な風に驚いてみせた。失礼なやつだな。

「あっ、でも仮登録ってなに? どうして正規に登録しないの? 冒険者になるんでしょ?」

「ここで登録すれば、孤児院出身だってことが全国のギルドに知れ渡る。聞いたことがあるけど、孤児院出身は微妙に差別視されることがあるらしいから、正規の登録は別の街のギルドでやるつもりだ」

「そっかー、ロイドって普段無口で何も考えてないように見えるけど、実は色々考えてたんだねーー」


ほっんっとうに、失礼なやつだな、リーサって。

「そりゃ考えるよ、自分のこれからのことだからな」

「ねえねえ、あたしも一緒に仮登録したらダメかな?」

「お前、何言ってんだよ。お針子になるやつが、なんで冒険者の仮登録をするんだよ」

「だって仮登録って、お試し期間なんでしょ? それでやっぱり冒険者に向かないからやーめたって言っても良いんでしょ? だったら、あたしも自活のための力がつきそうだからやりたいな。でも、女の子一人で荒くれ冒険者の中に入ったら何されるか分かんないから、ロイドにくっついて仕事したいよ。ねっねっ、良いでしょ?」

「断るっ! お前みたいのがくっついてきたら目をつけられるだろうがっ。迷惑だっ。来るなよ。良いか? 断ったからな!」


とんでもない。ただでさえ新人は虐められやすいっていうのに。リーサみたいな目立つ女の子を連れて歩いたら、何されるか分かんないだろっ。


僕は真っ直ぐギルドに向かった。それこそ速足で。何度も後ろを振り返ったが、もちろんあいつはついて来なかった。本当に心臓に悪い。


冒険者ギルドでの出会い

僕は中規模都市である、この伯爵領エジンバラの冒険者ギルドにやって来た。冒険者ギルド・エジンバラ支部は大きな建物だ。


朝のラッシュ時刻は過ぎても、正面のカウンターの前には、冒険者の男たちの列が何列もあった。そういう場所では、若くて美人の受付嬢がいる窓口の横で、女性冒険者パーティが並んでいる。そこの受付嬢は、ベテランの熟女が担当している。たぶん、いやきっと若い頃は相当な美人だったと思われる中年女性が、女性冒険者たちと談笑している。きっと用件はとっくに終わり、情報交換という名の雑談に移っているのだろう。


僕が遠慮がちにその後ろに立つと、メンバーの中の割と若い女の子がすぐに声をあげた。

「あら、この子用事があるみたいだよ、マリッサさん」


マリッサと言われた受付熟女は、体を乗り出して僕の姿を見つけた。

「あら、きっと新規登録ね、こっちに来て、坊や」


僕が女性冒険者たちの方を見て戸惑っていると、

「良いの良いの、この子たちはもう用が済んで暇つぶししてるだけだから、だからこっちに来て」


そして犬猫を追い払うような手つきで冒険者たちに道を開けるよう指示をすると、僕は恐る恐る前に進んだ。


窓口に近づきながら僕は、最初に声をあげた若い女の子の冒険者のことを「さすがだな」と思った。なぜなら、僕は背中を向けている彼女たちの背後を気配を殺して近づいて行ったのに、気づかれたからだ。


「あのう……仮登録ってできますか? 街の雑用を経験してみたいんです」

すると、まだ立ち去らずに留まっている女性冒険者たちがざわめいた。

なに……大したこと言ってないと思うけど、僕のことを珍獣か何かと同列に思って、何か喋っても反応するみたいな……そうなのか?!

「あら、君みたいな男の子だったら、まず魔物を討伐してみたいっていうのが普通なのよ」

女性パーティの中の年長のお姉さんがそう言った。


なるほど。普通にしなくてはいけないな。

「僕は普通で……そうなんだけど……まず冒険者に向いてるかどうか、お試し期間で……やってみようかと」

「うんうん、なるほどね。普通じゃないよね」

「ちょっと、アンネッタ。黙っていて。坊や、名前は?」

「ロイドです」

「じゃあ、代わりに書いとくね。ロイド……っと」


初めから僕が字が書けないことを前提にして、受付熟女は代筆を始めた。失礼なおばさんだな。まあ、書けないふりしてるから良いけど。


「出身は、ここで良いね。ミズリー教会の子かい?」

「はい」

「年齢は、もちろん12歳だね」

「はい」

「で、仮登録の説明をするよ」

「はい、お願いします」

「君、言葉遣いが礼儀正しいね」

「はい……あっ、いいえ」


そこで女の人たちはくすくす笑っている。邪魔だなあ。どっか行ってくれないかな。というか、さっきからあんまりじろじろ見ないでよ。見られることに慣れてないから疲れるんだよ。


「仮登録の期間は1ヶ月。報酬は正規の登録に比べて8がけになる。つまり8割ね。銀貨一枚の仕事が、大銅貨8枚になってしまう。その代わり、いつでも辞められる。まあ、一度辞めたら二度と仮登録もできなくなるけどね。そして1ヶ月過ぎて簡単な試験がある。それに合格したら正式登録になる。分かった? もちろん初めから正式登録することもできるよ。12歳からできることになってるから。試験があるのは同じ。で、どうする、正規の登録にする?」

「いえ、仮登録で」


そこでまた女性グループがざわめく。なぜ、いちいち反応するんだ? 暇人か?

「正規登録したら、私たちのパーティに入れてやろうか?」

「アンネッタ、やめなさい。男心をもてあそぶのは」

「玩んでないよ」

「それでも!……ああ、ロイド君。仮登録中はほとんどが町中のクエストだけど、例外的に他の冒険者がついたら、街の外の薬草採取もできることがあるから、そのときはこの『棘百合のつるぎ』のお姉さんたちに頼んで連れて行ってもらうこともできるよ」

「はい……考えておきます。で、何かこれからできる仕事ありますか?」

「そうねえ」

「あのう……あなたの名前は何といいますか?」

「わたし? そういえば名乗っていなかったわね。私はこの冒険者ギルドエジンバラ支部の副ギルド長のマリッサよ」

「そうですか。マリッサさん、僕に市内の雑役、何か一つありませんか?」


そこでまた外野席がざわめいた。へえーーとかふうーとか、妙に感心したような反応だ。注目しすぎるだろう。僕は思わず振り返って小さい声で言った。


「僕はパンダじゃない……」

「「「えっ?」」」

「えっ?」


「ロイド……君、パンダってなに?」

アンネッタというお姉さんが聞き返してきたけど、僕は答えられなかった。

なんだ?パンダって?咄嗟に口から出たけど、意味不明だ。でも何か言わないと。


「み……見世物じゃないってことだと思います?」

「なぜ疑問形?」

「こらアンネッタ、ロイド君に絡まない。ロイド君、そうね、君が本当に雑役をやる気があるかどうかを試すクエストが一つあるわ」

「クエスト?」

「仕事ってことよ。商工ギルドの方からなんだけど、メインストリートの側溝が詰まっている場所があるの。汚泥が詰まっているから、そこが流れるようにしてくれたら銀貨1枚になる。でも8がけだから、大銅貨8枚ってこと。できるかな?」


汚れ仕事をやらせて、僕のやる気を試しているんだな。

やってやる。3Kなんてへっちゃらだ。ん?3K?なんだったっけ?


「……やってみます」


側溝掃除の裏ワザ

商工ギルドに行くと、窓口嬢のお姉さんが対応してくれた。

「うちも就労斡旋……つまり仕事の世話をしてるんだけど、うちの場合は長期の仕事が多いの。で、冒険者ギルドのクエストって短期……つまりずっと続く仕事じゃなくて、一発仕事が専門でしょ?だから頼んだんだけど、君、ロイド君だったっけ? 大丈夫かな? 結構きついよ」


窓口の女性は胸の名札に『キャサリン』と書いてあった。聞いてもいないことを喋っているのは、商工ギルドの仕事を冒険者ギルドに頼むことに対する後ろめたさかなとも思った。


「大丈夫……だと思います。とにかくやってみます」

「そう? 汚泥を扱うから汚れると思う。まず作業着に着替えて。これが汚泥掬いの道具」


見せたのは、木製のちり取りを深くしたものに長い柄をつけた、角スコップのようなものだ。ん?角スコップ?


「それと、これが天秤棒と桶ね。桶は水だと50リットル入るけど、汚泥を一杯入れると重くて運べないし、途中でこぼして路面を汚すから、半分……いや三分の一くらい入れて運ぶことね。ここに汚泥の溜め池の場所が地図で書いてある。城壁の縁にくっついているけど、反対側の城壁の外側に繋がっているの。そこに汚泥を空けると良いよ。でも間違っても落ちないようにね。底なし沼になっているから、沈んだら助からないから」


「で、汚泥が詰まっている場所はどこなんですか?」

「あっ、そうだったわね。それは……アザート商会の前なんだけど、作業に入る前に商会の人に一言声をかけてね。作業が始まると匂いがすると思うので」


「はい、分かりました。終わったときも商会に報告するんですか?」

「うん、いや。作業の後は多分体が汚れているし、今日一日じゃ終わらないと思うので、今日の分が終わったらこっちに来て着替えてほしい。汚れた作業着はそこの洗濯籠に入れて、明日は新しい作業着を着て行ってね」


なんだかキャサリンさんの口調が、アザート商会に対して遠慮がちな感じがしたので、嫌な予感がした。


アザート商会の前の側溝は、確かに汚泥が路面ぎりぎりまで溜まっていた。詰まっている長さは50mくらいあって、側溝の幅は50cm、深さも棒を突き刺して測るとそれくらいあった。


単純計算すると、12.5立方メートルの汚泥があることになる。これが水だとしても12.5トンで、12歳の少年の僕が、ここから1km以上離れた汚泥溜め池まで運ぶとしても、何往復かかるかということだ。


たとえ桶一杯にして運んでも、2杯分で100リットル、つまり一度に0.1立方メートル。10往復で1立方メートルだから、125往復……走行距離にして250kmになる。水でも満杯なら100kgあるから、汚泥だとその倍の重さがあるはずだ。


これは非力な僕ができる作業じゃない。250人の屈強な男が各自2往復して、ようやく成し遂げられるクエストだ。


商工ギルドは、そんな重労働にたった銀貨1枚の報酬で良いと判断したのだろうか? 銀貨1枚といえば、千円ぽっちだろう。えっ、千円?


おかしい。パンダとか、角スコップとか、千円とか、変な言葉が頭に思い浮かぶ。しかも今日に限ってだ。僕はどうしちゃったんだろう?


そのとき、僕はめまいがしてその場にしゃがみこんだ。何か頭の中に映像と音声が溢れだして、だんだん溢れるスピードが加速していく。そして謎が解けた。


僕は商工ギルドに引き返した。そして窓口で驚いているキャサリン嬢に言った。

「すみません。確かに今日一日ではできない量でした」

「そうでしょう?どう考えても二日か三日はかかるよね。だからアザート商会の人には言ったのよ。それを1日分の日当で済ませようとするんだから、アザート商会ってケチなんですよね」

「いやいや、そんなもんではないですよ。僕がやっても1年以上はかかりますよ。そうですね。一日銀貨1枚で屈強な男が300人ほどいれば一日で済みますが、それでも安いと文句が出るでしょう。第一、300人分の作業着や道具が用意できますか?」

「えっ?」

「良いですか? 汚泥が詰まっている範囲は50mの長さの側溝で……」


僕は自分が計算した通りの結果を教えた。キャサリンさんは僕が示した数値を聞きながらメモして、それから奥の方に走って行った。


やがて奥からキャサリンさんと一緒に出てきたのは、眼鏡をかけた中年男性で、ギルドでも上の立場の人だと思う。

「私はギルド長のエッフェルだ。君が冒険者ギルドから来て、作業の見積もりを出してくれたロイド君かね?驚いたね。実に綿密な計算だ。この見積もりだけで銀貨1枚に相当する。君のクエストは汚泥除去から作業見積もり作成に切り替えて謝礼を払うことにする。除去作業については別途考えたいと思うが、何か良い案はないかね?アザート商会は気難しくて渋くてね。作業着とか道具なんかは300も提供しないだろうし」


そこで僕は用意しておいた案を出した。

「アザート商会は昼間から汚泥除去作業をすると匂いがきついし、店先が汚くなるから、営業が終わってからの作業にしてくれと言いかねません。幸い、僕は夜中に作業専門にしている人たちを知っています。その方たちなら一晩で50mの側溝に詰まった汚泥をすっかり取り除いてくれます。ただし、謝礼は金貨3枚必要です。300人はいませんが、300人相当の作業をこなすのですから、これは必須条件です。どうでしょうか、その見積もりでお金を出す人に交渉してくれませんか?」


「資金は商工ギルドとアザート商会で折半して出すことになるが、分かった。ここで待っていてくれ。今話をつけてくる」


僕はそれを聞いて、気づかれないようににんまりした。ギルド長のエッフェルさんが出かけた後、キャサリンさんが僕に質問した。

「ねえ、ロイド君。君のような子供がどうしてそんな大勢の働き手を知っているの? 商工ギルドでもいっぺんにそんな人数集められないよ? それに、アザート商会は疑り深いから、絶対信用しないと思うよ」


そうか……それじゃあ、ちょっと小芝居をするか。

「キャサリンさん、ちょっとここを空けて、その人たちとつなぎをつけて来ます。すぐ戻りますから」


僕は20分くらい時間を外で潰してから戻った。それから間もなく、エッフェルさんが太った男を連れて戻ってきた。

「なんだ? 見積もりを出したのはこんな小僧か?こんな青二才が作業員を集めるというのか?信用ならん」


僕はこれじゃあ話にならないと思ったが、一応言うだけは言ってみた。

「そうですか。僕は見積もりを出して、その分の謝礼を受けたので、これで帰ります。でも、このままだと大変なことになりますよ。この先汚泥が増えて流れ込んできたら、汚水があふれて店の中まで床下浸水することになります。アザート商会さんの地所は低いので、じきにそうなると思います。そうなったら、僕の知ってる方々にも頼めません」


「お前が必ずそれだけの人員を手配できるという保証はどこにあるんだ?」

「ああ、先ほどちょっとここを抜けてつなぎをつけてきましたが、前金で金貨1枚、後の金貨2枚は明日の朝の結果を見て後払いしてほしいと言ってました。お金は僕に預けるようにとも言ってました。どうしますか?僕は、この後用事があるので、頼まないなら向こうにも断ってきますけど」


アザート商会の男はエッフェルさんと顔を見合わせてから言った。

「あんた、代わりに出しといてくれ。様子を見ることにする」


エッフェルさんは奥に戻って金貨1枚を持って出てきた。

「ロイド君、間違いなく渡してくれよ」


僕が受け取るとすぐに、アザート商会の男は言った。

「良いか。もし相手が仕事もせずに金を持ち逃げしたら、その責任はお前に取ってもらう。お前は奴隷にして、わしの商会でこき使わせてもらうぞ。計算や見積もりができる奴は使い勝手が良いからな」

「分かりました。そうしてもらっても構いません」


僕はそういうと、商工ギルドを出た。その背後でエッフェルさんが相手に言っていた。

「アザート会頭、あんな子供を金貨1枚で奴隷にするつもりですか?」

「ふん、良い買い物だと思うぞ」


僕は肩をすくめてみた。


闇の力、そして王都での生活

僕は前世の記憶をすっかり思い出した。僕は日本のサラリーマンだったのだ。


といっても、僕の家庭は貧困だったため、中学生の頃から新聞配達もやっていたし、高校大学になると毎日バイトで忙しかった。そうやって、やっと就職した会社も真っ黒けのブラック企業で、僕は社畜生活が祟って過労死してこの世界に転生したらしい。


そして、唯一の楽しみはゲームやラノベだった。ただゲームの方は時間がなく、それほど満足するまではできず、もっぱら空いた時間を利用してライトノベルを読むくらいが息抜きだった。


そこで僕は、商工ギルドを抜けた20分くらいの時間で、自分の闇属性魔法の内容を探ってみた。ライトノベルの知識から想定される闇魔法をあれこれ試してみた。


すると『闇収納ブラックホール』というのがあって、普通の収納魔法は出し入れできるが、これは収納のみ、つまり一度入れた物は戻って来ないというわけだ。つまり、収納した物は消滅して二度と元には戻らないということだ。僕はこれを利用して、側溝の汚泥掃除ができると考えた。


けれども、自分がそれをやったとすれば、闇属性のスキルがあることがばれてしまう。そこで、第三者の謎の集団がやったことにすればいいと考えたのだ。


僕はその足で冒険者ギルドに行って、事情を話した。

「で、一応僕は見積もりを出したという功績で、クエストを達成したことにしてくれたらしいです」

「そうだったの? 冒険者は誰も引き受けようとしなかったから、逆に分からなかったのね。商工ギルドもいい加減ね。で、どうするつもりなんだろう? 汚泥があふれれば、町中が臭くなってしまうわ」

「それは向こうでなんとか考えるようです。もうこっちのギルドは関係ないですから」

「それはそうね。うんと悩むが良いわ」


自分のギルドが無関係だと分かると、マリッサさんは目の奥でいたずらっぽく笑っていた。他人の不幸は蜜の味って本当なんだ。


夜中に教会を抜け出すと、僕はアザート商会の前の側溝にたどり着き、闇収納ブラックホールの入り口を汚泥に向けた。

ドボドボドボ……と大量の汚泥が吸い込まれていく。吸い込まれた汚泥は消滅してしまうので、汚泥溜め池に捨てることもない。


朝が明けると、僕は真っ直ぐ商業ギルドに行き、エッフェルさんを連れてアザート商会に向かった。

「ほう……本当に側溝は空っぽになっている。夜中にそれだけの人が動いたんだ」

エッフェルさんは感心して唸った。


アザート会頭も太い腹を揺らせながら出てきた。

「くそっ、本当だったんだな。夜中目を覚ましたが、人の声も物音一つしなかったから、騙されたと思ってた」


それから渋々、金貨1枚と大銀貨5枚をエッフェルさんに渡し、エッフェルさんから僕に追加の金貨2枚が渡された。

「待てっ、その金貨を寄こせ。儂が直接その相手に手渡してやる」

「といっても、誰に渡すのか分からないでしょう? 僕なら間違いなく、この工事をしてくれた人物に手渡しますよ」

「信用できるか! もし相手がお前から受け取ってないと言って、請求して来たらどうするんだ?」

「良いですよ。魔法契約しますか?」

「……くそっ、魔法契約の費用がもったいないから、やめだ」


ああ、なんというケチん坊なんだろう。結局、僕は合計3枚の金貨をゲットしたのだ。


懐が温かくなったところで、まだ油断はできない。闇収納だとなくなってしまうが、『影収納シャドーボックス』だと、どんな厳重な金庫よりも安全だ。何しろ、僕しか引き出せないのだから。つまり僕は、金貨を影収納シャドーボックスに収納して、自立のための資金を溜めておくことにしたのだ。


リーサとのバディ

そうして次のクエストを捜しに冒険者ギルドに行くと、マリッサさんのところにリーサともう一人のメイド姿の女性が立っていた。僕を見るとすぐにマリッサさんが手招きをする。何か嫌な予感がしたが、行かないわけにはいかない。


「ロイド君、君は今日からリーサさんと一緒に街の雑役クエストをうけてもらいます」

「えっ?!」


僕はマリッサさんからリーサの方に視線を移した。僕はリーサを睨みながら、心の中で怒鳴った。

おいっ、お前は何を考えている? 僕は断ったじゃないか? どうして僕に絡んでくるんだ?


すると、リーサと僕の間に入るように、メイド姿の大人の女性が立ち塞がった。そして右手を前に出した。その手には何かの紋章が。


「ご領主様であるエジンバラ伯爵様のご命令です。私は領主家の侍女頭アリエッタです。リーサは当家の侍女に仮採用されましたが、本採用までに準備期間に市井しせいの生活・事情を知るための研修の一環として、冒険者の仮登録をして街中のあらゆる種類の雑事を経験させることになりました。その際、同じ時期に仮登録をして、同じ孤児院出身のロイド君に、一緒にクエストをするバディとして共に行動することを義務付けております。言っておきますが、これは依頼ではなく領主命令なので、拒否することはできません。何か質問はありますか?」


「クエストの回数とかは?」

僕は一応聞いた。

「一通りの種類の雑事を経験することが目的ですので、特に回数は指定しませんが、極端に少ないと判断した場合は、領主権限で仮登録期間を延長することになります」

「はあ、そうですか」

「なお、仮登録のクエスト報酬は8割と聞きましたので、足りない2割分は、領主の方からバディ料として支給します」


ああ、有り難いこった。なんでこうなった? これ絶対リーサが仕組んだよね。


「なお、リーサ及びロイド君のクエストを行う上で、その妨害行為をする者は、領主命の業務を妨害する者として厳罰に処されることになるので、その旨はギルド側から冒険者全員に知らしめることになっています」


うわあああ、目立つことこの上ない。さすがにリーサと一緒にいるときは手を出さないだろうけど、その研修期間とやらが終わったときにどうなるか分からないぞ。終わったら早々にこの街を出なければ……。


「違うのよ、ロイド君」

「何が違うんだ?」


リーサとギルドを出たときに、開口一番彼女の言った言葉はそれだった。


「領主様のところで裁縫スキルのある娘を侍女として雇いたいって言って来たから、面接に行ったの。そこまでは良い?」

「ああ、そこまではな。で、どうして俺が……」

「黙って聞いて、これから話すから」

「ああ」

「で、準備期間があるので何をしたいって聞かれたので、幼馴染の話をしたの……」

「僕のことか?」

「そうよ、黙って聞いて。その人は……」

「僕だろ?」

「良いからっ!その人は冒険者の仮登録をして街中の雑用をしてみたいと言ったの。雑用には生活に欠かせない様々な仕事があるので、自立した生活のための基礎ができるって言ってたのです。ですから、私もそういう経験をして、自立した生活のための第一歩に踏み出してみたいのですと言ったの。その後で、侍女としての仕事はこのお屋敷に来てから一生懸命学びたいと。すると、それは良いことだとご領主様は仰られて、できればその幼馴染と一緒に経験するのが良いと向こうで言われたの。でもロイド君は前に断ってるから、そのことを言ったのだけど」


「わかったよ。どうせ女の子一人にそんなことはさせられないとか何とか言って、僕とセットで行動するように命令してきたんだろ?」

「私、言ったのよ。ロイド君は他の冒険者に目をつけられるのが嫌で、私が一緒だと目立つから嫌がってるって」

「はいはい、それで他の冒険者が嫌がらせしないように領主命令まで出してくれたんだよね。ありがたいよ。どうせ、リーサは雑用が終わったら、はいさよならだろ?残った僕は、どういう顔で他の冒険者たちと過ごせば良いんだよ」

「ごめんなさい」

「良いんだ。どうせ、街の仕事が終わったら、すぐにこの王都から出ていくから」

「……本当にごめんね」


僕はそれ以上は嫌味は言わずに、リーサと一緒に街中のクエストをすることにした。

「領主様はリーサが街の中の雑役を通して、王都の人々と親しく交流することを期待してたんだろう?」

「どうしてそのことを知ってるの?」

「だって、僕が領主だったら同じことを考えていたよ。なーんてね」


それから、どうせ一緒にクエストするなら楽しくやろうと、ポジティブに考えることにしたんだ。


「驚いたわ。ドブさらい工事の見積もりまで算出するなんて、ロイド君も有能ね」

マリッサさんは改めてそう言って、僕を持ち上げた。機嫌を取ってもらわなくても、もう僕は立ち直っているけどね。


「そこで考えたんですが、リーサと一緒にクエストをこなすのですから、できるだけ多種多様な経験をしてみたいと思いまして。あっ、でももちろん、危険な仕事や極端な汚れ仕事や重労働は避けて下さい。リーサは女の子ですから」

「分かってますよ、もちろん。領主様からのお願いですから、変な仕事は押し付けないようにしますよ」


さて、仮登録の僕たちとはいえ、僕たちの言動が即冒険者ギルドの信用に関わるということは、片時も忘れてはいけないことだ。楽しく、そして誠実に仕事に向かう。それしかない。


だが、マリッサさんは僕たちが掲示板からクエストを選ぶことを禁じて、彼女の推薦一択を勧めてきた。リーサの背後に領主様がいるから、そこは慎重なのだろう。


そして、とりあえず『薬師の助手』クエストと『料理店の皿洗い』『雑貨屋の店番』などが紹介されたが、二人で一人分の謝礼しか出ないので、もう一人分は領主様が持つという甘やかし方だ。


クエストの依頼主はいずれも一人分の謝礼で二人が働いてくれるというので大喜びだ。そうだよな。その仕事を2日ずつやったのだが、仕事そのものは4日分の働きだから、こっちは雇われ身分といえども大威張りなはずだが、良いようにこき使われたというのが正直な感想だ。


薬師の所では製薬の助手は交代で使われ、その間、片方は店番に使われた。料理店の皿洗いも交代でやったが、もう片方は客相手に注文を取ったり料理を運んだりした。雑貨屋の店番なども、リーサが店番してる間、僕は仕入れに行かされたり、帳簿整理などをさせられた。僕が見積もり関係が得意で数字に強いと、誰かが漏らしたらしいのだ。


そうやって一週間が過ぎて、休みになると、リーサは言い出した。

「ねえロイド君、今後のクエストの為にも王都のことを良く知らなきゃいけないし、どう?一緒に王都見物ってのは?」

「いいよいいよ。僕は孤児院で寝てるから、リーサが行っておいでよ」

「でも、まだ二人でクエストを続けるんだから、こういうときに息を合わせておかないと」

「うーん、真面目に取り組むのもいいけど、三弦琴は弦を張り続けると切れるからね。たまに緩めないと」

「うん、わかった。じゃあ、一人で行くね。何かあってもロイド君のせいにはしないから」

「ちょっ、ちょっと待って!どうしても行くの? じゃあ、仕方ないな。一緒に行くよ、もう」

「あっ、ロイド君は無理しないで。弦が切れたら大変でしょ?」

「切れないよっ。って、良いから良いから、僕も王都見学はしたことないんだ。おかしいね、ずっと王都に住んでいたのに、はははは。ちょうどいい機会だから一緒に回ろう?」


こうやって、リーサはときどき背後に領主様の権力をちらつかせながら交渉するようになったのだ。手強い。何かあって、その責任の所在が僕の所に回って来ないとも限らない。


「いえいえ、本当にロイド君には今回とばっちりを与えてしまったから、済まなく思ってるの。だから、来週元気に一緒できるためにもゆっくり休んで英気を養ってね」


ここまで言われてついて行くというのは、まるで僕がリーサとデートしたがっているような誤解を生むからやめた。というのは表向きで、やはりリーサの身に何かあったら、という不安があるから、陰ながらついて行き見守ることにした。


僕には闇魔法のスキルがあり、その中に『陰渡り』というスキルがある。つまり、人の陰から物陰へと、陰から陰に自由に移動する技だ。それで僕がリーサの陰の中に潜むと、リーサと一緒に移動することになるのだ。


ちょっとストーカーっぽいけど、これも彼女を陰ながら護衛するためだから仕方がない。それこそ、ばれたら言い訳ができないが。


さて、僕は孤児院の部屋で寝ている振りをして、お出かけをするリーサの陰に入って秘密の同行をした。陰の中から街の景色を見ると、視点が低い為、人々の足元ばかりが見える。ときどき他の人間の陰が重なり、そっちの方に間違えて行きそうになるから気をつけないといけない。


陰の中は暑くも寒くもない。そして無重力空間のようにフワフワと浮いている状態だから、うとうとと眠くなる。特にリーサが服装店に入って服選びを始めた時は退屈で本当に寝てしまった。


気がつくとカフェの方に移っていたので、驚いた。それで僕も喉が渇いていたので、カウンターの陰に移って、こっそり自分の分の飲み物を失敬した。こっそりその分の料金をカウンターの上に置いたけどね。


「お嬢ちゃん、一人で来たのかい?」


リーサの席のテーブルに、17、8歳くらいの男が話しかけて来た。

「いえ、連れと待ち合わせているんです」

「へええ、それならその連れが来るまで、俺と付き合わないか?」

「困ります。あなたには用事がないので、どこかへ行ってくれませんか」


僕は近くでコーヒーカップを落として音を立てた。

ガッシャーン!!


リーサは驚いて音のした方を向いた。

「えっ? 誰がコーヒーカップを落として割ったの?」


ウエイトレスのお姉さんが、割れたコーヒーカップの周りに誰もいないので首を傾げながら、掃除を始めた。リーサがまた視線を戻して、さっきの男のいた場所を見ると、男の姿がなかった。


「えっ?」


実は闇収納ブラックホールで吸収して消滅させてやろうかと思ったが、それもかわいそうなので、陰渡りを使って、飛び石式に1kmくらい先の裏通りの方のゴミ箱の陰まで移動させておいたのだ。その男の会計関係がどうなっているのか、店には迷惑だったかもしれないが、緊急措置だったから勘弁してほしい。


そこへウエイトレスがやって来て、リーサに話しかけた。

「先ほどあなたに話しかけていた、あちらの3番テーブルの若い男性がどこへ行ったのか、ご存じありませんか?まだお勘定が済んでいないのに消えてしまいましたので」

「いえ、私もいきなり話しかけられましたけど、全く知らない人で。それで、急に先ほどコーヒーカップが割れる音がして、そっちの方を見てる間にどこかへ消えてしまったようです」

「そう……ですか」


ウエイトレスは、きっとこのままでは雇い主に叱られるだろう。僕はリーサから離れたウエイトレスの前に現れて、お金を渡すことにした。

「すみません。3番テーブルのお兄さんから頼まれたのですが、急用ができて店から出ることになったので、勘定を払っておいてくれと」

「えっ、そうなんですか。よかった。ありがとう」

「いえ、それじゃあ、僕はこれで」

「あっ、待って、これはちょっと多すぎます。って、あら、どこに行ったのかしら?」


ウエイトレスさんの陰に隠れて、そこからリーサの陰に移った。ふー、陰ながら良いことをするって難しい。



薫は本を閉じた。『この本も止まっている。読者のリアクションエネルギーを待っているんだな。でも一番の効果は感想の中にこの後の作品の方向性について読者自ら光を照らしてくれるなら』薫はコメントを書いて、転生神に渡した。心なしか彼女の顔色が優れないような気がした。薫は次の

本を手に取る。

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