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君が知らないリトライ 〜仲間が死ぬ度に時間が巻き戻るので全員生存ルートを見つけたいのに、ヒロインの性格属性がたまに変わるので困ります〜  作者: 夢見戸イル
繰り返しの代償は

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89.痛みと気付かないフリ

 次の日、俺達はフォッシリムを出た。

 神珠が示したのは、意外にも山は越える方向ではなく、王都に戻る方向。

 勿論、道などない。だから俺たちは、神珠を頼りに道なき道を進む。


「このルートは、方位磁石が狂うから迷いやすいんだよね。私もあんまり通らないから詳しくないんだ」


 ソフィアが言った通り、方位磁石はすぐにくるくると回りおかしくなった。神珠から出る光は変わらないから良いのだが、それがなければ簡単に道に迷ってしまう場所だった。

 魔物も、イグニスベルクがあった場所よりは落ち着いているが、それでも強い。けれども、俺とゼノがいたら問題なく進むことができた。


 ずっと、頭は痛い。けれどもそれだけだった。別に支障なんて一つもない。俺が少しだけ我慢すればいいだけ。

 ただでさえ、フォッシリムでは沢山失敗をした。これ以上皆に迷惑なんてかけたくなかった。


「あれ? なんだろ、これ」


 と、ソフィアが突然しゃがみ込んだ。見ると、筒のような形をした何かが落ちていた。それはかなり古く劣化していて、ソフィアが蓋を開けると、石のようなものが出てきた。


「あれ……? これ、魔石? もう使えなくなってるけど」


 ソフィアが、不思議そうにその石を見つめる。


「フォッシリムの誰かが使った魔道具かしら」

「うーん。私達の使ってるものと、ちょっと仕組みが違うんだよね。調べていい?」

「じゃあ、ここらで一度休憩にするか」


 ゼノの言葉に、皆頷く。

 一度興味のあるものを見つけてしまったソフィアは、一通り調べるまで注意散漫になる。だからその方がいいだろう。


「じゃあ俺、周りに食料か何かないか、探してくるね」


 そう言って森の中を探索するのは、いつも俺の役目。フォッシリムからいくつか食材は持ってきているけれども、できれば新鮮な薬草や木の実を使いたいし、何も見つからない時のためにその食材は取っておきたかった。

 ゼノが行かないのは、一度ゼノが迷って、休憩の場所に戻って来れなくなったから。俺は、特徴のある木をいくつか覚えれば戻って来れるから、方位磁石が無くても関係ない。それに、旅に出る前は採取の依頼をこなしていたから、食べられるものと食べられないものの見極めも得意だった。


『お父さんやお母さんを助けたいなんて、本当にクロノ君は良い子だね』


 採取をするたびに、その言葉が頭の中に蘇って、少しだけ心が落ち着く。生きていない方が良かった俺が、唯一家族の役に立てた事だった。

 最初に一人で採取をしたのは8年前。メミニが死んで、今のお母さんが寝室に籠りがちになってしまった時の事だった。

 あの頃の俺は、寝室に入らないようにとお父さんに言われ、家に居場所が無かった。


 入ってはいけない理由はすぐに理解した。だってお母さんは、俺を見ると辛そうな顔をしたから。きっとお母さんは、メミニの代わりに生きてしまった俺の姿など見たくなかったのだろう。

 だから俺は、一人でギルド施設に向かった。


 お父さんはお母さんに付きっ切りだったから、お金が足りなくなっている事も知っていた。だから俺は、せめてお金を稼ごうと採取の依頼を受けることにした。

 採取は、お父さんのお手伝いをしてある程度やり方はわかっていた。記憶力だけは良かったから、言われたものがどこにあるのか、何に気を付けなければいけないのか、頭の中に入っていた。


 けれども、最初ギルドの受付の人に、少しだけ渋られた。


『お父さんとお母さんは?』

『家にいます。俺一人で来ました』

『まだ一人でするのは難しいと思うよ。それより、誰か大人を……』


 お姉さんの言葉に、俺は真剣に訴えた。


『俺、できます! お父さんとお母さんが落ち込んでるので、助けたいです! お願いします!』

『でも、一人で出歩くのは怖いでしょ?』

『怖くないです!』


 もしかしたらお姉さんは、俺が誘拐された事を知っていたから、気にしていたのかもしれない。けれども、その時の俺はこれ以上居場所がなくなることの方が不安だった。

 怖いという感情のせいで、メミニを守れなかった。怖いという感情のせいで、これ以上不要な存在になりたくなかった。


 俺の思いが通じたのか、お姉さんは簡単な依頼をくれた。家のすぐ近くに生えているものだったから、すぐに採ってくることができた。

 持って行けば、お姉さんは心から驚いた顔をした。


『凄い! 種類も数も、採ってくる方法も完ぺきだね!』

『お父さんに教えてもらったから大丈夫です。もっと難しいのもできます』

『そっか。じゃあ次は何頼もうかな。お父さんやお母さんを助けたいなんて、本当にクロノ君は良い子だね』


 そう言って撫でてもらったことが、俺は忘れられない。

 それからもう一つだけ依頼をこなしてお金を持って行けば、お父さんは最初驚いた顔をした。


『お金の事は俺がどうにかするから、お父さんはお母さんのところにいてあげて』

『……ありがとう。クロノは強いな』


 そう言われたことが、少し誇らしかった。同時に、この方法なら家にいさせてもらえる、そう思った。だから俺は必死に依頼をこなして、家事も出来る限り手伝った。


 たまに、あの日の恐怖が蘇って震えることはあった。けれども必死に隠した。隠せば誰にも気付かれなかった。

 もう二度と、同じ失敗はしたくなかった。

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