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君が知らないリトライ 〜仲間が死ぬ度に時間が巻き戻るので全員生存ルートを見つけたいのに、ヒロインの性格属性がたまに変わるので困ります〜  作者: 夢見戸イル
山の都“✕✕✕✕✕✕”

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85.進んだ未来と残る不安(リトラ視点)

 巻き戻った私は、今度は本当の意味で頼れる私になろうと思った。

 自分が、クロノを守れるほど強くないことも自覚した。そして、クロノが強すぎることも。だからせめてクロノが安心して戦って、旅を進めることができるようにサポートに徹しようと決めた。


 きっと、上手く行ったのだと思う。だってクロノの怪我は、巻き戻る前よりも減っていたのだから。

 そして私は、過去の時間軸を覚えていることを利用して、旅がスムーズに進むような発言も言うように心掛けた。


『リトラは、本当頼りになるね』


 そう言ってくれたクロノの言葉が忘れられない。

 勿論、事前に必死に考えて言葉を言うものだから、噛んでしまったり支離滅裂になってしまったりして笑われることもあった。けれども、それでもクロノの助けになれたとは思っていた。


 必死に頑張っていると、ある日ソフィアに言われたことがあった。


『リトラって、クロノの事、好きだよね?』

『へ? い、いや、そんな事は無い……、ですよ?』


 好きという心に蓋をして、サポートに徹する。それは、その時間軸になって決めた事だった。

 どうサポートするか考えれば考えるほど、理解してしまう。過去の時間軸の私が、あまりにもクロノにとって邪魔だったこと。

 あの時は、周りが見えていなかった。クロノを守る事だけを考えすぎて、客観的に自分を見れていなかった。

 だから、今度はクロノにとって一番の選択をして、それを喜べるようになろうと思った。敬語で話しているのも、自分への戒めだった。


 けれどもソフィアは、納得がいっていない顔をする。


『ちゃんと素直にならないと、思いが伝わらないままいなくなっちゃうことだってあるんだよ』


 ソフィアがそう言ったのは、イグニスベルクの神殿で、ソフィアが両親の夢を見た後だったからかもしれない。けれども、その想いのせいでクロノが死ぬのなら、そんな想いはいらないと思った。


 けれどもクロノは、フォッシリムの神殿であっさり死んだ。

 フォッシリムの神殿で、私が犠牲役になると言ったら、クロノは言った。


『リトラが行くなら、俺が行くよ。俺の方が防御魔法も使えるし、安心でしょ?』


 どうして頑なに自分が犠牲になろうとするのか、私にはわからなかった。ただ何となく嫌な予感がして止めようとすれば、少しだけ苛立ったクロノが私の手を振りほどいた。そして無理矢理、あの場所に立った。


『……あれ? 魔法が、発動しな……』


 その瞬間、クロノは死んだ。無数の槍に突き刺されて死んだ。

 当たり前のように男が現れた。男は私を見て、言った。


『もう、諦めた方がいい』


 けれども、私は首を縦に触れなかった。そんな私を見て暫く考えた後、男は再び私の時間を戻した。


 それから、私は暫くどうしようか悩んだ。ふと蘇ったのは、ソフィアの言葉。


『ちゃんと素直にならないと、思いが伝わらないままいなくなっちゃうことだってあるんだよ』


 ずっと、感情に蓋をして過ごしてきた。だから、死んで欲しくないなんてそんな想いすら伝わらなかった。そんな気がした。

 止める私を面倒くさそうに見たクロノの目が忘れられない。


 だから、今度は素直になろうと思った。沢山好きと伝えて、クロノが必要なのだと、死んで欲しくないのだと、何度も伝えた。

 旅が終わるまで恋人同士にはなれないと言われたけれども、それでも良かった。クロノが生きてくれれば、なんでも良かった。クロノが私の事を好きだと思ってくれている気持ちも、なんとなく伝わっていた。


 上手くいった。そう思った。だって誰かが犠牲にならなければいけない神殿で、私の言葉が届いたのだから。

 クロノに必死に行かないでと懇願した。だって結末は知っていたから。そしたらクロノは少し躊躇って、そして躊躇ってる間に時間が来た。

 神珠も取れた。これで良かった。そう思った。


 クロノが魔法の真実を知った。そして、クロノは私たちのことが好きだからという理由で死んだ。

 意味がわからなかった。何度考えても、クロノが言った言葉の意味が、わからなかった。


 男が現れた。また、諦めろと言うのかと思った。


『……彼が幸せになる所を、見たいと思ってしまう私がいる』


 男は意外にもそう言った。

 そして再び、時間を巻き戻してもらった。一つ確認したい事があって、数日程その世界にいたけれども。


 記憶を持って巻き戻るのは、3回目も4回目も私だけ。ソフィアは嘘が苦手だから、下手に知らない方が上手くいきそうと言っていたから。

 ゼノはあの後どうなったのかわからない。頭が整理できないとどこかへ消えて、それっきりだった。当時はゼノがいなくて安心していたけれども、今となればちゃんと話しておけば良かったと少し後悔した。


 そして、今の私になった。今度は、クロノに嫌われる道を選んだ。私達の事が好きで死んだのなら、せめて私の事を嫌いになれば、そんな事はしないかもしれない。そう思った。

 結果は散々で、記憶が無いはずのソフィアやゼノに照れ隠しだと言われるどころか、クロノ本人にすらバレかけてしまった。

 そして、クロノは想像以上にお人好しだった。どんなに酷いことを言っても、私の事を守ろうとしてくれた。それでも、なんとか距離を取ることができれば、そしてクロノの優しさを拒否し続ければ死ぬことまではしない、そう願うしか無かった。


 ただ一つ、嬉しい誤算があった。ゼノが、クロノに心を開いた。そして、クロノを守ろうとしてくれるようになった。


『お願い。次の神殿でクロノが自分を犠牲にしようとしたら、なんとしてでも止めて。私だけじゃ無理だから』


 その言葉に、ゼノも頷いてくれた。本当はソフィアに巻き戻っている事も含めて、このタイミングで相談するつもりだったけれども、ゼノの方が確実だと判断した。ゼノなら、クロノが自分を犠牲にしようとする場面で私の言葉が届かなくても、きっと止めてくれるだろう。

 そして、それは成功した。けれども映像を見た後すぐに、巻き戻る前と同じ台詞を言い始めて、距離を取れた程度では無理なのかと絶望した。焦って、クロノの言葉を必死に否定すれば、なんとか引き留められた。


 私は、引き止めることができた台詞を、誰も聞こえないように呟く。


「あんたのためじゃなくて、私のため」


 実際そうなのだろう。繰り返してまでこの旅を続けているのも、そこまでしてクロノといたいのも、全部私のため。クロノのためと言い訳しながら、全部全部私のため。


 そう思った瞬間、私は思わず立ち止まる。

 クロノは妹を生き返らせるために旅をしていた。それが、クロノの幸せに繋がるのだと思った。

 でも違った。自分の命を引きかえに妹を生き返らせられるのだと知れば、あっさり自分の命を差し出した。


 そして今、私のためにクロノは魔法を使うのをやめた。私のために旅を続けることを選んだ。

 また誰かのため。なら、その誰かのためがなくなったら、クロノはどうするのだろうか。


 ざわざわとした違和感が、私の中でぐるぐる回って止まらなかった。

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