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君が知らないリトライ 〜仲間が死ぬ度に時間が巻き戻るので全員生存ルートを見つけたいのに、ヒロインの性格属性がたまに変わるので困ります〜  作者: 夢見戸イル
山の都“✕✕✕✕✕✕”

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82.信実と解決策

 黒い霧が兵士たちを覆う。そして暫くすると、兵士たちはどうしてか叫び声を上げてうずくまり始めた。


『な、何をした!?』

『少し、悪夢をね。だが、半分だ。半分は正気のはずだ。無事に全員帰りたければ、引け。そして、伝えろ。この地に手を出すな、と』


 その言葉に、男の命令も聞かずに逃げ出すものもいた。じわじわと下がっていく兵に、男は苛立って叫ぶ。


『何をしている! 引くな! 女一人だぞ! やれ!』


 その瞬間、一本の矢が男に突き刺さる。エウレさんが後ろを振り向くと、そこにはフォッシリムの住民たちが武器を持って立っていた。


『自分たちの街は自分達で守らせてください!』


 その言葉と共に、フォッシリムの住民たちは兵士に向かって走り出した。圧倒的、フォッシリム側の勝利。そう思った、瞬間だった。


『悪魔め! 来るな! 来るなあああ!』


 一人の兵士が、魔法を放ち、フォッシリムの住民たちに炎の渦を投げ込んだ。

 一瞬の出来事だった。何十人もの人間が、一斉に炎に飲み込まれ、痛い、熱いと叫び出した。それはまさしく地獄絵図。


『やめろ! やめってくれ!』


 エウレさんがそう叫んだ瞬間だった。突然、場面が変わった。そこは、以前までの映像で出て来ていた、窓のない部屋だった。

 その瞬間、その部屋の扉が勢いよく開く。そこに現れたのは、死んだとされるコンコルス。


『コンコ、ルス……。どうして……』

『エウレ、落ち着いて聞いてくれ。フォッシリムを、国が攻めようとしている』


 この流れは、イグニスベルクで見たものと同じだった。それに気付いたのは皆も同じで、ソフィアが不思議そうに口を開く。


「あれ? この映像、前にも見たよね?」


 確かに見た。けれども、少しだけ違った。エウレさんの言葉が違う。だから、コンコルスさんの言葉も少しだけ変わっていた。

 何かが繋がりそうになる。けれどもそれが綺麗に繋がる前に、場面が変わった。


『……やはりか。時間が巻き戻っているのは、私が私に付与した魔法の……。きっと、混乱して無意識に発動したのだろうな。でも、それならば……』


 エウレさんは、何かを書き殴った紙を見つめながら、そう言った。


 その後エウレさんが、何をやろうとしていたのか、俺は容易に想像が付いた。だって俺が今やっていることと、同じことなのだから。

 エウレさんは、まずコンコルスさんを説得した。巻き戻ったことと、これから起こる事も説明して。


『……そうか。まさか体に魔石を埋めるなんて大胆なことをやっていたとは……。しかし……』

『兵器は発動させたくない。だが、脅しは聞かない。ならば、私が脅す材料となって、兵を引かせる』

『……魔石を体に埋める行為は、本当に大丈夫なんだね?』

『ああ。それは未来で証明できたからな。それに、もう埋め込んでいる』


 エウレさんの言葉に、コンコルスさんは小さくため息をついた後、笑った。


『わかった。兵器を使わないよう、そして、君が対処している間は出て行かないよう、私から説得しよう』


 けれども、それも上手くいかなかった。どうしてか、住民たちは外に出てきた。何があったのか確かめるためにエウレさんが地下施設に向かうと、殴られ息をしていないコンコルスさんがそこにいた。


 また、場面が変わった。また、エウレさんの目の前には沢山の兵士の姿。


『何度目かな。この光景も。何度繰り返しただろうか』


 そう呟き、エウレさんは地下施設の入り口を見た。入り口は、魔法の鎖で閉ざされていた。


『コンコルスを救う方法は、結局見つからなかった。でも、これなら』


 それからは、最初に見た戦いと同じだった。唯一違うのは、兵の長だけを殺した事。ただそれだけで、兵は引いて行った。

 それから、エウレさんは入り口の鎖を解き、兵士が消えて行った方に魔道具らしき何かを確認しながら走った。


『ここか』


 エウレさんの目線の先には、魔法で作られた槍で貫かれ、焼かれ、ボロボロになったコンコルスさんの姿があった。


『何度、おまえを殺したのだろうな。私は』


 そう言って、エウレさんはコンコルスさんの顔を撫でる。


『痛かったな。苦しかったな。悪かったな。巻き込んで。これからは、幸せに生きてくれ。私の記憶は、ここに置いておく』


 そう言って、エウレさんは白い玉をコンコルスさんに握らせる。その白い玉は、まだ光り続けていた。


『……まさか、この魔法に人を生き返らせる力まであったとはな。けれども、神にはなれなかった。死んだ命を生き返らせるには、別の命が必要。……私の命を捧げよう。これからは、幸せに生きてくれ』


 そう言って、エウレさんはコンコルスさんの頬に唇を落とした。


『本当は、落ち着いたら伝えようと思っていた。愛していたよ。……リザレクション』


 瞬間、エウレさんの体は赤黒い光で包まれる。その瞬間、映像は消えた。


 あれ? と、俺は思った。俺の魔法はエウレさんと同じもの。だって、戦いに使った魔法は俺が使うものと全く同じものだったのだから。

 そして、その証明がもう一つ。俺が時間を繰り返している事。エウレさんと同じように、俺も無意識に時間を巻き戻す魔法を使っていたのだろう。


 そして、エウレさんは誰かを生き返らせる魔法を使えた。誰かの命を犠牲にして、別の命を生き返らせる魔法。そして、それは自分の命でも良かった。


 ふと思う。俺の旅の目的は何だっけ、と。

 それは、女神様に俺の妹を生き返らせてもらうこと。けれども、それは女神様でなくてもできることだった。


「そうか」


 俺は一人納得して、そう呟いた。


「俺が死ねば良かったんだ。そうすれば、全てが解決する」

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