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君が知らないリトライ 〜仲間が死ぬ度に時間が巻き戻るので全員生存ルートを見つけたいのに、ヒロインの性格属性がたまに変わるので困ります〜  作者: 夢見戸イル
山の都“✕✕✕✕✕✕”

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80.正解と不正解

「ダメ……! ダメったらダメなの……! あんたはなにもするなって言ったでしょ!? 絶対、絶対ダメなんだから……!」


 必死に懇願するようなリトラの目に、少しだけ心が揺れそうになる。けれども、先程のやり取りを思い出して、すぐに俺の心は冷静になる。


「……リトラ。俺が行くのが最善でしょ?」

「でっ、でも……! 女神様はアミクスを壊せって言った人なのよ!? それに、私達がうまく対処しなければ、リンピアナもイグニスベルクも大変な事になってた!! 女神様、優しい存在じゃないのよ!?」

「だから、俺が行くんだよ。何があっても、対処できるように」

「……っ。でも……。駄目なの……。本当に駄目なの……」


 何を言っても聞こうとしないリトラに、流石に少しだけイラついてしまう。


「……別に、リトラにはゼノがいるからいいでしょ」

「……っ」


 つい言ってしまったその言葉に、一瞬リトラが俺を掴む手が緩まった。その隙に、俺はその手を払い除ける。

 元々、何を言っても止められたら強引に行こうと思っていた。だからといって、怪我をさせたいわけではない。だから、丁度よかった。それだけだった。


 俺は、再び一歩踏み出そうとする。後はシールドを貼りながら、あの窪みに入れば来るであろう槍に備えながら……。

 そう思っていた。


 隣で、ゼノが動く気配がした。

 一つだけ、想定していた。俺が行くと言っているのに、無理矢理誰かが行こうとすること。

 ゼノであっても、防御魔法が無ければあの槍を凌ぐことができない。だから、手遅れになる前に俺はゼノの行く道を防ごうとする。


「えっ……」


 けれども違った。ゼノはどうしてか、俺の体を押し倒し、床に押さえつけた。

 それだけは、本当に想定になかった。しかも、ゼノに押さえつけられると、身動きができない。こんな強引に引き留められるなんて、想定外だった。


「ちょっと、ゼノ! 離して!」

「離さねえよ」

「もう時間ないんだって! せめて……」

「てめえの体は修理すらできねえんだぞ! わかってんのか!?」


 ゼノの剣幕に、一瞬怯む。けれども、ゆっくり話している時間は無い。

 俺は、ゼノを睨みながら叫ぶ。


「わかってるよ! でも、誰かが行かなきゃいけないじゃん! 俺が一番適任だから行くんだって!」

「てめえの頭はクソかよ! 仲間の誰かが犠牲になってまで進みたいなんて思わねえよ! それに、てめえが死んだらてめえの願いはどうすんだよ!」

「そこまで言うなら俺が死んでも妹生き返らせてよ! 俺は、別に……」


 そう言おうとした瞬間、地面が揺れ始めた。それが、もう指定の時間になった合図なのだと、俺はもう知っている。

 間に合わない。そう思った俺は、無理矢理ゼノを突き飛ばそうとした。けれども、ゼノの力に敵うはずがない。


 ガチャン、と、金属がぶつかる音がした。その音に、恐る恐る俺は橋の先を見る。

 窪みには、誰もいない場所に無数の槍が突き刺さっていた。


 間に合わなかったのだ。それを理解するのに、時間はかからなかった。


「あっ、ソフィア、ごめん、せっかく、アミクス壊して、神殿に来た、のに……」


 唯一俺を止めなかったソフィアに、働かない頭でなんとか言う。けれどもソフィアは、首を振った。


「ちがっ、私、クロノなら、きっといつものように、なんとかしてくれるって、思って。でも、皆言ってるの聞いて、私、浅はかだったなって。だって、アミクスと違って、クロノの命は……」


 その瞬間、もう一度地面が揺れた。その揺れを、俺は知らない。状況を確認するために、俺は体を起こす。


「えっ……?」


 視線の先には、先程まではなかった、どこかへ続く入り口があった。


「あれ? 帰り道かな? ちょっと見てくる!」

「あっ、ちょ……! 危ないって……!」


 ソフィアが、そちらに気を取られたかのように目を輝かしてそちらへ駆けて行った。もう何も起こらないと言い切れない俺は、少し焦って追いかけようとする。

 ソフィアが入り口を覗くと、不思議そうに首を傾げた。


「あれえ? あれって、神珠だよね……?」

「へっ……?」


 その言葉に、俺もソフィアの示す視線の先を見た。そこには、確かに他の神殿と同じような空間に、オレンジ色の珠が浮いていた。


「なっ、なんで……」


 指定されたことは、間に合わなかったはず。なのに、どうして神珠が取れるのか、わからなかった。

 と、後ろからやってきたリトラが、俯きながら言う。


「きっ、きっと、誰も犠牲にしない……、が、答えだったんじゃ、ないかしら……」


 リトラの声は震えていて、けれどもそれよりも、リトラの言った言葉の方が心に突き刺さった。

 リトラの言った事が正しかったのだとしたら、また俺は間違えてしまったのだろうか。余計な事をしようとして、迷惑をかけてしまったのではないだろうか。


「みんな、ごめん。本当に、ごめんなさい。間違え、ました」

「いや、謝んなって。つか、マジで止めて良かった。逆なら、マジで死んでたんじゃねえの……。あいつの夢の通り、ってか」


 夢の通り。ゼノがそう言った理由はわからなかった。ただそれを考えるよりも、別の考えがグルグル回る。

 俺がいなかった方が、上手くいった。俺が余計な事をしようとして、迷惑かけた。皆優しいから何も言わないけれども、俺の存在はもう邪魔なのではないかとさえ思えてくる。


「ごめんなさい。本当に、ごめんなさい……」

「そんだけ謝んなら、もう二度とすんなよ。それより、せっかく神珠取れんだ。映像の続き、見に行こうぜ」


 ゼノが何に対して二度とするなと言ったのか、一瞬分からなかった。けれども、きっと間違えた道を選ぼうとしたことだろう。

 何度も何度も皆を死なせて繰り返すほど、俺は間違えてきた。やっと、正しい道を選べるようになってきたと思っていた。

 けれども繰り返していない皆の方が、正しい道を見つけて進んで行く。俺の存在意義が、わからなくなっていく。俺がいない方が良かったのではとさえ思えてくる。


 けれども今は、進む以外の選択肢はない。

 胸の動悸が収まらない。気持ち悪さすら感じる。けれども、これ以上迷惑をかけるわけにはいかないと、俺は神珠のある部屋に向かって歩き始めた。

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