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君が知らないリトライ 〜仲間が死ぬ度に時間が巻き戻るので全員生存ルートを見つけたいのに、ヒロインの性格属性がたまに変わるので困ります〜  作者: 夢見戸イル
山の都“✕✕✕✕✕✕”

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79.犠牲と選択

 扉を開ければ、フォッシリムの地下施設と同じ電気の魔石で作られたであろう明かりが、奥まで続いていく。

 ここに来るまでに、何度時間を繰り返しただろうか。それでもまだ鮮明にここでの出来事を覚えているのは、ある意味俺にかけられた呪いなのかもしれないとさえ思ってしまう。


 と、隣で目を閉じていたソフィアが目を開けた。


「あれ……? どこ? ここ。あれ? もしかして、ドア開いただけ? でも、いつも、扉開いたらもう夢で……」


 その言葉に、ゼノも恐る恐る目を開ける。


「夢……? なんだよな……? でも……」


 ゼノは後ろを振り返る。それにつられて、というフリをして、俺も振り返った。

 見えたのは、アミクスと戦った見慣れた場所。外に出ても、それは変わらなかった。


「い、いや、でも、これも夢って可能性あるよな?」

「で、でも、会話できてるよ?」

「だ、だよな? でも、それすら夢かも……。あー!! わかんねえ!!」


 そう言った後、ゼノは目を細めて俺を見る。


「……やっぱ夢かもしんねえ。さっきこいつおかしかったのに、今は普通だ」

「えっ? あっ、いや、さっきはごめんって! 扉開けた瞬間我に返ったというか……。でももう大丈夫だから!」

「やっぱ本物か……? でも、夢とどうやって区別つけりゃいいんだ?」


 少しやらかしてしまったかと俺は思う。過去の時間軸と同じ行動を取ったとしても、前後に変化があれば逆に違和感にもなってしまう。

 さっきは少し感情的になりすぎてしまった。死への恐怖が消えたのは良かったけれども。


 俺はリトラをチラリと見る。リトラは、目を開けてはいたけれども、顔はまだ青く震えていた。

 けれども俺が余計なことを言わないほうがいい。そう思って、続いている道の先を見る。


「……とりあえず、進んでみよう。もしかしたら夢かもしれないし、そうじゃないかもしれないけど、夢だとしても覚める方法を見つけないと」


 そう言って、俺は進みだす。


「……おまえ、マジで大丈夫か?」


 後ろで、ゼノが誰かに言った声が聞こえてきた。恐らくリトラだろう。リトラも、良く聞こえないけれども何か話している。

 ほら、俺はいらない。けれども、それでいい。もし失敗して死んだとしても、誰も悲しまないのだから。




 少し歩けば、視界はすぐに開けた。足元を見れば、落ちた先が見えないほどの四角い穴が行先を塞いでいた。

 その穴に一本だけかかる、人が一人通れるレベルの橋。その先には、人が一人立って入れるほどの窪みがあった。


 そして橋の前には、何かが書いてある石板があった。


「……何か書いてあるね。ソフィア、読める?」


 俺はソフィアに、解読をお願いする。勿論何を書いているのかは知っているけれども、文字が読めないはずの俺が理解するのはおかしいだろう。


「うん、任せて!」


 そう言って、好奇心が隠せていない様子で石板に駆け寄るのは以前来た時と同じ。


「えっと、先に進みたければ……、えっ……?」


 そして、動揺して困惑した表情で俺達を見るのも、以前来た時と同じ。


「どうしたの?」


 俺は、何も知らない体で続きを促す。


「えっ、ええっと。あのね。先に進みたければ……、ここに来た者から一人、生贄を捧げよ、って」

「なっ……」


 ゼノの動揺した声と、リトラの怯えるような表情。これも今の二人の性格や状況を考えると、想定内。

 俺は、更なる情報を引き出したくて、口を開く。


「でも、生贄を捧げるって、どうやって?」

「えっと、橋の先に進め、って。だから多分、あそこのこと……」


 そう言って、ソフィアは橋の先の窪みを指さす。そして、震える声で続けた。


「し、しかもね。この部屋に入ってから15分以内に決めろって……。どうしよう、もう時間も無いよ……」


 これが、必要な情報の全てだろう。この部屋に入ってから15分。今までのやり取りも含めたら、もう既に時間は減っている。

 けれども俺は、少し考えるフリをする。それが、自然な流れであることは理解していた。けれども、あまり長く考えてはいけない。前みたいに、リトラや他の誰かが行くという流れにはしたくなかった。


 と、隣で動揺したゼノが口を開く。


「なっ、なあ。おかしいって。こんなの……」


 今だろう。そう思って、俺も口を開いた。


「でも、誰かが犠牲にならないといけないんだよね? それなら、俺が行く」

「……っ」


 皆、俺のことを少し怯えが混じったような目で見る。それも想定内。

 けれども一つ意外だったのは、最初に口を開いたのはリトラだったという事だ。


「ふざけないで! 生贄って、あんた、意味わかってんの!? 死ぬって事よ!?」


 その言葉をリトラが言う事は想定外であったけれども、誰かにそう言われることは想定内だった。しかもリトラがそう言ったのであれば、返す言葉は一つだった。


「女神様が、本当に誰かの犠牲を望んでいるとは思えないよ。きっと何か助かる方法があるはず。それに、俺なら自分の身は自分で守れるしね。何かあったらゼノが助けてくれるだろうし、リトラも回復魔法かけてくれるでしょ?」


 これは、リトラが言った言葉の応用。この言葉でリトラが生贄として行くことが決まったのだから、何も知らない皆は頷いてくれるはずだ。

 そう思ったけれども、焦ったような顔をしたゼノが口を開く。


「だっ、だったら俺でもいい、だろ? おまえの方が、遠距離で戦いやすいし……。な?」

「でも、ゼノは防御魔法使えないでしょ? 俺なら、咄嗟に守れる。そもそもシールド張りながら行くつもりだから、何が来ても受けれるよ」


 ゼノの言葉も想定内。ゼノの性格が変わったのだから、それを含めて言われそうなことを事前にシミュレーションしていた。

 皆、何も言わない。それはある意味肯定だと思いながら、橋の先に体を向ける。


「じゃあ、時間もないし行ってくるね」


 そう言って、俺は一歩踏み出そうとした。


「ダメ! ダメって言ってんでしょ!?」


 けれどもその言葉とともに、俺の手は強く引っ張られた。

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