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君が知らないリトライ 〜仲間が死ぬ度に時間が巻き戻るので全員生存ルートを見つけたいのに、ヒロインの性格属性がたまに変わるので困ります〜  作者: 夢見戸イル
山の都“✕✕✕✕✕✕”

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78.異変と覚悟

 過去の時間軸と同じで、鍵を取り出すのには時間はかからなかった。だから俺達は1日休み、神殿に向かうことにした。


「ティオおじさん、来ても良かったのにねー」


 ソフィアは、少し不満そうな声で言う。

 ソフィアの言う通り、ウルティオさんは冒険を邪魔したくないと、着いてくることを遠慮した。それに、幻覚に惑わされて俺達に迷惑をかけるのは申し訳ないし怖い、とも言っていた。


「……まあ、俺としては付いてこなくて良かったけどよ」


 と、ゼノがポツリと言う。そんなゼノに、俺は苦笑いしながら口を開いた。


「まだ、ウルティオさんのことは苦手? アミクスの時は信頼してたようにも見えたけど……」

「あの時はまあ、なんも感じなかったけどよ……。なんかまた……。いやまあ、俺の気のせいかもしれねえけどよ。出会った時程、嫌な感じはしなかったし」


 そう言って、ゼノは少し複雑そうな顔をして頭を掻いた。

 俺自身、ウルティオさんが付いてこないことは、過去の時間軸でも同じだったから驚きはしなかった。ただ、女神様の事にあれだけ熱をもって調べているのだから、そういう意味では確かに違和感はあった。

 けれども、怖いという相手を無理矢理連れて行くわけにはいかない。それに恐らく自分を守ることが精一杯になるであろうこの神殿で、人を増やしたくなかった。


 と、神殿の入り口が見えてきた。この先のことを知っているから、少し足が重くなる。

 けれども皆も不安だったのか、合わせたように扉から少し離れたところで立ち止まった。


「……また、なんか俺らを試すようなの、見せられんのかな」


 ゼノが、少しだけ不安そうに言った。


「前みたいに目を覚ませなかったらどうしよう……。嫌だよ、目が覚めたら皆を殺してたとか……」

「1回目はちゃんと目覚めたんだろ? それに、俺だって今回はわかんないし」


 本当は違う。今回は、幻覚を見ることはない。

 けれども、また幻覚を見せられると思うほうが自然なことは、記憶を思い出しながら頭でシミュレーションしていた。だから、俺も少し不安そうな表情をしながら口を開く。


「ちゃんと、これは幻覚だって心の準備ができたら入ろう。幻覚だってわかったら、後は自分の感情に取り込まれずに冷静に対応できたら大丈夫なはず」

「だな。前回もあいつの言葉で……。おい、大丈夫か?」


 と、ゼノの言葉につられ、俺もリトラの方を見る。リトラは、誰が見ても明らかなほど震えていた。

 過去の時間軸でここに来たときはそんなことはなかった。


『そうですね。夢と現実を理解していれば惑わされることはありません。行きましょう』


 そんなことを余裕そうに言っていた。けれども今は違う。勿論性格が変わればそういうこともあるだろうが、そうだとしても異常だった。


「リトラ、大丈夫?」


 俺がそう言えば、リトラは大きく体を震わせた。それは、まるで俺に怯えているようにも見えて、リトラに触れようとした手を思わずひっこめた。


「もしかして、あの事か?」


 と、ゼノが俺の代わりに、リトラの背中に触れた。それに、リトラもコクリと頷く。


「……大丈夫だ。俺がいる。だから、ぜってえ夢は変わる」


 そうゼノが言えば、リトラの震えは止まった。


「そう、ね。そうよね。お願い、ね」

「任せろ」

「……っ。でも、あんたも、ダメ、だからね。全部、諦めることに、なっても」

「安心しろ。生きるより大事なことなんてねえよ」


 そのやり取りは過去の時間軸にはなくて、何のことを言っているのか俺には理解できなかった。

 リトラは、ゼノに何かを相談したのだろうか。俺ではなくて、ゼノに。


 その現実に心がズキズキと痛む。だけど、それでも、まだリトラの役に立てることがあるなら、役に立ちたかった。


「ねえ、リトラ。何かあったの? 俺にも……」

「何もない!」


 けれども、リトラはキッと俺を睨み、叫んだ。


「何もない! だからあんたは何もしないで!」

「えっ……」

「何もするなったら、何もするな!」

「おい、それは流石に言いすぎだって!」


 ゼノが止めてくれたけれども、リトラの涙に、心が冷えていく気がした。

 リトラは俺に、助けてほしくなどないのだ。


 本当は、少しだけ怖かった。もしかしたら死ぬかもしれないと思うと、怖かった。もう二度とリトラに会えなくなるかもしれないことが、怖かった。

 けれども、その恐怖すら消えていく。リトラが俺の事をいらないのであれば、死んでも良かった。


「……行こう」


 俺はそれだけ言った。いつもの笑顔を作りながら。


「ソフィア。鍵、貸して」

「えっ……?」


 ソフィアが戸惑っているのを見かねて、俺は鍵を奪い取る。もう、早く進めたかった。


「おい、クロノ」


 心配そうに俺の肩を掴んだゼノの手を、俺は優しくとって外す。


「大丈夫。別に大丈夫だよ。ねえ、それより、開けるよ。皆、心の準備は大丈夫?」

「えっ、いや、ちょっと待て」

「それなら、皆心の準備して? ほら行くよ」

「いや、だから、おまえなんかおかしいって……。……っ」


 確かにいつもと違ったかと、鍵を開けてしまった後に思う。いつもはもう少し、慎重になっていたかもしれない。

 けれども、鍵を開けたおかげで、皆、起こるはずがない幻覚に備えて目を閉じた。きっとこれで、意識は逸れたはずだ。


 扉が開く。それを、俺はぼんやりと見つめていた。

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