76.隙と決め手
「でもよ。どうすりゃいいんだろな」
ゼノが腕を組みながら、そう言った。
俺自身、一度も経験したことがないこの状況で、良い案は思い浮かばない。ただ頭に残っているアミクスとの戦闘を思い浮かべながら、なんとなく口を開く。
「アミクスが頭を上げるのは、光線を放つ時だけだよね。でも、流石にそのタイミングを狙ったらゼノが危ないし、でも代わりに俺がやったとしてもゼノみたいに綺麗に切れないし……」
そう言った瞬間、どうしてか皆俺を怪訝な目で見た。
何か不味い事でも言っただろうかと、俺は再度記憶を手繰り寄せる。けれども、光線を放つ時に頭上げるアミクスの動作はこの時間軸のゼノでも見ているだろうし、違和感のあることは言ってないはずだった。
不思議に思っていると、ゼノが小さくため息を付いて言う。
「いや、てめえが危険な目に合うのも駄目だろ」
その言葉に、ああなるほどと一人納得する。恐らく、自分は考え無しに飛び込もうとしているとでも思われたのだろう。
そう思って、俺は補足をするために口を開いた。
「あっ、そういう意味じゃなくって! 俺の魔法も上手く組み合わせれば、安全にガードしながらなんとか……、って思ったけど、そもそも剣をうまく使えないからできないなーって思って。あはは、俺が少しでも剣の練習してたら良かったね」
「……今は細かく追及する気はねえけどよ。俺達がいるんだから、全部自分でなんとかしようとする考えはいい加減やめろよ」
「えっ? 十分頼ってるつもりだけど……」
その言葉に、どうしてか再び間が生まれた。けれども、今回の計画で俺が何も役に立っていないことは事実で、どうして皆そんな顔をするのか理解ができなかった。
けれども深く考える前に、ゼノが再びため息をつく。
「とりあえず作戦練るか。こいつの言う通り、頭持ち上げんのは確かに光線放つ時だし、その隙をどうにかして狙うしかねえよな。でも、剣入れる隙なんてねえんだよな……」
「あなたが剣を入れられるような、一瞬でも動きを止めれたらいいのよね……」
真剣に言うリトラの言葉に、俺はハッとして口を開く。
「閃光を放つ玉……」
俺がそう言えば、ウルティオさんもハッとしたように顔を上げる。
「確かに、タイミングは難しいかもしれないけど、それを使えばアミクスはその状態のまま固まるね。光線も止まるから、ゼノ君なら切れるんじゃないかな」
「なるほど、それなら余裕かもしんねえ。逃げれるぐらいの時間があれば十分だ」
その言葉に、ようやく希望が見えた気がした。ソフィアが、また少し溢れた涙を拭いながらも、笑顔を見せる。
「皆、ありがとね」
「気にすんなって」
そんな様子に、俺も少しホッとする。
勿論、まだ成功するかはわからない。失敗するかもしれない。けれども、この流れを覚えておけば、たとえ巻き戻ってもいつか見つかるのではと期待してしまう。
「じゃ、一旦作戦会議な」
ゼノの言葉に、皆頷いた。
閃光玉を投げるのは、ウルティオさんの役目になった。俺が投げても良かったが、扱いが慣れている人の方が良いとやんわりとウルティオさんに言われ、そして周りも頷いたのでその流れとなった。
だから俺は見ているだけ。ゼノが再び飛び出し、アミクスの戦闘に入った。
再び、アミクスが光線を放つ動作を始めた。ゼノがアミクスの頭の上に飛び乗る。
「今だね」
そう言ってウルティオさんが閃光玉を投げる。俺から見てもタイミングは完璧。光線を放った瞬間に投げた、はずだった。
眩しい光に目を閉じ、そして再び開けば、アミクスの頭と銅は既に閉じていた。ゼノがアミクスの頭の上から飛び乗り、再び攻撃を受けながら叫ぶ。
「もっと早く投げれねえ!?」
「これでも精一杯だ!」
そう、間違いなくウルティオさんは最善の速度だった。けれども、あくまで普段戦うことのない、ただの一般男性が投げる動作だった。だから、投げる動作をしている間にアミクスは光線を放ち終わってしまう。
流石にウルティオさんは、アミクスに近付けないだろう。そうであれば、思いついたことは一つしかなかった。
「ウルティオさん。閃光玉、俺にください」
「えっ……?」
「俺が近付いて投げます。ガードしながらなら、俺ならきっと……」
そう言おうとすれば、リトラが俺の腕を掴み首を振る。
「閃光玉投げた瞬間は見えないのよ!? もしアミクスの攻撃に巻き込まれたら……」
「大丈夫だって! ちゃんとシールド貼るから!」
「でも……」
「ねえ、私にやらせて」
リトラと俺のやり取りに、突然口を挟んだのはソフィアだった。ソフィアの発言に、俺だけでなくリトラも慌てる。
「ま、待ちなさいよ! クロノが行くのも不安だけど、ソフィアが行く方が、その……」
「行くんじゃないよ。私には弓があるから」
そう言って、ソフィアは背に担いでいた弓を取り出した。
「それに、アミクスの最期になるかもしれないんだよ。それなら、私にやらせて」
その言葉に、ウルティオさんは黙って頷き、ソフィアに閃光玉を渡した。ソフィアは矢の先端に閃光玉を付け、アミクスが見える所に立った。
「ゼノ!!」
ソフィアがゼノに向かって叫ぶ。
「私が矢で一瞬でそっちに届かせるから!! だからアミクスを!! お願いね!!」
ソフィアがそう言った瞬間、アミクスは一瞬こっちを見た気がした。けれども気のせいだろう。アミクスがこちらに来ることはなかったから。
そして、その後すぐにアミクスが光線を放つ準備をした。
瞬間、矢は放たれた。光線の光が見えたのと同時に、辺りが白く光る。
「任せとけ!!」
その言葉が聞こえたと同時に、アミクスの首が体から離れた。




