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君が知らないリトライ 〜仲間が死ぬ度に時間が巻き戻るので全員生存ルートを見つけたいのに、ヒロインの性格属性がたまに変わるので困ります〜  作者: 夢見戸イル
山の都“✕✕✕✕✕✕”

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72.表と裏(一部リトラ視点)

(リトラside)


 ウルティオさんと少し楽しそうな顔で話すクロノを見て、リトラ自身が胸騒ぎを感じたわけではなかった。リトラにとって、ウルティオさんは特に害のない普通の人だった。

 けれども今までに経験したことが、リトラに少しだけ不安を感じさせた。


「ねえ」


 隣にいる、ウルティオさんの事を睨みながら歩くゼノに、リトラは声をかける。


「どうしてウルティオさんの事、そんなに警戒しているのかしら?」

「えっ、それは、その……」

「……何か、未来を知っている、ってわけじゃないのよね」


 その質問をした後、リトラはゼノの表情を注視した。けれどもゼノは、何馬鹿な事を言ってるんだというような表情で、リトラを見る。


「は? 予知夢とかって意味か? んなんじゃねえよ。なんか、勘っつうか」

「……そう」


 ゼノの言葉に、リトラは少しだけ安堵の息を吐いた。この様子であれば、自分の状況とは違うだろう。

 そもそも、出会った時は言動が同じだった。変化も、見ている限りでは納得できる範囲のものだったから、単なる心境の変化だろう。


 ゼノの事は、ずっと嫌いだった。だってゼノは、クロノの事を×す存在だったから。

 けれども、今は違う。そして、ゼノは強い。味方になれば、逆にクロノを守ってくれる存在だと、ようやく気付いた。


 それならば、拒む理由などどこにもない。弱い自分にはできないことも、ゼノにはできてしまう。


「ねえ、お願いがあるの」


 リトラは、ゼノにだけ聞こえるような声で、願いを告げた。その願いに、ゼノは笑う。


「あたりめえだろ。つかなんだよ。てめえこそ変な夢でも見たのか?」

「変な夢……。そうね。嫌な夢を見たの。次の神殿で、クロノが自分を犠牲にする選択をする夢よ。そして……、死ぬの」

「まあ、あいつと旅してたら、そんな夢見ても不思議じゃねえよな。まっ、正夢とかあるみてえだし、俺もあいつのことよく見とくぜ」

「……心強いわ」


 それだけ言って、リトラはクロノの方をぼんやりと見た。


 わかっている。自分は弱くてクロノを守れないことも、クロノに頼ってもらえる存在でないことも。そんなこと、痛いほど身に沁みて理解していた。そして、自分の言葉はクロノに届かないことも。

 そして、優しいクロノは、何を言っても自分の事は嫌わないことも理解した。けれども、確実に距離はできたはずだ。


 本当は、クロノに好きだと言いたい。クロノを笑顔にするのは、誰でもない自分がいい。


 けれども、これが正解なのだ。


 寂しい。苦しい。今すぐあなたを抱きしめたい。


 けれどもこれでいいのだと、リトラは必死に自分に言い聞かせた。



(クロノside)


 俺達がウルティオさんに連れて行かれたのは、施設の一番奥にある倉庫だった。


「埃っぽいのは許して欲しい。ここはアミクスに掃除をするよう指示していなくてね」


 そう言いながら、ウルティオさんは倉庫の奥に向かう。そこには、大きな布がかけられた何かがあった。

 ウルティオさんは、その布を静かにとる。


「えっ……、アミクス……?」


 そこに広がった光景に、俺は思わずそう言った。そこには、アミクスと同じ形をしたものが、いくつか並んであった。

 驚く俺に、ウルティオさんは口を開く。


「正確にはアミクスではないんだけどね。アミクスはただの固有名詞で、アミクスみたいな自動で私達のことを手伝ってくれるものをロボットと呼んでいる。……ねえ、ソフィア」


 ウルティオさんは、ずっと俯いているソフィアの前にしゃがんで目を合わせ、頭を撫でながら言った。


「アミクスは壊そう。確かに記憶はゼロからになってしまうけれど、代わりの体はまだ沢山ある。ここに住む人数が少なくなってしまったから、先人に言われたアミクスを残して、それ以外を動かさなくなっただけなんだ。もしソフィアが望むなら、アミクスという名前をまた覚えさせてもいい。だから……」

「嫌だ!」


 ウルティオさんの言葉に、ソフィアは叫ぶ。


「アミクスの代わりなんていないもん! アミクスはアミクスだもん!」

「ソフィア。もう幼い子供じゃないからわかるだろう? アミクスはただのロボットだ。感情なんてなくて、言動も何もかも、作られたものでしかない。それに、女神様の謎を解くために、こんなにも皆が協力してくれている。それを、ソフィアの我儘で止めるわけにはいかないだろう?」

「そうだけど……! でも……!」


 ウルティオさんの言葉に、ソフィアは唇を噛む。そして何か言おうとして口を開いて、そして止まった。

 ソフィアの目からは、再び大粒の涙があふれ始める。


「ごめん、どうしても、壊して良いよって、言えない。アミクスは、ずっと、ずっと私が寂しいとき一緒にいてくれた友達で、だから……。ほんと、ごめん」


 ソフィアは、ウルティオさんを押しのけて倉庫を飛び出した。そんなソフィアを見て、ゼノはポツリと呟く。


「……まあ、別にあいつの友達を壊してまで神殿に行くこともねえだろ。皆が魔力を持てる世界? つうのも、別に女神いなくても実現できるわけだし。……ただ」


 そう言ってゼノは俺を見た。

 一瞬その理由はわからなかったが、俺もすぐに理解した。


「……そう、だね。俺の妹は、もう、死んでるわけだし、確かに女神様の伝えたいことはわからないままだけど、でも……、だから……」


 やめよう。そう言う流れなのはわかっているけれども、どうしても口に出せなかった。

 わかっている。俺の妹を生き返らせるためならソフィアの大切な友達を壊していいなんて、おかしな話であることを。それに、これ以上進まなければ、誰もこれ以上危険な目に合わないということも。

 それでも、ここまで頑張ってきて、もうずっと繰り返してきて、それをやめたと言えない我儘な自分がいた。


 そんな俺の腕に、リトラが優しく触れる。


「……それでも、クロノがここまでして生き返らせたいと思う、大切な妹さんなのでしょう? 簡単に、結論なんて出せないと思うわ」


 嫌われたと思っていたリトラに優しくそう言われて、俺は驚いてリトラを見た。久々に見た、優しいリトラの表情だった。

 ホッとする気持ち。けれどもそれ以上に、その優しさが鋭く心に刺さっていく。


 大切な妹なのは間違いなかった。間違えて俺が生きてしまったのだから、俺の命で良ければいくら捧げても良かった。それを両親も望んでいると思った。

 そして、無事妹を生き返らせることができたら、俺も生きていてよかったのだと思ってもらえる、そんな邪な感情もあった。無価値な人間に戻るのが、怖かった。


 けれども、俺の命じゃないのならどうだろうか。前回は、ゼノが問答無用で壊そうとしていたから、ソフィアを説得してアミクスを壊すのが最善だと思った。

 けれども今は違う。戦う前に選べる。


 アミクスはただの物で、それでもソフィアの大切な友達で、だから、俺の我儘な感情で……、


 少しだけ眩暈がして、俺は思わずロボットに寄りかかろうとしてしまった。けれども手を置いたところがズルリと動き、大きな音とともに俺は尻もちを付く。

 何がおこったのだろうかと、俺は落としてしまった何かを見た。


「ひっ……」


 俺は思わずそれから距離を取る。アミクスと同じ顔が、体と分離して俺を見つめていた。

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