70.友達と決められた言葉
「もし戦う相手が、アミクスだったらどうする?」
その言葉に、ソフィアの顔は笑顔のまま固まった。
そりゃそうだろう。普通は、戦闘になるにしても、何かの魔物だと思うだろうから。アミクスと戦うなんて、未来を知っていなければ起こり得ない発想だ。
「ま、待って。アミクスがそう言ってたの?」
「……言っては、いないかな。でも、アミクスは戦闘機能を備えたロボットなんでしょ? しかも、女神様がここを守った少し後に作られたんだったら、可能性はあるかなって」
「いや、そんな、そんなことは……」
ソフィアは震える声で、他の皆を見た。皆、否定はできない。勿論アミクスと戦う証明もできないけれども、戦えないと言う証明もできないのだ。
「……少なくとも、そうかもしれないと覚悟しながら行かなきゃいけないとは思うわ」
そう言ったのはリトラだった。そんなリトラの言葉に、ソフィアは泣きそうな顔になる。
「そんなの嫌! アミクスとは戦いたくないもん!」
「い、いや、まだそうとは決まってねえだろ!?」
「でも、そうかもしれないんでしょ!?」
「まっ、まあ、否定もできねえけどよ……」
ゼノの言葉に、ソフィアは縋るような顔でウルティオさんを見つめた。
「ティオおじさん! なんとかならない!? 事前に調べるとか!!」
「かまわないのだけど、せめて神殿の場所に連れて行ってもらってからはどうかな? 下手にいじって、神殿の場所すらわからなくなるのは不本意だろう?」
「それは、そうかもだけど……。でもでも、すぐに戦闘が始まったら!?」
ソフィアの言う通りで、戦闘はすぐに始まる。それを言えない俺は、少しもどかしい気持ちになった。
ただ、俺の経験上の正解のルートを言うために、俺は口を開く。
「そうなったら、とりあえずは逃げない? 俺から言っててあれだけど、考えすぎかもしれないし、別の魔物が出てくるかもしれないし」
「……うん。そうだね」
ソフィアは少し落ち着いたのか、視線を落としながらも頷いた。
きっとこれで、ソフィアにも少し心の準備ができただろう。突然の事に、パニックを起こして死ぬことはきっとない。
「行こう。アミクスは入り口の前で待ってるって」
俺の言葉に、誰も何も言わず頷いた。
アミクスは、入り口の前で静かに待っていた。そんなアミクスを見て、ソフィアは涙をためながら駆け寄る。
「アミクス!」
「どうしましたか? ソフィア」
「神殿の場所、知ってたんだよね!? ねえ、アミクスとこれから戦うことなんて、無いよね!?」
「お答えできません」
アミクスは、淡々と言った。
「なんで!?」
「お答えすることは、禁じられているからです」
「誰に!?」
「女神様にです」
アミクスの言葉に、ソフィアはがっくりと肩を落とす。そんなソフィアの背中に心配そうに触れながら、ゼノがソフィアの隣に立ってアミクスを見た。
「……なあ、俺達、アミクスの友達なんだよな?」
「はい、友達です」
「友達でも、教えてくれねえの?」
「はい、教えられません」
「……そうか」
アミクスの言葉に、ゼノも少し悲しそうな顔をする。
きっと本当に、アミクスには感情が無いのだろう。友達なのに、これから戦わなきゃいけないのに、戸惑いもせず教えない選択を選ぶのだから。
俺は、アミクスに見えるように、ソフィアとゼノの前に立った。
「アミクス、神殿の場所に連れて行ってくれる?」
「はい。その前に、再度神珠の照合をいたします。まずは青い神珠を見せてください」
アミクスの言葉に、俺は珠を取り出しアミクスに見せていく。赤の神珠を見せ終わった後、アミクスは先ほどと同じ言葉を告げた。
「赤の神珠が本物であると照合完了。神殿の入り口に案内後、戦闘が必要となります。準備はよろしいでしょうか」
「うん。大丈夫」
俺が頷くと、アミクスは施設の入り口を開けた。
アミクスが案内したのは、施設や街だった場所から30分ほど歩いた場所にあった。それも、何もない崖の下で、アミクスは立ち止まる。
「ここか?」
「はい」
ゼノの言葉にそれだけ言って、アミクスは崖に鉄の手で触れる。その瞬間、崖の側面に不思議な模様が浮かび上がった。
そして、その模様の中心に四角いくぼみがあった。アミクスはそれを指さし、声を出す。
「ここに入るには、鍵が必要です」
「それは、どこに……」
「私の中です。これから、戦闘を開始します。私を壊し、私の中にある鍵を壊してください」
アミクスがそう言った瞬間、顔の部分が少し浮き上がり、ビームが放たれる。
「シャドウ シールド!」
俺はいつものようにそれを受け、皆を守る。後ろで、ソフィアの震えた声が聞こえた。
「うそ……、ほんとに……、アミクスと……」
「とりあえず作戦通りに逃げよう!」
そう言っている間に、アミクスの手は光を放った剣のような形に変形し、俺達に迫って来た。そんなアミクスの剣を、ゼノが受ける。
「くそっ、すげえ力だな」
「全員逃げるのは難しいか……」
「てめえ一人残って俺達を逃がすとか言うなよ!」
その言葉に、俺は苦笑いした。確かに、一人でここに残ると提案したことが、過去の時間軸でもあったからだ。
けれども、そんなことをしなくて済むことを、俺は知っている。
「皆、目を閉じて!」
ウルティオさんの言葉に、俺達は咄嗟に目を閉じた。目を閉じてもわかるような眩しい光が、俺達を包む。
と、アミクスの体が止まった。
「これはアミクスの視覚による思考を一瞬麻痺させる光だ! それでもすぐに復活する! 今のうちに逃げて!」
ウルティオさんの言葉に、俺とゼノは目を合わせて頷き、そして駆け出した。




