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君が知らないリトライ 〜仲間が死ぬ度に時間が巻き戻るので全員生存ルートを見つけたいのに、ヒロインの性格属性がたまに変わるので困ります〜  作者: 夢見戸イル
山の都“✕✕✕✕✕✕”

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68.欲望と幸せ

 次の日、俺は覚悟を決めてアミクスを探しに部屋を出た。ポケットの中には今までに手に入れた二つの神珠。過去の時間軸と同じであれば、アミクスは図書室で掃除をしているということも把握していた。

 と、過去の時間軸では無かった足音が俺の耳に聞こえた。その足音に、俺は少し期待して顔を上げる。


 予想通り、目の前に現れたのはリトラだった。この時間軸はゼノの行動にも少し変化があるけれども、この軽い足音がリトラであることは覚えていた。


「あっ……、リト……」


 そう声を発した俺の隣を、リトラは俺と目を合わせず通り過ぎた。

 俺に気付かなかったわけではないだろう。明らかに顔を背けたリトラの反応に、俺は思わず立ち止まって呆然としてしまった。


 眠れなかった、あの晩の事が原因だろうか。次の日の朝も、ゼノの言葉から逃れるのに必死で、リトラの事は見ていなかった。だからと言って、無視までされる理由が俺にはわからなかった。

 動悸が収まらない。リトラに嫌われたのかと思うと、泣きそうになる。いつもの自分でいなくちゃいけないのに、自分が自分でいられなくなる。


 何をしいてるんだ。皆死なずにここまでこれたのだから、良いだろう?


 自分を保とうと、俺は必死に自分にそう言い聞かせた。


 だって奇跡だ。リトラの性格が変わったのに、一度もリトラは死なずにフォッシリムに来ることができたのだから。


 そんな言葉を俺自身にかけながら、俺は誰もいない個室に駆けこんで、鍵をかける。そうして、膝を抱えてしゃがみ込んだ。

 上手くいった理由は、なんとなくわかるのだ。リトラと俺の距離があればあるほど、旅は進む。


 だって、3つ目の神殿に入れたのたって、一つ前の俺にデレデレなリトラではなくて、二つ前の性格のクールな性格の時のリトラだなのだから。


『後ろから回復のサポートをするので、安心して戦ってください』


 クールなリトラの時、いつも俺にそんな言葉をかけてくれていた。少し距離のある敬語は寂しかったけれども、それでも戦闘は一番安定していた。

 勿論、フォッシリムに来た時は突然の事に対応できずに何度も死なせてしまったし、最終的には神殿のギミックにやられて死んだ。けれども、それ以外の性格の時と違って、リンピアナからイグニスベルクまでは上手くいったのだ。


 そして性格が変わった。俺に好きと沢山伝えてくれたリトラは、ずっと俺の傍にいた。


『クロノと離れたくないの!』

『クロノのそばにいさせて!』


 そんなリトラの言葉が蘇る。

 勿論、クールな性格のリトラの時と同じように回復魔法はかけてくれたけれども、距離が近いから守り切れずに死んでしまうことも多かった。

 結局、フォッシリムにある神殿に行けないまま性格が変わった。


 今の性格のリトラになってからは、恐ろしいほど順調だった。勿論、イグニスベルクでは予想外の行動もあった。

 それでも、そのイグニスベルクですら今までで最善の形で全てが終わり、無事フォッシリムに来ることができた。一番俺と距離のあるリトラの時に、一番成功してしまった。


 勿論、リトラがいない方が良かったわけではない。だって、イグニスベルクではリトラが隠れていたゼノの存在に気付いてくれたから、ゼノとここまで仲良くなれたのだ。魔力切れのタイミングが変わったのも、リトラがゼノ達を俺の所に向かわせてくれたから。


『あんたのためじゃない』


 今の性格のリトラが、良く言う言葉だ。最初は前の性格の印象に引っ張られて、照れ隠しで言っているのかと思っていた。それに、時折聞こえてくるソフィアやゼノの言葉が、俺に期待を持たせてしまっていた。

 けれども、最近どうしても思ってしまう。リトラは俺を気にしているのではなく、ただ旅が上手くいくことだけを気にしているのだと。だからこそリトラは死なないし、旅は上手くいっているのだと。


 勿論、過去の性格では少し面倒だと思うこともあった。

 臆病なリトラの時はもう少し一人で動いて欲しいと思ったし、過保護なリトラの時やデレデレのリトラの時は、リトラが異常に俺の前に出たり俺の動きを止めようとするので逆に危険な状況に陥ることも多かった。

 けれども、そんな面倒さですら嬉しいと感じてしまう俺がいた。俺がいないと生きていけないリトラが、俺のために体を張ってくれるリトラが、可愛くて意地らしくて、そして俺が必要とされている気がして心が満たされた。


 けれども、俺をリトラが必要としなければしないほど、リトラは生きる。旅も上手くいく。そう思えば思うほど、そうであることが一番じゃないかと思ってしまう。

 きっと俺の事の好きだと言ってくれた一つ前の性格のリトラは、神様からの一時の夢だったのだろう。或いはリトラに必要とされて満たされようとした、俺に対する罰なのかもしれない。


 寂しい。俺のことを必要として欲しい。俺がいないと生きていけないのだと、縋って欲しい。リトラの幸せを願いたいのにそう思ってしまう愚かな感情に、必死に俺は蓋をする。

 こんな幼稚で我儘な感情で、リトラを困らせたくない。リトラの幸せを純粋に願える人でありたい。


 俺は、大きく深呼吸して、ポケットに入った神珠を握りしめ、目を閉じる。そして過去の時間軸の俺を思い出しながら、再び目を開いて立ち上がった。

 大丈夫。ちゃんとこの幼稚な感情には蓋ができただろう。だからきっと今の俺は、過去の時間軸と変わらない俺だ。バレたことはない。


 俺は部屋を出る。勿論、廊下には誰もいない。ホッとした気持ちと、空しい気持ちでぐちゃぐちゃになる。

 そんな感情にも必死に蓋をして、俺はアミクスのいる図書室へと向かった。

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