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君が知らないリトライ 〜仲間が死ぬ度に時間が巻き戻るので全員生存ルートを見つけたいのに、ヒロインの性格属性がたまに変わるので困ります〜  作者: 夢見戸イル
山の都“✕✕✕✕✕✕”

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66.煩い言葉と心地良い言葉

 あれから、ゼノは俺に今すぐ寝ろと煩く言った。隣にいたリトラも、ゼノほどではないけれども、いつものように迷惑かけたら許さないと俺を睨む。

 けれども、寝たい気分ではなかった。確かに布団に入れば少しは眠れるかもしれないが、過去の時間軸と同じように、もうすぐ戻って来るであろうウルティオさんと話しておきたかった。


「なあ、マジでそんな生活してたらいつか倒れるぞ!?」

「いや、俺は大丈夫だから」

「てめえの大丈夫は信用ならねえんだって!」


 そんなゼノとのやり取りを少し面倒に感じていると、足音が聞こえた。音の主をしっている俺は、振り向いてその主を視界にとらえる。


「ウルティオさん!」


 名前を呼び、俺はウルティオさんに駆け寄った。そうすると、ゼノは少し複雑そうな顔をして距離を取る。

 俺は知っている。ウルティオさんが苦手なゼノは、ウルティオさんに近付こうともしないことを。


 そんなゼノの様子に気付いたのか、ウルティオさんは眉を下げながら、俺だけに聞こえる声でこう言った。


「私はゼノ君に嫌われているのかな?」

「……どうなんでしょう。それより、俺から旅の話をしましょうか」


 ウルティオさんにまで余計な事を言われたくなくて、俺はすぐに話題を振った。元々ウルティオさんから言われる事だったから、俺から言っても問題ないだろう。

 想定通り、ウルティオさんは頷いた。


「そうだね。ここじゃなんだし、私の部屋で話すかい?」

「そうですね」


 俺が同意すれば、ウルティオさんは廊下に出て歩き始める。勿論、ウルティオさんが俺を部屋に呼ぶこともわかっていた。

 ゼノやリトラの表情は、背中を向けているからわからない。ただ、良い顔をされていないこととだけはなんとなくわかった。だから俺は二人の事を見ないまま、ウルティオさんに付いて行った。




 ウルティオさんの部屋に入ると、いつも不思議な香りがする。一度ウルティオさんに尋ねたことがあったが、どうやら古い本の匂いらしい。

 確かにウルティオさんの部屋には黄ばんだ紙や本が沢山置かれていて、本の一つを開けて嗅がせてもらった時は、確かに部屋に漂う匂いが強くした。


「そのソファーにかけて」


 ウルティオさんはそう言いながら、魔道具でお湯を沸かし始める。いつもウルティオさんは、お茶をいれてくれるのだ。

 お湯が沸くのを待ちながら、旅の話を始めるのだろう。そう思っていた。


「……クロノ君は、眠れていないのかい?」

「えっ……?」

「あはは、ごめんね。少し聞こえちゃって」

「そ、それは、皆が過剰に心配してくるだけで、俺は大丈夫で……」


 俺がそう言えば、ウルティオさんはふっと笑った。


「そうか。きっとクロノ君が大丈夫と言うなら、大丈夫なんだろうね」


 ウルティオさんの言葉に、俺は少しホッとする。実際俺の知っている未来の範囲では別に倒れる事なんて無いのだけれど、証明をすることができない。

 けれどもウルティオさんは、大丈夫だと言った俺の言葉を信じてくれた。そんなウルティオさんに、俺は安心してしまう。


 そんな俺に、ウルティオさんは優しい目をして俺と目線を合わせた。


「でも、少しでもしんどくなったら、誰かにちゃんと言うんだよ。無理だけはしてはいけない。ソフィアから聞いたよ。クロノ君がいたから、イグニスベルクが守られたんだってね。クロノ君が倒れたら、きっとみんな困ってしまう」

「そんな、ことは……。ゼノも強いですし……」


 そう言いながらも、ウルティオさんの言葉に思わず顔が緩んでしまう俺がいた。

 ずっと、いつか自分は不要になってしまうという焦りがあった。その事実は変わらないかもしれない。けれども、ウルティオさんの言葉を聞いていると、少なくとも今は役に立っているのだと、少しだけ自信が持てるのだ。


「あっ、えっと、イグニスベルクでの事を話しますね」


 けれども、そんな感情が少し恥ずかしくて、俺は慌てて話を逸らした。そうして、イグニスベルクであったことを、ウルティオさんに話す。

 けれども、ウルティオさんの言葉が嬉しすぎて、何か余計な事を話しすぎてしまったのかもしれない。ダイヤスネイクの時の事を話すと、ウルティオさんは少し動揺した顔で俺を見た。


「……君は、まるで……」


 ウルティオさんはそれだけ言って、口を閉じる。そんなウルティオさんを不思議に思って見ていると、ウルティオさんは困ったように笑いながら言った。


「……いや、なんでもない。一つだけ聞いていいかい?」

「はい」

「イグニスベルクの人達は、君達に酷い言葉をかけたのだろう? なのに、どうしてそこまで命をかけて守ろうとしたんだい?」

「えっ、ええっと、ただ純粋に、誰も死んで欲しくなくて……」

「酷い言葉をかけたのにかい?」


 ウルティオさんの質問に、ウルティオさんの意図がわかった俺は、真面目な顔をしてウルティオさんを見る。


「どんな人とでも、分かり合える道があると思ったんです。そして、俺達の言葉と行動は、結果としてイグニスベルクの人達に伝わり、俺達の事を理解してくれました」

「……それは、結果論だよね。だけどクロノ君は、分かり合えると信じてたのかい?」

「はい」


 実際、リンピアナの時に痛いほど学んだのだ。少しの言葉と行動の違いで、分かり合えるかどうかが変わるのだと。だからこそ、イグニスベルクでもその道があると信じていた。


 そんな俺を見て、ウルティオさんは少し寂しそうな顔をしてふっと笑う。


「……そうか。そんな君だから、女神様は……」


 それだけ言って、ウルティオさんは何も言わなくなった。


「ウルティオさん……?」

「あっ、申し訳ないね。続きを聞かせてくれるかい?」

「は、はい……」


 ウルティオさんの言葉は、それ以上は聞かないでと言われたようで、俺はこれ以上何も聞かないまま、続きを話した。

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