62.味方と友達
アミクスの存在は、勿論知っている。けれどもアミクスの存在は完全に今までの常識を超える存在で、すぐに理解できるほうがおかしいだろう。
だから俺は過去の時間と同じように、驚いた顔をしながら次の展開を待った。
と、アミクスが、ソフィアに向かって言葉を発した。
「ソフィア。お久しぶりです」
「久しぶり! 元気にしてた? どこか調子悪いところない?」
「はい。元気です。ウルティオが7日前に来て、私の体を整備してくれました。おかげ様で体は良好です」
アミクスは、まるで人間のようにソフィアの言葉を理解し、言葉を発した。そんなアミクスが当然の存在というような顔をして、ソフィアは言葉を続ける。
「そうだったんだ! 良かった! ということは、ティオおじさんはここにいる?」
「いいえ。出かけられました。しかし、またすぐに戻るとのことです」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
ソフィアとアミクスのやり取りを見て、最初に声を上げたのはゼノだった。
「そ、そいつは人なのか!? 中に人が入ってんのか!?」
「えっ? 入ってないよ? アミクスは私たちの先祖が作ったみたいで……。あっ、でもでも! ちゃんとおしゃべりできるんだよ!」
「しゃべれんのは見てたらわかるって! えっ、でも、作った? ほんとに人入ってねえの?」
「入ってないよ! ねっ、アミクス!」
「はい。中身をお見せします」
そう言って、アミクスは背中を向け、手を伸ばして背中についていた扉を開いた。中には、よくわからない細い管と金属で作られた何かがあった。
「ほ、ほんとだ……。つか、中身どうなってんだよ。こんなの見たことねえ」
「あはは。私、機械系は得意じゃなくて、仕組みはよくわかってないんだ。ティオおじさんは得意でわかってるみたいなんだけどね」
「ティオおじさんって、おまえを育ててくれたやつだっけか」
「そっ。あっ、でも、これにも魔石が使われてるっていうのは間違いないかな。凄いよね! そして、アミクスは私が小さい頃、一緒に遊んだり色んなことを教えてくれた大切なお友達!」
「はい。私とソフィアはお友達です」
ソフィアがアミクスに抱きつきながら言った言葉に応えるように、アミクスも腕を伸ばしてソフィアを抱きしめた。
後にウルティオさんから教えてもらうことだが、アミクスに人間のような感情は無く、言われた言葉に対して最適解である言葉をただ言っているだけに過ぎないらしい。けれども、二人の姿を見ていると、アミクスに感情があるとどうしても思ってしまう。
アミクスは、暫くソフィアを抱きしめた後、俺達3人を見た。
「ソフィア。こちらの3人は、味方、ということで、よろしいでしょうか」
「うん! 味方で大丈夫だよ!」
「かしこまりました。登録いたします。よろしければ、お名前をお教えください」
アミクスの言葉に、俺達は一人ひとり名前を告げる。そのタイミングで顔に当たる場所の正面を各々に向けるのだが、ソフィア曰く各々の顔を記憶しているらしい。
「でもよ。ソフィアの友達なのに、味方っつうのもなんだか寂しいよな。なんで味方なんだ?」
「私は、敵が来た時に戦う必要があります。なので、味方を記憶する必要があります」
「敵……?」
ゼノが首を傾げると、ソフィアが口を開いた。
「アミクスはね、500年ぐらい前に作られたんだって。細かく言うと、女神様がここを守ってくれた少し後らしいんだ」
「だったら、神珠のことも知ってんじゃねえのか!?」
ゼノがキラキラした目でアミクスを見た。けれども、アミクスは淡々とした口調で声を出す。
「申し訳ございません。神珠に関しては、記憶しておりません」
「なんだよ……。なんかなんでも知ってそうな感じだったのによ」
ゼノの言葉に、ソフィアも少しがっかりした顔で口を開く。
「そうなんだよねー。私も聞いたんだけど、そこだけは知らないって言われるんだ。だからここには無いと思ってたのに……」
「でもここにあるのは間違いないんだろ? クソッ、自分で探せってか」
「お役に立てず、申し訳ございません」
アミクスの言葉に、ゼノは笑う。
「謝んなって! 知らねえのは仕方ねえだろ! つか、他人行儀なのもやめろって! おまえがソフィアの友達なら、俺も味方じゃなくて友達になりてえんだけど」
「話し方の設定は変更できません。ですが、ゼノは友達、ですね。かしこまりました」
ゼノがそんな事を言ったのは初めてで、思わず頬が緩んだ。それはリトラも同じなのか、少し笑顔になりながらゼノの方を見て口を開く。
「なかなか素敵な事を言うのね」
「わ、悪いかよ」
「いいえ。私もあなたの言葉に賛成よ」
そう言って、リトラはアミクスに向かって手を伸ばす。
「アミクス。私もあなたの友達に入れて欲しいわ」
「かしこまりました。リトラ、あなたも友達です」
リトラの言葉に、俺も続く。
「俺も、アミクスの友達でよろしく」
「かしこまりました。クロノ、あなたも友達です」
こんなやり取りは、過去の時間軸ではなかった。だからこれが、どう作用するのかはわからない。けれども、もう過去の時間軸と同じようにすることは難しい事を、俺も理解している。
ただ未来を知っている俺は、このやり取りだけは絶対に悪い方向に進まないと信じたかった。そう信じたくなるほど心は温かかった。




