61.技術と魔法
「ちなみに、どこか神珠のある場所の目星はあったりするの?」
過去の時間軸と同じように、俺はソフィアに尋ねる。勿論、過去の時間軸と同じように、ソフィアは首を振る。
「ぜーんぜん! そんなのあったら、とっくの昔に探してるよ」
「あはは。確かにそうか。その感じだと、ウルティオさんも知らないよね」
「うん、多分。知ってたら教えてくれてると思う」
本当は未来を知っているから、神珠のある神殿の場所まで把握している。けれども、急いで神殿の場所に誘導したくない理由が俺にはあった。
過去の時間軸と同じように、ソフィアは何かを思い出したかのように口を開く。
「あっ、そうだ! 皆に紹介したい子がいるんだ!」
「はあ? こんなとこに住んでる奴がいるのかよ。……いてっ」
と、リトラがゼノの足を踏んでギロリと睨んだ。ゼノも言い返そうとして、ハッとした顔になる。
「あっ、いや、おまえの故郷だったな。わりい」
ゼノの言葉に、ソフィアは少し困ったように笑う。
「あはは。まあ、ここだけ見ればゼノの感想も正しいよ。それに、住んでるというか、なんというか……。まっ、見る方が早いかも! とりあえず付いて来て!」
そう言って、ソフィアは駆け出した。俺達も、慌ててソフィアに付いて行く。
と、俺はなんとなくリトラの方を見た。リトラは何も言わず、ソフィアの後に続いている。
別に、もう慣れた光景だった。時折、リトラはどうしてか無言になる。
最初の臆病なリトラの時は何かを話そうと口を開いていた時もあったけれど、過保護なリトラの時からは、どうしてか口すら全く開かないタイミングがあった。
最初は性格の問題かと思った。けれども、比較的素直に言葉を発してくれるデレデレの性格の時も同じで、しかもタイミングも同じだったから、一度リトラに大丈夫か聞いたことがあった。
その時、リトラはこう言ったのだ。
『えっ、あっ、だ、大丈夫よ。何を言ったらいいのか、上手く言葉にできなかっただけで……』
一瞬、何かを隠しているような、そんな気もした。似ていたのだ。過去の時間軸のリンピアナで、リトラに時間の繰り返しを告げた時のリトラに。その時のリトラも、ディゼルナさん達に余計な事は言わないように無言になって、聞かれた時だけ動揺しながらも頑張って答えていたのだ。
けれども、無理に聞いたら嫌われる気がして、それ以上は踏み込めなかった。
そして、また性格が変わった。今回のリトラもまた、同じタイミングで無言になっている。
勿論、性格が違うのだから隠し事をしている癖が同じとは限らない。けれどもどうしてか、ずっと引っかかっていた。
「あっ、ここ!」
と、ソフィアが立ち止まる。
ソフィアに連れられやってきたのは、何もないように見える場所。
「は? なんもねえじゃねえかよ」
ゼノの言葉に少し笑いながら、ソフィアは地面の砂を払い除ける。すると、金属製の取っ手の付いた板が現れた。
ソフィアがそれを開けると、階段が続いていた。
ゼノが隣で、目を輝かせる。
「すげえ! 秘密基地みてえ!」
「でしょ! まあ、実際そんな使われ方してるし! フォッシリムにいた私の先祖さん、全員じゃないかもだけど、ここに逃げ込んで助かったんだって。ついでに魔道具も持ち込んで、私が産まれた時は既に研究室だったよ!」
「そっか。じゃあすげえ重要な場所なんだな!」
ゼノの言葉に、ソフィアは少し誇らしげに笑った。
「じゃ、入ろう!」
ソフィアの言葉で、俺達は中に入った。
階段の先は暗闇だった。日の入らない地下空間だから、当り前だろう。
そういった場所に入るには、本来であれば火が必要であるというのが一般常識だ。だからこそ、夜に活動するのであれば火属性の魔法を使える者が重宝されるし、魔法無しで火を起こすのには時間がかかるから、魔力が少なくても火属性の魔法が使えるというだけで雇われることもある。
けれども、ここは違う。ソフィアがボタンを押せば、突然地下空間は昼間のように明るくなる。
「なんだこれ!? これも魔道具か!?」
「うん! 雷属性の魔石がいるんだけどね! 明るいでしょ!」
「雷!? 炎じゃねえのか!?」
「うん! 雷だって使い方によっては明かりになるんだよ!」
「すげえ……! 雷魔法は戦闘用にしか使えねえから、戦い好き以外は外れ魔法って聞いてたのに、こんなんにも使えんだな!」
ゼノの言葉はその通りで、俺も初めてここに来た時は感動した。確かにソフィアは明かりを出す魔道具を持っていたけれども、雷属性の魔石を使っているなんて知らなかったし、夜にここまで明るくなる世界は初めてだった。
「……ほんと、凄いね。広まったら、魔力持ちも含めて便利なはずなのにね」
俺も、そう呟く。これは本心で、夜になれば寝るしかなかった、貧しい魔力無しの生活は、きっと激変するだろう。
そんな俺の言葉に、ソフィアは少し悲しそうな顔をする。
「だよね。本当は魔力なんてなくてもなんでもできるんだよ。なんで、認められないんだろね」
「……悪魔の力、だっけか。こんな便利なもん潰すためにクソみてえな噂流したって考えたら、腹立ってきたぜ」
ゼノの言葉に、俺は頷く。悪魔の力の噂は意図的に作られたものだと知ってしまった今、その部分に関しては嫌悪感を抱かざるを得ない。
だからといって、解決策など思いつかないが。
と、他では聞き慣れない音がした。その音に、ソフィアは立ち止まる。
「アミクス!」
ソフィアの言葉に、何かが聞き慣れない音を立てながら、こちらに向かってきた。ソフィアも、それに向かって駆け寄る。
「いた! 見て! 私の友達! 名前はアミクス! アミクスみたいな子を、ここではロボットって呼んでるんだ!」
そこには、鉄の塊の、けれども丸い胴体に頭と手足が付いたような形をした、ロボットと呼ばれる存在がいた。




