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君が知らないリトライ 〜仲間が死ぬ度に時間が巻き戻るので全員生存ルートを見つけたいのに、ヒロインの性格属性がたまに変わるので困ります〜  作者: 夢見戸イル
岩の村“イグニスベルク”

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58.無言と不安

 あれから、ダイヤスネイクがイグニスベルクの人たちと馴染むのには時間がかからなかった。

 ダイヤスネイクはネロデルフィンのように人懐っこい性格ではなくて静かだけれども、何かあるとここの人たちを助けていた。それがイグニスベルクの人たちにも仲間として受け入れやすかったようだ。


 そして俺たちはというと、1日だけここで休ませてもらい、明日出発することとした。

 本当はリンピアナの時のようにもう少しゆっくりしても良いのだが、ここはあくまで犯罪者が送られる場所。インゴットを取りに来るまではまだ日があるらしいが、新しい人が来るなどどんなイレギュラーがあってもおかしくない。

 勿論過去の時間軸で役人と会うことは無かったが、無意味に日を伸ばした場合の事を俺は知らない。せっかく、今までで一番上手くいったのだ。余計なことをして狂わせたくはなかった。


 そして俺たちは、一室を借りてゆっくりと休んでいた。同じ部屋に3人もいるというのに、部屋は静まり返っている。


 ソフィアがこのタイミングで静かになるのはもう慣れた。きっと、俺たちに話すことを考えているのだろう。

 ただ、今回の時間軸はリトラも静かで、流石に慣れなかった。


 2つの神珠を手に入れたのは、リトラが過保護な性格の時だった。あの時はゼノやソフィアをうまく抑えることができなくて傷だらけになったことを、ソフィアに何時間も怒られた。

 クールなリトラの時はそこまでの時間ではなかったが、それでも小言を言われたことを覚えている。

 デレデレな性格のリトラの時は、徐々に泣き出し、そして無事で良かったと抱きしめられた。あの時間は幸せすぎて、傷による痛みも悪くないと思ってしまうのは秘密だ。


 けれども今のリトラは無言だ。何かを考えているのか、小さい窓から外を見て難しい顔をしていた。

 別に抱きしめられなくてもいい。怒られるのでもいい。リトラの視線をこちらに向けたいと思う自分はどうかしていると、自分でも思う。


 と、扉が開く音がする。俺はなんとなく扉の方を見て、ああそういえばと思う。

 このタイミングで、ゼノは旅の用意ができたと俺たちのいる部屋に来るのだ。


「……なんか、随分静かだな」


 ゼノが言った第一声も、それだった。いつもはそんなことを言わないが、今はゼノにとっても違和感があったのだろう。


 と、リトラが無言で立ち上がった。そして、ゼノのところに向かう。


「……色々と、悪かったわ」

「は……?」


 リトラの突然の謝罪に、ゼノは動揺した顔を見せた。


「な、なんだよ、急に」

「えっと、その……、色々、酷いこと言ったじゃない。あなたに」

「まっ、まあ、それは、俺も無茶苦茶なとこあったというか、俺が子供だったっつーか……」


 そう言いながら、ゼノは少し恥ずかしそうに頭をかく。


「ど、どうしたんだよ、急に」

「だ、だって、これから一緒に旅するんだもの。だから……。それに……」


 リトラは、少し俯きながら口を開く。


「私だけじゃ……、その……、……のこと、守れなかったもの……。あなたのおかげで……」


 リトラの言葉は少し聞き取れなかったけれども、ゼノは納得したような顔を顔をした。


「……ああ、そういうことか。まあ、止められねえ時もあったけどな。それに神殿の時は、おまえがちゃんと忠告してくれなかったら、なんもできねえとこだったよ。そういう意味では、ありがとな」

「えっ、うっ、あっ、そっ、そう! お役に立てたのなら良かったわ!」


 そう言ってリトラは、少し恥ずかしそうに目を逸らす。そんなリトラの姿に、モヤモヤとした感情が溢れ出す。

 今まで、リトラとゼノはずっと仲が悪かった。だけど今は、お互いのことを分かりあって、信頼しあっているようにも見えた。


 そうだとしたら、神殿での違和感も納得できた。きっとゼノが目を覚ましたことに、心からホッとしたのだろう。

 俺の質問に慌てたのも、ゼノへの心境の変化に恥ずかしくなったと思えば、おかしくはない。未来が見えていたように感じたのは、俺が未来を知っているからで、きっと考えすぎなのだろう。


「……本人が一番理解してねえのが面倒だけどな」


 と、ゼノの言葉に、心臓が一瞬跳ねる。考え事をしていて会話を聞いていなかったから、何のことかはわからなかった。

 ただ確実に二人は俺を見ていた。リトラは俺と目があったと思えば、リトラはため息をついてゼノのほうを見る。


「……頼んだわよ。あんたは私と違って強いんだから」

「まかせろ。ここ数日で、てめえが感情的になる理由も痛いほど理解できたしな。でも、てめえもあんま自分を卑下すんな。なにもしなけりゃ死ぬしかねえやつを助けられるのがてめえの魔法だろ? 俺だって限界があるしよ」

「……そうね。ありがと。ちょっと心が軽くなったわ」


 なんの話かわからないまま、二人の会話は続いていく。今更、何の話かなんて聞ける隙などなかった。

 ただ一つだけ言えるのは、俺の知っているどのリトラよりも安心した表情と声でゼノと話しているということだ。そんな光景に、心がズキズキと痛む。


 今回のゼノは、決して性格が大きく変わったわけではない。けれども、今までで一番毒が抜けたように穏やかだった。そんなゼノに、リトラは頼って、安心した顔を見せた。

 そんなリトラを見て、思ってしまうのだ。どれだけ自分が頑張っても、元々価値のなかった人間は価値のないままなのだと。だからリトラは、俺よりゼノに頼るのだと。


 それでもいいじゃないかと、俺は必死に自分に言い聞かせる。

 リトラが、皆が生きてくれるなら、それでいい。リトラが幸せなら、別に隣に俺がいなくてもいい。好きだけど、好きだから、リトラが幸せならそれでいい。

 元々価値のなかった人間が、誰かを救うことでちょっとでも価値のある部分が生まれたのだとしたら、それで十分じゃないか。

 そう何度も、俺は自分に言い聞かせた。

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