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君が知らないリトライ 〜仲間が死ぬ度に時間が巻き戻るので全員生存ルートを見つけたいのに、ヒロインの性格属性がたまに変わるので困ります〜  作者: 夢見戸イル
岩の村“イグニスベルク”

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57.共存と旅の先

 外に出れば、神珠が示す方角はより明確になった。光が指し示す方向は北。それが意味することはわかっていながらも、俺はほかの人の言葉を待つ。

 最初に口を開いたのは、アルカルさんだった。


「やはり、ここより北、か」


 アルカルさんの言葉に、ゼノも首を傾げながら口を開く。


「北に街とか集落があるなんて聞いたことねえぞ」

「それは俺もだ。あるのは険しい山のみ。噂一つ知らぬ」

「あのね、あるよ。街は」


 アルカルさんの言葉の後に口を開いたのは、ソフィアだった。ソフィアは少し困った顔をしながら、続ける。


「正確には、あった、が正しいのかな」

「あった?」

「うん。今はほとんど人がいない」


 そう言って、ソフィアはくるりと俺たちに背を向け、北のほうを見つめる。


「さっき言えなかったことも、そこに着いたら教えようかな。神珠の示す場所が私の予想通りだったら、だけど」

「どこなんだよ、そこ」

「まだ秘密。着いたら教えるね」


 そう言ったソフィアは少し悲しげで、それ以上誰も何も聞けなかった。


「戻るぞ」


 アルカルさんの言葉に、俺たちは無言で頷いた。




 イグニスベルクの集落に戻れば、イグニスベルクの人たちが坑道の入り口だった場所で何やら話し合いをしていた。


「どうした」


 アルカルさんが声をかけると、みんな困った顔でアルカルさんを見る。


「ああ、ちょうど相談しに行こうと思ってたんっすよ。坑道、全体的に崩れてしまってて、どうしたもんかなと」

「仕方ねえこととしても、国の奴らが指定したインゴットを納められねえと、貰える食糧減らされかねねえしなあ」

「裏で貯めてたストック引っ張り出しても、尽きるまでに復旧できるかどうか」


 そんな問題を初めて聞いたとき、最初の俺はここの人たちに申し訳なくなった。けれども、それは簡単に解決できるのだと、俺は知っている。


 アルカルさんが、ダイヤスネイクのほうをチラリと見る。ダイヤスネイクは静かに頷き、先ほどと同じように穴を掘り始めた。

 そんなアルカルさんを、皆驚いたように見る。


「ア、アルカルのじいさん! あんな化け物を手懐けちまったんっすか!」

「……あやつは人の言葉を理解している。言葉を慎まぬと、命はないかもしれぬぞ」

「ひっ……」


 ダイヤスネイクを化け物と呼んだ男は、顔を青くして口を手で塞いだ。そんな様子をアルカルさんは軽く笑った後、再びダイヤスネイクのほうを見る。


「友となった、と言うべきだろうな。まあ、最初に友となったのは、彼女だろうが」


 そう言って、アルカルさんはソフィアのほうを見た。アルカルさんの言葉に、ソフィアは少し首を傾げながらも、何かを思い出したようにハッとして口を開く。


「そうだ! そもそも、ダイ君のこと、ダイヤスネイク、略してダイ君って呼ぼうってみんなで決めたじゃん!」

「いっ、いやあ……、それはあんたが勝手に言い始めただけで……」

「すっごい良い子だよ! それに、神珠の場所も教えてくれたし!」

「神珠!? ほ、ほんとにあったのか!?」


 その言葉に、俺はにこりと笑って、ポケットにしまっていた神珠を見せる。その瞬間、歓声が上がった。


「すげえ……! で、でも、ということは本当に、おまえらの言う世界が叶っちまうのかな」

「いまいち現実味がなかったけど、そういうことだよな!」


 そういった期待の目が、少しだけ俺に突き刺さる。

 旅の目的は、あくまでメミニを生き返らせてほしいという願いを叶えるため。イグニスベルクの人たちが望む世界は、寧ろソフィアの研究成果にもよる。


 勿論、女神様が見せる映像もそれに関することだから、何かヒントになればという期待もあるし、リトラが以前言った通り、女神さまの願い自体が平等に魔力がある世界だという可能性もあった。そして俺自身、魔力なんて関係ない世界になって欲しいと、強く願っている。


 けれども、もし、この旅の結末が、皆が魔力を持つ世界がないのだとしたら。そうしたら、俺はどうすべきだろうか。

 両方を願えないのであれば、メミニの事は諦めて、この世界のことを願うべきなのだろうか。


 そんなことを思っていると、隣にいるゼノが口を開く。


「まだ気が早いぜ。それに、神殿で俺の知らねえ歴史を見てよ。余計に何が正しいのかわかんなくなっちまった。前も言った通り、俺もこいつらの旅に付いていくけどよ。てめらの期待とは違う答えを出すかもしれねえ」


 ゼノの言葉に、アルカルさんは笑う。


「成長したな」

「うっせえ、じじい」


 そう言って恥ずかしそうに頭をかくゼノに、笑いが起こる。


 と、暫く穴を掘っていたダイヤスネイクが再び別の穴から現れた。かと思えば、少し離れた場所に向かい、動かなくなる。

 コン、と、何か固いものが当たる音がした。見るとダイヤスネイクのしっぽのあたりから、何かが出てきている。


「お、おい、あれって……」

「マジかよ……」

「ダイ君の、便……!」


 周りが少し顔を引きつらせる中、ソフィアだけは目を輝かせてそれを見た。そして、ルンルンとした足取りでダイヤスネイクの出した便に向かう。


「えっ、こ、これって……!」


 そう言って、ソフィアは何かをもって再び俺たちに近づいてきた。


「これ、見て!」

「お、おい! んなもんこっちに持ってくんな……、って、あれ?」


 一人の男が、何かに気が付いたようにソフィアの手をまじまじと見た。そんな様子に、ほかの男たちも恐る恐るソフィアの手を見た。


「……鉄鉱石か」


 アルカルさんがポツリと呟く。その言葉に、ソフィアはニコニコ笑いながら頷く。


「正解! ダイ君の便は、鉄鉱石!」

「おおお! これで暫くは困らねえな! 寧ろダイ君にいっぱい便出してもらうか……」

「うーん。装置も見つけて併用したほうがいいとは思うけど……。土も無限にあるわけじゃないし」

「確かにそうか。でも助かったぜ!」


 男たちの言葉に、ダイヤスネイクは少し恥ずかしそうにそっぽを向いた。流石に自分の出した便でここまで騒がれるのは、恥ずかしいらしい。


 けれどもダイヤスネイクへの警戒はだいぶとれたのか、近づくものも現れていた。


「あやつの住む場所も考えねばな」


 アルカルさんが、ぽつりとそう呟いた。

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