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君が知らないリトライ 〜仲間が死ぬ度に時間が巻き戻るので全員生存ルートを見つけたいのに、ヒロインの性格属性がたまに変わるので困ります〜  作者: 夢見戸イル
岩の村“イグニスベルク”

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49.強さと人の価値

 ゼノの言葉の意味を少し考えた後、俺はハッとしてリトラの方を向いた。


「あっ、もしかして、体が軽いのはリトラが回復魔法使ってくれたから? ありがとね!」


 けれども俺の言葉に、リトラはどうしてか俯き、声を震わせながら言った。


「……っ。それだけじゃ、ないわよ。あいつ……、ゼノが、あんたを庇いながら落ちてくれて、即死じゃなかったから……」

「待って!? じゃあ、ゼノが大きな怪我を……」


 そう言ってゼノを見ると、どうしてかゼノは怒ったような顔で俺を睨んだ。


「俺はちょっと腕の骨折れたぐらいだ! 庇いながらっつっても、落ちながらじゃ限度があって、寧ろてめえが下敷きになって……。高さも、あのでけえ蛇が来てくれて……、高さもちょっとマシになって……。それでも落ちた衝撃はあって……」


 ゼノの言葉に、俺は血の気が引くような感覚がして、ゼノの腕に触れた。


「ごめん、痛かったよね!? ごめん、俺の力が足りなくて……」

「俺が痛いとかどうでもいいんだよ!! 一番痛かったのはてめえだろ!? 落ちる前も、あんだけ苦しそうにしててよ!」


 そう言われても、落ちた瞬間の記憶は無かった。魔力不足で気を失った時も、一瞬の出来事で、しかも毎回経験する事だったから、気にした事なんて無かった。


「あはは。色々と必死で、あんま記憶なくて……」

「そういう……、問題じゃねえだろ……」


 その言葉に、ゼノが何に怒っているのか、俺には理解できなかった。そんな俺の隣で、アルカルさんが少し優しい目をしながら口を開く。


「貴様がこやつらに苦しんで欲しくないのと同じように、こやつらも貴様だけに背負わせたことが苦しいのだ」

「でも、俺が苦しむだけで皆さんの命と皆さんの大切なものが守れるなら、それが一番ではないですか? 他に最善のやり方は思い浮かばないですし……。そもそも、俺達が来なかったらこんなことにもならなかった気が……」


 少なくとも、今まで何度もループした中で、一番被害が小さい。今後繰り返しが起こっても、この流れで行くのが最善だろう。ゼノに怪我を負わせてしまったことだけは、改善しなければならないが。

 そんな事を思っていると、どうしてかアルカルさんは、少し悲しそうな表情をして言った。


「……貴様の言う最善を、否定できないことがもどかしい。俺が貴様と同じ立場であれば、同じように命をかけるか、或いは自分の命を惜しむか……」

「命をかけるのはやめてくれよ、アルカルのじいさん。って、言いたいところだけどよう」


 と、イグニスベルクに来た時に最初に話した男が口を開いた。


「今のままじゃ、弱っちい俺らにはアルカルのじいさんを止める権利なんかかいんだろうなあ。でも、なんだっけ? 魔力が誰にでもある世界をこいつらが作ってくれんなら、俺らも守る側に回れんのかねえ。魔力無しの世界になってあいつらを絶望させるより、良い世界に思えてきたぜ」


 その言葉に、俺は男の方を見た。今までの時間軸でも、俺達の事を理解してくれるようにはなった。けれども、そんな言葉を貰えたのは初めてだ。


「悪かったな。前は好き勝手言ってよ。確かに、おまえの無茶はちょっとハラハラしたけどよ。俺達が助けられたってのも事実だし、まずはそこにお礼を言わねえとな」


 男の言葉に、周りの人達も皆頷き、次々と俺にお礼を言ってくれた。そんな光景に、嬉しくて思わず頬が緩んだ。


 ちゃんと、守れた。ちゃんと、ここの人たちの役に立てた。それが、俺がちゃんと価値のある人になれた気がして、嬉しかった。

 大げさかもしれないけれど、俺が生きている意味が、ここにある気がするのだ。


「誰かを守るための力、か」


 と、ゼノがポツリと呟いた。


「忘れてたな。俺が強くなるって決めた理由。弱っちい兄貴のことも守りたくて、強くなったんだっけか。それを、せめえ視野で魔力嫌って、このざまかよ。ばからし」


 そう言ったゼノの表情は見えなかった。ただゼノは、俺の背中を軽くたたいて、俺の隣を通り過ぎる。

 そして、ソフィアの方へと向かった。


「……なあ。女神に願わなくても、魔力持てるって、ほんとに信じていいんだよな」

「うっ、うん。今クロノの魔力分析してて、色々と、その、安全に……」

「俺、何年も待てねえぜ」

「だ、大丈夫! だと思う! 絶対、ではないけど、色々と目途はたってて……。それに、女神様、ここでも魔道具を使って便利にしてたでしょ! 女神様の謎を追ったら、ヒントも見つけられる気がしてるんだ!」


 ソフィアの言葉に、ゼノはふっと笑った。そして、どうしてか少し悲しそうな顔をしながら、俺を見た。


「だってよ。俺が魔力を持ったら、てめえなんて足元にも及ばねえよ。だから覚悟しとけよ」

「……あはは。そうだね」


 ゼノの言葉は、少し前のゼノの事を考えると、喜んでもいいはずだ。なのに、素直には喜べなかった。

 ゼノが魔力をもったら、間違いなく俺よりも強くなる。当たり前だ。今だってゼノはとてつもなく強いのだから。動きも力も、今から俺が努力したってきっと追い付けない。そして、何度も繰り返さなければ上手くやれない俺と違って、きっとゼノなら上手く皆を守れる。


 もし、そうなったなら。俺はまた、無価値な人間になるのだろう。そうなってしまえば、俺が生きている意味はあるのだろうか。

 そう思った瞬間、俺は心の中で自分に対して笑った。自分の事ばかりで素直に喜べない俺は、性格すら悪い、魔力がなければなんにもない人間なのだと思えてならなかった。

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