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君が知らないリトライ 〜仲間が死ぬ度に時間が巻き戻るので全員生存ルートを見つけたいのに、ヒロインの性格属性がたまに変わるので困ります〜  作者: 夢見戸イル
岩の村“イグニスベルク”

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47.無理と無自覚

 ゼノとアルカルさんの言葉に、なんとか自分が大丈夫な事を伝えようと俺は口を開く。


「おれ、は、まだだいじょう……」

「いや、絶対大丈夫じゃねえだろ!」

「いや、おれ、は、まだ……」


 と、視覚と聴覚が何か温かいものに優しく覆われ奪われる。瞬間、集中力が切れ、魔力を集める先もわからなくなって、俺はとうとう魔力の鎖を消してしまった。


「こういう時は、老いぼれにでも甘えろ」


 アルカルさんの声に、俺は一瞬自分で立っていられなくなって、その場にしゃがみ込む。それと同時に、別の何かが俺の体に触れた。


「じじい。俺は一旦こいつを、安全な場所に連れて行く。頼んでいいか?」

「俺を誰だと思っている?」

「まっ、そうだな」


 その言葉を聞いていると、ゼノは俺を支えながら歩き始めた。霞む視界に、アルカルさんが上手くダイヤスネイクを誘導している姿が見える。頭もぼんやりする中、俺は、ただされるがままにゼノに付いて行くしか方法が無かった。


 と、暫くしてリトラと、イグニスベルクの人達が見えた。このタイミングでここに来たことがない俺は、少し不安になって立ち止まる。


「安心しろ。じじいが事情を説明してくれてるし、じじいの言葉は絶対だ。なんもされねえよ」


 ゼノの言葉に、俺は改めてイグニスベルクの人たちを見た。彼らは、少し複雑そうな顔をしながらも、何も言わなかった。

 そんな中、リトラが俺とゼノに向かって駆けよって来た。


「こいつ、やっぱおまえの言う通り、無理してやがった。俺はじじいのとこに戻るから、こいつを頼む」

「わかったわ」


 リトラに俺の体が預けられた後、ゼノはイグニスベルクの人たちを見る。


「てめえらも、弱ってるからってこいつに余計な事すんじゃねえぞ。こいつは現れたでけえ魔物、一人でずっと食い止めてくれてたんだからな。こいつに何かしたら、じじいだけじゃなくて俺も許さねえから」


 それだけ言って、ゼノは俺達に背を向けて去っていく。そんなゼノの優しさに泣きそうになりながらも、俺はこんなことをしている場合じゃないと、回らない頭を必死に回転させる。

 アルカルさんとゼノ二人がこのタイミングで、ダイヤスネイクの注意を逸らしたことは一度もない。あったとして、俺の魔力が切れた後、ダイヤスネイクがイグニスベルクを襲おうとしたタイミングだ。


 ダイヤスネイクが出てからは、少しの判断ミスが誰かの死に繋がるだろう。だから俺は、必死に過去の時間軸の全てを思い出す。

 そしてすぐに、ゼノの言葉が思い浮かんだ。


『実はさ、こっちに向かって山からクソでけえ岩が転がって来た時があってよ。じじいが、自分の剣で砕いたんだぜ? 改めて、やっぱじじいはあり得ねえよな。んで、おまえになんかあったんじゃねえかって、俺とじじいが向かったら、おまえがくだばってたってわけ』


 きっとそれは、ダイヤスネイクが暴れることにより引き起こされたものだろう。けれども、今、アルカルさんはここにいない。それならば、その岩は誰が止めるのだろうか。

 と、リトラが俺の顔をリトラの方に向け、口を開く。


「クロノ。少し横になる? きっとここなら……」

「まっ、て」


 リトラを静止して、俺は耳を澄ませる。

 早すぎて、予知しているように見えてはいけない。けれども、確かに聞こえた音に、俺は山の方を見上げた。

 そして、確かに見えたこちらに向かう大きな岩に、俺は駆け出した。


「シャドウ シールド!」


 俺はシールド魔法で、岩を止める。勿論、眩暈も吐き気も悪化するけれども、そう言ってはいられない。少し傾斜のある地形で止めてしまったから、シールドを取り除けばまた転がり始めてしまうだろう。

 大丈夫。アルカルさんの剣で壊すことができた岩だ。物理攻撃であれば、簡単に壊せるはずだ。


「ギガント ダークソード!」


 俺は、巨大な黒い剣を出し、岩を突き刺す。岩は剣の先端からヒビが入り、簡単に砕けた。

 瞬間、俺は立っていられなくなって、ふらりと前に倒れる。けれども、俺の頭が地面にぶつかる前に、何かに支えられた。


「おい、大丈夫か!?」


 そう言ったのは、俺達がイグニスベルクで最初に声をかけた男の声だった。

 ゆっくりと地面にしゃがみ込むと、俺を心配そうにのぞき込むリトラやイグニスベルクの人たちがいた。


 ああ、俺、今凄くかっこ悪いな。


 そう思いながらも、無事皆を守れたという事実に、俺はホッとする。


「……良かっ、た。みんな、無事、で」

「お、俺らおまえらに酷い事言ったよな!? なのに、なんでおまえは、俺達のためにそこまで……」

「できた!」


 と、ソフィアの声が男の声を遮った。その声に、俺は口を開ける。


「それ、かして。ゼノに、届ける、から」

「えっ、クロノ……!? ちょっと、大丈夫……?」


 あまりにも、俺はフラフラとしていたのかもしれない。今までの時間軸ではこんな事なかったのになと思いながらも、俺はソフィアから剣を奪い取る。

 そんな俺の肩を、例の男が掴む。


「おい、待て! それをゼノに届けれればいいんだな! それくらいなら、俺が……」


 そう言った男の体を、俺は押し返す。もし男に任せて、それで男が死んでしまったならば、或いは全てが遅れてどこかに被害が出てしまったなら、俺はきっと後悔する。


「おれ、なら、魔法、使えば、確実、で、安全、ですから」


 そう言って、俺は皆を安心させるように笑う。


「せっかく、おれ、強い魔法、持った、から。こういう時、に、使わなきゃ」


 けれども、どうしてか誰もが、悲痛な表情をしていた。その理由を、俺は理解できなかった。

 だってまだ、誰も死んでいないのに。少し坑道は崩れてしまったかもしれないけれど、それでも集落の被害だって、ほぼ無いのに。

 けれども、ここに長く留まる理由はない。俺はもう一度、安心させるように笑って口を開く。


「安心、してくだ、さい。俺が、皆さんを、守ります。シャドウ ワープ」


 俺は魔法を使って、ゼノの元に向かった。

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