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君が知らないリトライ 〜仲間が死ぬ度に時間が巻き戻るので全員生存ルートを見つけたいのに、ヒロインの性格属性がたまに変わるので困ります〜  作者: 夢見戸イル
岩の村“イグニスベルク”

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43.土下座と命

「……土下座したら、許してあげるわ」


 そう低い声で言ったリトラに、一瞬俺は聞き間違いかとリトラの方を見た。

 けれども、聞き間違いではないことはリトラの目が言っていった。リトラがゼノを見る目は言葉と同じように冷たく、俺ですら背筋が凍るかと思う程だった。


 ゼノも、そんなリトラの様子に助けを求めるような目を俺に向ける。


「リ、リトラ……? 流石にそこまではやりすぎというか……」


 俺の言葉に、リトラはゼノに向けた冷たい目を、そのまま俺に向ける。


「あんたもあんたよ! あんたはこいつに殺されかけたって自覚を持ちなさいよ! ほんとあんたは馬鹿! 私、何度もこいつがクロノを本気で切りつけようとしたの、忘れてないんだから!」

「ちょっ、ちょっと待って! リトラがゼノに土下座強要してるのは、俺のため!? 別に俺は怪我したわけじゃないからなんとも……」

「ち、ちがっ……! あ、あんたのためじゃないんだから! ただ!! 私が!! 気に食わないだけなの!」


 そんなやり取りをしていると、隣で黙って聞いていたアルカルさんが笑う。


「土下座ぐらいしてやれ」


 そう言って、アルカルさんはゼノを見る。


「ゼノ。おまえは、おまえの兄を殺した男が目の前に現れたら、土下座で許せるか?」

「……絶対、許せねえ」

「おまえは未遂とはいえ、同じ事をしようとした。それを彼女は土下座で許してやると言っている。簡単な話だ」

「……っ。その、通りです……」


 そう言って、ゼノは、地面に手を付き、額を地面につける。


「今まで、その……。悪かった」


 そう言うゼノに、俺はどうしていいかわからなくなる。そんな俺の隣で、リトラはまだ冷たい目でゼノを見ながら言った。


「このまま、頭を踏みつけてもいいかしら」

「リトラ、落ち着いて? ね?」

「……馬鹿ね。本当にそんなことしないわよ。でも、また同じことをあんたがしたら……」


 そう言った途端、リトラは泣きそうな顔をした。


「……同じことがあっても、何もできないわね。私」

「……ほんと、わりい」


 その言葉に、リトラはゼノを鼻で笑う。


「何? やっと本気で謝る気にでもなったのかしら?」

「……ああ。てめえの気持ち、痛えほどわかるからな」

「……あなたはいいわね。強くなれて。女で回復魔法使いの私じゃ、いくら頑張っても届かない壁があるのよ」

「……ああ、そうだな」


 そんな二人のやり取りに、アルカルさんは笑う。


「そんな風に想って待ってくれている人がいるというだけで、人は強くもなれ、生きようとも思える。そうだろう? クロノよ」


 リトラとのゼノの会話に理解が追いついていない俺は、とりあえずアルカルさんの言葉に頷いた。

 確かに、リトラがそこまで想ってくれているならば、嬉しいしアルカルさんの言う通り頑張れる。けれども、何となく引っかかる違和感はなんだろうか。


 リトラはまだ、泣きそうな顔をしながら口を開く。


「私、知ってるのよ。大切な人がいるからこそ、その人のために平気で命を投げ出す人の事を」


 その言葉に、俺は目を開く。


「えっ、誰!? そんな人、リトラの人生にいたの!?」


 そんな事、俺はした記憶など一度もなかった。少し傷付く事はあったけれども、リトラの回復魔法でなんとかなる程度。その程度しか、怪我をした記憶はない。

 ならば、リトラの母親のことだろうか。けれども、リトラの母親は病気で亡くなったはずだ。命を投げ出してまで守ったとは聞いていない。


 そう思った瞬間、別の可能性が頭に浮かんだ。この時間軸のリトラには、リトラにそう言わせる程の誰かがいるのだろうか。思い出しては泣きそうになる、そんな誰かが。

 そう思うと、色んなことに辻褄が合った。俺には素っ気ない癖に、やたら俺が少しでも怪我をすると過敏になる。もし別の誰かと俺を重ねていたと仮定すると、納得がいった。


「ね、ねえ、そ、それって、どんな人……?」


 俺は、ついリトラの腕を掴みながら、そう尋ねた。けれどもリトラは、俺の手を払う。


「あ、あんたには秘密よ! 言う義理もないわ!」

「えっ、あっ、ごめん……」


 俺はリトラから一歩下がる。

 リトラの事が好きだった。前の時間軸のリトラが沢山好きと俺に言ってくれたから、今の時間軸でも素直じゃないだけだと俺の事を想ってくれているのだという気持ちを捨てられなかった。

 ああ、前もリトラに言われたじゃないか。勝手に自分の気持ちを決めつけないでと。もし、リトラの事を命を投げ出してでも守った人がいて、リトラがその人のことをまだ忘れられずにいるのならば……。

 そう思うと、胸が苦しくて仕方がない。


 リトラは俺にそっぽを向きながら、ゼノを睨む。


「と、とりあえずよ! ゼノ、あんたが仲間になること、認めてあげる! 感謝しなさい!」

「わーったよ! ……別の意味でこいつらめんどくせーって思ったけど」

「何!? 何か言った!?」

「なにも言ってねえよ!」


 そんなやり取りを聞きながら、俺の中に邪な考えが浮かぶ。

 もし、リトラの事を命を投げ出してでも守ることができたならば。そうしたら、リトラは俺の事を見てくれるだろうか。

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