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君が知らないリトライ 〜仲間が死ぬ度に時間が巻き戻るので全員生存ルートを見つけたいのに、ヒロインの性格属性がたまに変わるので困ります〜  作者: 夢見戸イル
岩の村“イグニスベルク”

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40.不安と理由(一部リトラ視点)

「俺達は、魔力に救われて生きている」


 その言葉に、ゼノは何も言えずに俯いていた。そんな様子をチラリと見て、アルカルさんは続ける。


「女神は、魔力を持っていたと言われている。しかし魔力を使わず生きていく術を、ここにいる者に授けたと。塩の件もそうだ」


 アルカルさんの言葉に、ゼノの様子が目に入っていないソフィアが目を輝かせて言う。


「女神様って、本当に凄い……! あのね! リンピアナではね! 強い魔法で強い魔物を倒したって言い伝えがあったんだよ! 強い魔力を持ってて、願いを叶えてくれる力まであって、でもこの世界の原理もちゃんと知ってて、それを必要な人に教えてくれるって……! あっ、でも、だから神様なのかな!?」

「かもしれないな」


 ドン


 と、突然音がした。それは、ゼノが近くの壁を強く殴った音だった。


「……じじい」

「……なんだ」


 アルカルさんの言葉に、ゼノは体を震わせながら口を開いてアルカルさんを睨んだ。けれども小さく息だけを吐いて、唇を噛む。


「……わりぃ、頭、冷やしてくる。今の俺じゃ、冷静に話せる気がしねえ」


 それだけを言って、ゼノは駆けだした。


 過去の時間軸では、俺はゼノの後を負う。けれども今回は、追うべきかどうか迷っていた。

 過去の時間軸では、ゼノはもっと感情的だった。しかも、覚悟も無く突然聞かされて、混乱していた。

 けれども今回はどうだろうか。今回のゼノは冷静で、けれども整理しきれない感情をどうにかするために一旦ここから離れたのだろう。だからこそ、追いかけたら逆に迷惑なのではないかとも思ってしまう。


 けれども同時に、別のゼノの言葉も思い出すのだ。


『……は、兄貴の時以来だ』


 過去の時間軸で、ゼノが寂しそうな目をしながらそう言った。その言葉を思えば思うほど、やっぱりゼノをほおっておけないという気持ちが膨れ上がる。


「……あの、俺、ゼノを……!」

「待って……!」


 追いかけてきます。そう言おうとした時だった。

 リトラが俺の手を掴んだ。


「ね、ねえ……。そっとしておいたほうがいいんじゃない……?」

「えっ、でも……」

「ほ、ほら……! あいつも、頭冷やしたいって……!」


 そう言ったリトラは声も手も震えていて、ああもしかしてリトラは、俺がゼノに殺されないか心配しているのではないかと思った。

 どの時間軸でも、この時のリトラは不安で怯えていた。だから俺は、リトラを安心させるように頭を撫でる。


「大丈夫だよ。今のゼノは、俺に何もしないと思う」

「それは……! そうかもだけど……。あ、あんたがそこまで、あ、あいつのために動く必要も、ないわよ」

「そうかもしれないね。でも、ごめん」


 俺は、リトラから少し離れて、そして口を開く。


「ゼノのこと、どうしても嫌いになれないんだ」


 本当は違う。俺にとってはとても大切な仲間。過去の時間軸で仲間になってからは、何度も助けられたし、背中を押された事もあった。だからこそ、少しでも心の暗い部分をどうにかしてあげたいと思うのだ。

 そんな俺の言葉に、リトラはまだ震えながらも、顔を上げて俺を見る。


「……そうよね、あんたはそういうやつよね」


 そう言って、リトラもまた一歩俺から下がった。


「……わかったわ。変なこと言ってごめんなさい」

「そんなことないよ。俺の事、心配してくれてたんだよね?」


 俺がそう言うと、どうしてかリトラは一瞬慌てた顔を見せた後、俺から顔を背ける。


「そ、そんなわけないでしょ! あんたのこと心配するわけないじゃないの!! ばっかじゃないの!?」

「そっか。ごめんね」

「違っ、いや、は、はやく行きなさいよ!」


 そんなリトラの姿に、また素直じゃないリトラが発動したかなと、俺は苦笑いする。

 けれども、あまり立ち止まってもいたくなかった。


「じゃあ、行ってくる」


 そう言って、俺はゼノの背中を追ってこの場所を出た。




(リトラside)


 クロノの背中が消えた方を、リトラは暫くぼんやりと見ていた。そんなリトラの顔を、隣にいたソフィアがニヤニヤとした顔で覗き込む。


「やっぱりクロノのこと、心配なんだね! もっと素直になったらいいのに!」

「いや、違っ、ほんとに心配なんかじゃないんだって!」

「またまた〜! もしリトラがもっと素直になって、クロノに好き好き〜って言ったら、リトラの心配な気持ちが伝わる気がするんだけどなあ」


 ソフィアの言葉に、リトラの体は一瞬ピクリと跳ねる。


「……そんな事ないわよ。クロノのことだもの。寧ろ余計に私のために無茶しようとするわ」

「あはは! なんかそれはそれで想像つくかもー!」


 ソフィアはそう言って笑いながらも、もうリトラに興味を無くしたのか、精錬のための装置の所に向かう。


「ねっ、ねっ、アルカルおじさん! クロノが戻る間、これもっと見てていい?」

「かまわぬ。壊さなければな」

「それは絶対しない! 大丈夫!」


 そんな二人のやり取りを聞きながら、リトラは少し隅の方に寄ってうずくまる。そして、誰にも聞こえないような声で呟く。


「大丈夫。ここであいつに殺されたのは、一度だけだけだもの。だから大丈夫、きっと今回も、大丈夫。私が頑張らなくても、クロノは……。でも……」


 リトラは自分の腕を強く握る。


「どうしたら、クロノは私を嫌ってくれるの……?」

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