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君が知らないリトライ 〜仲間が死ぬ度に時間が巻き戻るので全員生存ルートを見つけたいのに、ヒロインの性格属性がたまに変わるので困ります〜  作者: 夢見戸イル
岩の村“イグニスベルク”

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36.休めない時間と恨む相手

 アルカルさんが去ってから、あの木の目印とは少し離れた目立たない場所で俺達は休んだ。ソフィアの魔道具を使えば、魔物の心配はしなくて良かった。


 何もない、ただ休むだけの時間。その時間が、俺は嫌いだった。余計な事を考えてしまうから。

 けれども、考えないように何かをするという選択肢は無かった。今のうちにこれから起こるであろうことを思い出し、対策を練っておきたかった。そうでないと、確実に誰かが死ぬだろう。


 思い出せば思い出すほど、誰かの死んだ姿が目に浮かんで苦しくて気持ち悪くなる。けれども、今隣には、リトラとソフィアがいた。だから、平然を装わなければいけなかった。

 俺は少しでも顔を見られないように、二人に背中を向ける。


「ねえ」


 と、その瞬間、ソフィアが俺に声をかけた。俺は慌てて振り向く。


「何……?」

「クロノも、恨んでたりするの?」

「えっ、誰を……?」


 俺は質問の意図がわからず、首を傾げる。そんな俺の目をまっすぐ見ながら、ソフィアはいつもよりも沈んだような声で言った。


「……誘拐した人の事」


 ソフィアがどうしてその質問をしたのかはわからない。けれども、きっとイグニスベルクの人達との会話が影響しているのだろう。

 俺は、ソフィアに質問された事に対して、ぼんやりと考える。


「どうなんだろね」


 きっと俺は恨んでいないのだろうと、これから起こる未来と照らし合わせて思う。けれども、その理由を説明できるわけではなかった。


「あの後、皆捕まって殺されたって聞いた。だから、恨む人すらいない。誰に怒ったらいいのかもわかんないかな」

「……そっか。でも、もし生きてたら?」

「……どうだろね。考えたこともないや」


 ふと蘇る、母親に言われたあの日の言葉。


『なんで……、メミニじゃなくてあなたなの……』


 ずっと、誰かに対する恨みより、自分が生きてしまったことに対する申し訳なさを抱えて生きてきた。そんな同情を買うような言葉は、言えないけれど。

 俺は、少しだけ考えて口を開く。


「でも、そうだね。こう言っちゃうかも。なんで俺を最初に実験してくれなかったのって。それなら、妹も、他の子も死ななかったかもしれないのにって」


 俺がそう言えば、隣で聞いていたリトラがチラリとこちらを見て言った。


「馬鹿ね。あんただからじゃなくて、実験方法の差だったのかもしれないのよ。あんたが先なら、あんたが死んでた可能性だってあるじゃない」


 別にそれでも良かった。だって、そう望まれていたのだから。

 けれども、そう言ったところで気を遣わせてしまうだけだろう。今後に影響が出て欲しくもない。


 だから俺は、能天気な顔をして笑いながら言う。


「えー、そうかな? だって10歳と5歳だったら、10歳の方が成功率高そうじゃん。やっぱ年齢関係してるって」

「そもそもよ! 誘拐して変な実験に巻き込んだことを怒りなさいよ! 馬鹿じゃないの!?」

「あはは、確かにそっか」


 確かにそう言う方が自然かと、俺は一人納得する。もし次時間が巻き戻ったら、そう言った方がいいだろうか。まあ今後のやり取りに影響がなければだけれども。


 俺の言葉に、聞いた張本人であるソフィアは何も言わなかった。だから俺は再び二人に背を向け、これから起こるであろうことを頭の中で繰り返した。




 その日の月は、満月よりも右側がほんの少しだけ削れたような形をしていた。ソフィア曰く、この月がアルカルさんの指定した方角、つまり南側に昇るのは、午前2時頃らしい。

 だから俺達はその時間まで仮眠して、アルカルさんの指定した所まで向かった。


 アルカルさんは俺達の足音に気付くと、俺達の方を見て、そして足先から頭の上までをじろりと見た。


「……なるほど。この時間までここにいても、疲れた様子はない、か。俺の想像以上の実力者と見るべきか」


 アルカルさんの言葉に、俺は少し慌てたように言う。


「あっ、違うんです! 俺達は別にあれから魔物とは戦ってなくて……」

「戦っていない? 歩けば魔物に当たるような、この場所でか?」

「はい。実はソフィアの魔道具のおかげで……」


 アルカルさんにソフィアの魔道具の説明をすると、アルカルさんは心から驚いたように目を見開いた。


「なるほど。貴様らの実力は、一人だけのものではなかったか」


 アルカルさんがそう言えば、隣にいたソフィアが嬉しさを抑えきれないというようにニヤけながら、魔物を寄せ付けない魔道具を取り出した。


「そうだよ! しかも、この魔道具は魔力が無くても誰でも使えるんだ! もし悪魔の噂気にしないんだったら、アルカルさんにも作って一つあげるよ!」


 ソフィアの言葉に、興味深そうにアルカルさんはソフィアの魔道具を見た。


「……仕組みは?」

「魔物の魔力が入った魔石って呼んでる石を使って、それをバラまいてるの! 弱い魔物の魔力でも、それを濃縮させれば強い魔物って勘違いするんだ! ずっと魔力を放出させてると切れちゃうから、充電しなきゃいけないんだけどね!」

「なるほど、魔石……。そして、魔物の魔力か……」


 アルカルさんは、難しい顔をしてソフィアの魔道具を見た。


「俺は必要ない。だが、必要なやつらほど、魔力の入ったものを毛嫌いするだろうな」

「皆さん、強そうに見えますけど……」


 俺は、知らないフリをしてアルカルさんに尋ねる。


「強いが、この森を抜けられるのは、俺とゼノくらいだ。だいたいは少し進めても、無限に沸く魔物に体力に限界が来て命を落とす。だからこそ、監視もせず俺達を放置できるのだろうがな。いや、監視のものですら来たがらない。ここに奴らが来るのは、俺達が作ったインゴットを取りに来る時ぐらいだ」


 そう言いながら、アルカルさんはもう一度ソフィアの魔道具を見る。


「これを、10分起動できるか」

「うん! それぐらいの充電はあるよ!」

「貴様らに案内したい場所がある。その間に、俺達の住む場所の話もしよう。それがあれば、魔物など気にせず歩けるのだろう?」

「勿論!」

「なら、それを付けて付いてこい」


 そう言って、アルカルさんは一人歩き始めた。

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