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君が知らないリトライ 〜仲間が死ぬ度に時間が巻き戻るので全員生存ルートを見つけたいのに、ヒロインの性格属性がたまに変わるので困ります〜  作者: 夢見戸イル
湖の村“リンピアナ”

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10.自己中心的と強さ

「俺が魔力ねえから教えねえ? ふざけんじゃねえよクソが! だったらそのツラにでも、この力ぶち込んで思い知らせてやるよ!!」


 そう叫ぶ少年の名前はゼノ。確定ではないが、いつか仲間になるであろう人だ。

 けれども、仲間になるのは今ではない。今やるべきことは一つ。目の前の老婆に剣を向けようとしているゼノを止めつつ、誰も怪我人を出さないようにすることだ。


「ダメ! おばあちゃんに手を出さないで!」


 そう叫んで、ソフィアは弓を取り出し、ゼノに向けて矢を撃つ。狙いを外さないその矢は、勿論ゼノの心臓に向かう。

 明らかに奇襲であった遠距離からの攻撃で、ゼノの武器は剣。圧倒的に弓の方が有利なはずだった。けれどもゼノは、咄嗟に持っていた剣を盾にして矢を弾く。


「じゃますんな! クソが!」


 それは一瞬の事だった。持っていた大きな剣を背中に背負い、懐から二本の短剣を取り出してソフィアの懐に入る。

 実際、事前にその動きを知っていなければ対応できなかっただろう。俺はソフィアを庇うように、ソフィアの前に立つ。


「シャドウ シールド」


 黒い靄のような壁が、俺の前に現れる。瞬間、ゼノの持つ二本の短剣が、その壁と一緒に俺を切り裂こうとする。


「なっ……、感触が……」


 確かに、ゼノの腕は俺の体を切り裂く軌道を描いた。けれども俺は無傷。ゼノも、感触のない空気を切ったような感覚に、一瞬戸惑う。


「シャドウ カウンター」


 俺がシールドに魔力を流すと、先程のシールドから衝撃波が起こり、無防備になっていたゼノを吹き飛ばす。ちなみに、ソフィア曰く、物理攻撃であれば運動エネルギーを魔力のエネルギーに変換し、それを放出しているらしいので、強い攻撃であればあるほど相手への衝撃波大きい。

 この爆発力を見るたびに、魔力が無いはずのゼノの力に俺は圧倒される。けれども、いや、だからこそ俺は、ゼノを止めなければならない。


「シャドウ チェイン」


 俺は影から数本の鎖を出し、ゼノを縛る。そうして、ゼノが身動きできないことを確認し、俺は力を抜く。これで、誰も怪我はしないだろう。


 最初から、こんなに上手くゼノの動きを封じ込められたわけではなかった。俺は最初、おばあさんを助けるために魔力を使うのを一瞬ためらってしまった。その隣でソフィアは躊躇なく自分の魔道具を使い、そしてゼノに切りつけられ、致命傷を負った。

 リトラの回復魔法があったから、死ぬことはなかった。けれども、俺にとって初めて見た血だまりの中に倒れた人の姿だった。あの時の衝撃と恐ろしさは、今でも忘れない。


 ループ後は、ソフィアより先に攻撃魔法を使い、おばあさんを守ろうとした。けれども俺に、人を傷つける勇気は無かった。

 ゼノはすぐにそれを見抜いた。どれだけ攻撃手段を変えても暫くしたら慣れて攻撃を仕掛けられる。今のようにゼノを縛り付けた時には、俺もいくつか傷を負っていた。

 それでも良かった。別に俺が傷付くことは気にならなかった。けれども2つ目の性格になってから、リトラが俺を庇うようになって、時には死んだ。

 それから何度かループをした。そして試行錯誤をした結果、編み出した方法が今のやり方だった。


 俺は小さく息を吐く。そして、魔法の鎖で縛り付けたゼノに近付く。


「おいコラ、てめえ、今すぐ離しやがれ!!」

「離したら、おばあさん攻撃するでしょ。流石見逃せない」

「ヒーロー気取りかよ、クソが。部外者は黙ってろ!」

「部外者じゃないもん!」


 そう言って、俺の後ろから顔を覗かせたのはソフィアだった。


「私もおばあちゃんに用があるんだもん。だから関係あるよ。ねっ、ディゼおばあちゃん! 約束通り、強い人、連れて来たよ! これで、女神様のこと教えてもらえる?」


 そう言って、ソフィアは老婆の方を向いた。彼女の名前はディゼルナ。この街の村長だ。

 ディゼルナさんは、ソフィアの言葉に俺の方をまっすぐ見る。


 その瞬間だった。


「ざけんな! 俺は認めねえ!」


 そんな声と共に、ゼノは縛られているはずの手でディゼルナさんに向かって短剣を飛ばす。

 ゼノがそうすることは俺も知っていた。けれども俺は、敢えて焦ったふりをしながらも助けなかった。


「ウォーター シールド」


 その声と共に、水のシールドがゼノの剣を弾く。後で聞いた話だが、彼女はリンピアナの村長。魔力で階級が決まる世界でリンピアナの村長をやっているのだから、かなりの実力者であることは間違いなかった。

 老婆は、ゼノを見て愉快そうに笑う。


「その程度の強さで、女神様の秘密は教えんよ」

「はあ!? 俺は……」

「そもそも、お主が強くても教えることはないだろうがのう」


 そう言いながら、ディゼルナさんは魔法で作った水の玉でもう一本の短剣を絡めとり、ゼノから離した。流石に縛られた状態では、背中にある大きな剣を抜くことはできないだろう。

 これで、イレギュラーな事が起こっても大丈夫。ここはクリアだ。


 そう思いながら、俺はゼノと目を合わすためにしゃがみ込み、口を開く。


「君も、女神の伝説の事を知りたくて、リンピアナに来たの?」


 そう俺が質問すれば、ゼノも俺を睨みながらも俺をまっすぐ見た。


「……てめえもか」

「そうだよ」


 俺がそう言えば、ゼノは大きく舌打ちをする。


「……てめえの願いはなんだ」


 その質問に、俺は小さく深呼吸する。

 これからゼノに言われる言葉は、実際にその通りで、何度も俺の心を突き刺す。

 けれども仲間に、そしてディゼルナさんに言われる言葉に背中を押され、そしてこれから知る事を踏まえて、俺は今の道を進むと決めている。


 俺は、まっすぐゼノを見る。


「妹を、生き返らせたい」


 そんな言葉に、ゼノは呆れたような、そして蔑むような目で俺を見る。


「たった一つの願いを、てめえだけの都合で使うつもりかよ。クソみてえな自己中だな。やっぱ恵まれた魔力持ちは頭の中もお花畑か?」

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