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9,復讐に意味はないなんて奇麗ごとだ。

《変わったおじさんというのは架空の人物なのでしょうが、その考えは天川自身の考えなのですか?》


帰り道。二人とそれなりに遊んだ後。二人と別れてアルマと二人きり。

アルマが天川にそう問いかけてきた。


《違うよ。ていうか、俺の考えは全く違う。そもそも俺は北沢らのことを怖いとか思ってなかったから、

二人には適当にいってはぐらかしただけで》


ヒッキーからいじめっ子らと対立できるだけの決意。通常なら並々ならぬ覚悟が必要だ。こういう時は親類とかそういうのより第三者の意見が以外に心に刺さると天川は知っていた。だから架空のおじさんをでっちあげ、それを考え直すきっかけということにしたのだ。

かなり無理矢理だったが、二人が納得したようでよかった。


《自分で言っておいてなんだが、そもさん矛盾しているだろ。そのおじさんとやらはお前は引きこもるを選択ができたといったが、それなら自殺した奴らも自殺を選択できたと言える。最初はなから終わってる理論だけど、まあその辺は三好も、望月も中坊だよな。なんとなく納得してくれてよかったよ》


それに…と天川は続ける。


《自分自身を殺せる連中が弱い訳がない…と俺は思う》


天川の論にアルマはくすりと笑い、興味があります、続けてくださいと望む。


《この世の中、生きてりゃあ死にたくなるようなことがうんざりするほどあるのにさ。結局、死ねないんだよ、怖くて。だから俺も今まで無様に地面這いつくばってみっともなくても生きてきたんだ。…だから自殺できる人間は決して弱くはない》


《…の、割に煮え切らない表現ですね。弱くはないということは強くもないと?》


アルマの問いに天川は両手を広げ、さあね。と答える。


《俺がもし自殺すると決めて。仮にその原因が北沢らだとしたら、あんなもんじゃ済まさないからな。生まれてきたことを後悔するような、怪我を奴らに負わせてから自らの命を絶つ。…俺だったらそうする。どうせ自殺するのに復讐もしないとか…俺にはそれが理解できん。かといって、生存本能に逆らい自分を殺せた事実はあるわけだ。だからこう表現した。【弱くはない】と》


復讐することが強いとは言わない。むしろ仮にいじめられていた過去があっても、復讐することで自身が不利になるようなことがあればすべきではない。

これはいじめを許すとかそういう事ではない。許されるべきではないし、本来であれば罰せられるべきだ。

だがもっとも重要なのは自分自身だ。復讐といっても様々だが、下手を打てば警察に捕まりかねないこともある。


しかし…だ。


自信が死ぬとなれば話は別だ。

自殺する人の心境はわからないが、その場合は絶対に報復すべきだ。

報復に成功しようが失敗しようが自信が死ぬことに変わりはないのだから。

親とか周りの迷惑とか、そういうのなどは関係ない。気にする必要などない。

なぜなら加害者が悪いのだから。


天川は思う。自分が自殺したとして、例えば天川の両親はおそらく悲しむだろう。だが北沢らは露ほども悲しいなんて思わないはずだ(思ってほしくもないが)むしろ死んだから自分たちになにか調査がくるのじゃないかという保身のみの感情しかないだろう。


そんな糞みたいな奴らに何もせず自分だけがただ死ぬ…?冗談だろ?



《…とまあ、こんな本音を言ったらドン引きされそうなんで言わなかったけど》


《いえいえ。私的にはそれぐらい過激で丁度いいのですけどね。そうでなくては能力の授けがいがないというものです。それならあなたをいじめていたわけではないのですが、いやいじめてはいたのですけど(ややこしい)あの連中は本当にあのまま何もしないで終わりなのですか?》


手を合わせて嬉しそうにそれを顔にあてるご機嫌なアルマ。


《北沢らか?特になにもしてこなかったら、何もしないよ。…ちゃんと聞いていたか?別に過激派じゃねーよ俺は。復讐にせよなんにせよ、そんなもんしなくてすむならしないよ。平和が一番だ》


《そうですか?聞く限り、自殺せずともその『時と場』が整えばあなたなら迷わず報復を実行しそうなものだと感じましたが》


《…それじゃあ不十分だな。それプラス自身への有益な未来に繋がることが条件だ……って、ああ、せっかく転生したってのに相変わらずつまんねー思考してんな俺は。アルマ的には俺が北沢らに復讐でもして所謂『ざまあ』展開がみたいとかそういうのだろ?》


転生物の小説とかアニメはよく知らないが、そういうスカッと展開はありがちだと知ってはいた。転生の女神であるアルマもそういうのが好物である可能性が高い。

天川がそう問うとアルマはうーん、どうでしょうかと微妙な顔を見せ顎に指を当てる。


《他の転生者ならそうでしたが、あなたの捻くれはある種異常ですからね。最初は能力を授けるためだけについてきていましたけど、そういうのを見なくても楽しめている自分がいます。なので天川が望まないのであれば…それはそれでかまいません》


そう笑顔を見せるアルマに、天川は思う。こいつの目的や正体は何なのだろうかと。

転生の女神とは言っているが、それも天川がそう形容しているだけでそれすら定かではない。

そもそも天川に能力を授けるのが目的なら、時間制限を設けでもしてさっさと決めさせればいいのだ。時間内に決めなければ能力は授けませんとでも言えば、天川だってそれを拒否することはできないはずなのに。

…しかしだ。

そこに突っ込んで妙なことになるのが嫌だから天川はそこには触れないでいた。

なぜなら。

天川もアルマといて楽しいから。


《…なあ、アルマ。これから服でも買いに行くか?まあ、お前は買わないんでいいんだけどさ(ややこしい)》


天川の突然の誘いにアルマは大きく目を開き、え!?とわかりやすい歓喜の表情を見せる。その後、そのリアクションを見られたのが恥ずかしかったようで、頬を赤らめながら咳払いをする。



《……こほん。…あなたがそう望むならやぶさかではありません♪》



わかりやすいなと思いながらも、天川も自然と笑みがこぼれた。



ーーーーーーーー


最初にいったモールの感じでアルマがお色直し…というか、服が好きなのはわかっていたことだが。

この日もテンション高く服選びに夢中になっていた。

どういう原理かは分からないが、アルマの不思議な力?で気になった衣類を精神イメージとして具現化できるため、それを着替えることが出来るらしい。

実際に現実の衣類はその場におかれているだけだ。


《天川!これはちょっと露出が多いですかね?》


今回は黒のキャミワンピを手に取りそう伺う。露出もくそも見えているのは自分とアルマ自信だけなのに、そんなこと気にするのかと思う天川だったがそれは野暮な返しと言えるだろう。


《いや、スタイルいいから似合うんじゃない?露出はまあ自分が良ければ大丈夫なレベルとは思うし》


ちなみに天川にとっては露出が多いのは歓迎だ。これでもまあ一応…男ですから。


《そうですか!?では着替えてきます♪》


試着室から出てきたアルマは黒のキャミワンピ姿で出てきた。


《どうですか?》


がっつり肩が露出している。豊満な胸も強調されている。奇麗な金髪のロングストレートも相まる。

控えめに言って最高である。

正直、この時期では少し寒そうなファッションではあるが、幽体だし問題ないだろう。


《…似合っているけど、目のやり場に困るから、上になんか羽織ってくれないか》


《あなたが望むなら…やぶさかではありません♪》



ーーーーーーーーー



家に帰るなり。

天川が玄関をただいまと言いながら開けると、不安そうな顔で天川の母、天川 夏奈なづなが不安そうに不安そうに台所から天川に駆け寄ってきた。

母の様子を怪訝に思う天川。遊んで帰るから遅く帰るとメールしていたからその点は大丈夫なはずだが…。


「…あ、あの!翔ちゃん!べ、別に『無属性』だからって気にすることないのよ?世の中魔法以外にも素晴らしいことは沢山あるんだから!それにほとんどの子は『無属性』だったでしょ?」


母は慌てるように励ます感じでこんなことをいってくる。ちなみにどういうことか一瞬理解できず、ぽかんとした表情をしてしまったが、少し考え、理解した。


「ああ、属性選別のことね。それ延期になったんだよ…はいこれ」


学校用カバンからプリントを1枚取り出し、母に渡す天川。

それを確認すると、母は胸を撫で下ろしたかのように不安な表情が抜け、安堵したように見えた。

ちなみにそのプリントには属性選別延期の旨が、保護者用に記載されていた。


「あ!なんかごめん勘違いしちゃって。夕飯まだだから、さきにお風呂入る?今日は翔ちゃんの好きなハンバーグだから楽しみにしてて!」


天川は適当に喜んだ振りをして、自身の部屋のある二階へ向かった。


ーーーーーーーー


自室。天川とアルマ。

天川はベッドに腰を掛け、アルマは椅子に座る。


《母さんの様子を見るに、やっぱ有属性と無属性では随分と魔法に関しては差があるんだな…改めて理解したよ》


それに加え引きこもりだった天川にとって、属性選別の結果いかんでショックを受け再度引きこもってしまう懸念が母にもあったのだろう。

まあ、その懸念はわかる。例えばせっかく仲良くなった友達が早々にエリート組にいって自分が凡人組だったら、流石に思うところはあるだろう。天川だって今の精神ならそれは大したことではないが、本当に13歳の精神だったなら落ち込んでいたかもしれない。


《…例えば天川が属性選別でそんな目に合ったら…本当に落ち込まないのですか?『今の』天川は?本当に?》


アルマが嫌らしい笑みを天川に向ける。


《…何が言いたいんだよ》


と、返事しつつもアルマの次の言葉はある程度予想出来ていた。


《あの三好という女の子…随分とまあ、天川に好意的だったじゃあないですか?しかもあんな可愛らしくて…それに加えることに望月という少年…彼も彼でまあ、さわやかイケメンですしね。もしも彼らが有属性のエリート組で、天川が無属性の凡人組だったら…流石のあなたも傷つくのでは?》


予想通りの答えにはあーと深くため息をつく天川。


《もしもというか、そうなる未来しか見えないって感じがするからなあ…。三好は可愛いし、望月もかっこいいよな。…だからこそわかる。俺の運命はまた俺を傷つける方に向けていってるってな。三好が好意的なのも俺をぬか喜びさせておいて…ていうかあれじゃないか?しらん間に望月と三好がくっつくんじゃないか?どうせこんな落ちだろ》


天川の強がるわけでもなくむしろ斜め上の回答に、今度はアルマがため息をついた。


《…どういう人生を歩んでいったらそこまでネガティブに事を捉えられるのでしょうね。あなた自身がいったのでしょう?三好という女の子は素晴らしい精神性を持っていると》


《運命って言ったろ。三好自身が俺を弄ぶとかそういう事を言ってるわけじゃない。三好や望月にその気がなくても俺が苦しむ方向に行くようになってんだよ……って、ついつい考えちゃうわけ。まあ、仮にそうなっても別にいいんでない?その時はその時で考えるさ。…辛いことに耐えるのは…慣れてる》


最後の…辛いことに耐えるのは…慣れてる。の発言の時だけ。天川の瞳に光が消えた。それを見たアルマが色々と察し、はあと呆れた笑みを今度は見せた。


《その時こそ私に能力を!…と言いたかったのですけどね。その様子だとそうなっても能力を私に渇望することはなさそうですね》


《それはわからんぜ?…慣れてるけど、やっぱり耐えるってのは、しんどいもんさ。…これから風呂入ってくるから、その間動画サイトの将棋でも見てるか?お前が好きそうだったから見繕っておいたんだ》


湿っぽくなったのを払拭するために、提案してみたが、予想通りアルマの目がキュピーンと光った。


《気が利きますね!天川!…長風呂でも構いませんよ!?》


相変わらずわかりやすい女神だなーとおもいながら、パソコンの電源を入れる天川だった。



























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