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21、六文銭舞雪の望む答え。

なんやかんやあって。

10回中8,9回は10秒を誤差1秒以内でストップウォッチを止めることが出来るようになった天川だった。


《んじゃ。今を時めく『六文銭舞雪』先生とやらに会いに行くか?アルマ》


学校の教室から出るなり念話でそうアルマに語りかえる天川。


《随分とまあ…軽い感じのノリですね。あなたらしいと言えばそれまでですが、何か裏があるかもしれないとはいえ、不合格になるかもしれないのに》


そう天川の後ろをついていくアルマ。

転生の女神?であり、天川にチート能力を授けるためにここに存在している。天川以外は視認できないため、ある種幽体のような存在だ。

この日は、紺色の弓道着を身に纏っていたアルマだった。和風の大きいリボンで金髪ロングを後ろで縛っている。なぜそんなものを着ているのかというと、弓道部の横を横を歩いてたら、アルマが物惜しそうな顔で弓道部員をずっと見ていたので、天川が弓道着を着たいんか?と聞いたら、べ、別に!?といつも通りわかりやすいリアクションをしてくれたので、天川が帰りに弓具店によって弓道着を手に入れたアルマなのであった。

とはいえ、幽体のアルマは実際に購入するのではなく手に取りイメージをするだけでそれを身に纏うだけなのだ。なのでお金が必要ないのだが、弓具店に初めて顔を見せた天川に店員がセールスで話しかけてきたので誤魔化すのに一苦労をした。

苦労はしたが。

色白美人でグラマラスなアルマは何を着ても似合う。なので和装も似合うんだろうなーと思ってはいたが思っていた以上に最高だった。

苦労以上に目の保養になるのでアルマの買い物?には積極的に付き合うなのだった。

さておき。


《まあ、現状やれることはやったんだし心配してもしゃーないだろ》


そう後頭部に手を組み『六文銭舞雪』の待つ教室へ向かう天川だった。



ーーーーーーーーーー



「あー、どうりで簡単だと思ってたんだよなー」


「だよねー、まあ、まんざら無理ってわけなさそうだし頑張ろうぜ」


『六文銭舞雪』専用として教室が一室丸ごと貸し与えられていた。

そこには勿論『六文銭舞雪』がいて、『時の試験』を挑戦したい生徒はここにこいとのことであった。

天川も例に漏れずその教室へ向かっていたが、その途中でそんな愚痴をこぼす男子生徒生徒数人とすれ違って、思わず引き留めてしまう。

偶然にも天川のクラスメイトだったので話しかけやすかった。


「…もしかして『時の試験』やってきたの?などうだった?」


「ああ…天川か。お前も受けに行くの?やればわかるけど、あの試験には続きがあるって落ちだったぜ」


そう返された。天川は内心『やっぱりな』と思ったが、興味がる風に装ってその内容を聞いてみる。


「『ご苦労さん。じゃあ次は1分を誤差1秒以内で出来るようになったらまた来な』だってよ?面倒だよなー」


クラスメイトの返答をきいて口に手を当て頷く天川。

どうせ何かあると思ってはいたが、意外ととてもシンプルな内容だ。試験には段階があり最初の課題が出来たら、難易度の上がった次の課題が追加される。

シンプルに難易度が上がったわけだが、まあ…クラスメイト達がこぼすように無理な難易度ではない。

だがこの場合。


「…ありがとう。僕も取り合えず挑戦してみるよ」


クラスメイト達にそうお礼を言って別れる天川。別れたクラスメイト達はさっそくストップウォッチで新たな課題を練習しながら歩いていた。


《…天川》


アルマが何かを察したかのように天川にそう語り掛ける。


《…ああ。『今』の俺が挑戦したとて結果はあいつらと『同じ』だろうけど、取り合えず『色々』聞きたいこともあるしな》



ーーーーーーーーーーーー


『六文銭舞雪』が待つ教室。

天川が引き戸をノックするとどうぞと返事が聞こえてきたので、入室する天川。

広い教室に教員用の大き目な机が一つ。それにPCが一台だけ置いてあるだけであとはがらんどうになっていた。


「…やあ。久しぶりだね『天川翔』これが良い『縁』だといいな」


そう回転椅子を出入り口の天川に向ける一人の女性。

足を組み妖艶な笑みを見せる女性。

白衣を着ている。180はある高身長でアルマと同じくグラマラスな肉体。腰まで届く鮮やかな金色のロングヘアー。可愛らしさが残るアルマのとは違い、妖艶と言える美女。健康的な肌色だ。


「…初めて会うはずなんですけど…まあ、正直探り探り話すの面倒なので率直に聞きます。あのモールで出会った少女と先生は知り合いか何かですか?」


天川の問いにああ、口で説明するより実際見せたほうが早いねと『六文銭舞雪』は笑った。

その後立ち上がり指をパチンと鳴らすと、彼女とその周りの空間?が灰色に歪んだように見え、六文銭の身体がぐにゃりとながら変化して行く。


「!??………ある程度予想はしていましたけど、まさか本当に『本人』だったとは」




【君…死神にとり憑かれているね?】




過去にモールで天川にそう語り掛けてきた美少女。

日本では珍しい腰まで届く鮮やかな金髪で、歳は天川と同じく13前後か…健康的な肌色で可愛らしい美少女。歳に見合わない白衣姿。

身長が縮み、天川よりも大分低くなる。

大分幼くなり、目線が低くなったものの妖艶な笑みは崩れない。


「ふふふ。こうでもしないと敵も多い身なのでね。普段外を出歩くときはこの子供の姿で潜伏しているというわけだ」


つまり魔法で容姿を変えているというわけかと天川は納得した。年齢のわりに随分な口調だと思っていたがこれで納得が出来た。

六文銭は小さくなった体を再び回転いすにドサッと身を任せた。


「質問を重ねるようで恐縮なんですけど…死神に憑かれているってどういう意味だったんですか?」


天川の問いに六文銭は口元を醜く歪ませる。


「それは君が一番理解しているだろ?…まあ『今』は話す気がないとだけ言っておくよ」


六文銭のもったいぶった言い方に多少のイラつきを覚える天川。

しかしこの回答は別に聞けても聞けなくてもどちらでもよかった。仮に何を言われたとて、天川にとってのアルマは…アルマは何も変わらない。


「さて。天川。君がここに来たのは勿論その質問をしに来ただけじゃないんだろう?」


言いながら、天川が右手に握っていたストップウォッチを指さす六文銭。


「…ええ」


「じゃあ、早速だけど始めるかい?『時の試験』を」


そうにやける六文銭に、その前に質問があります。と言う天川。


「この教室に来る前に、他の生徒から『次の試験は1分を誤差一秒以内で』と聞きましたが…それがもしできた場合、『じゃあ次は10分を誤差1秒以内で』とか言うつもりですか?」


多少とげのあるような言い方で質問をする天川に、全く意に介さずくつくつと堪えるように笑う六文銭。


「…それどころか『自分で時間を設定』しても構わないよ?3分だろうが1時間だろうがね。…どうする?」


六文銭の返答に天川は少し考えて


「出直してきます」


と、答えた。


「あはは!『現段階』ではそれが正解だ。君には期待しているよ?天川翔」


笑う六文銭に天川は何も答えず踵を返した。

去り際に失礼しますとだけ残して。


(…がっかりさせてくれるなよ)



ーーーーーーーーーー



《…天川。打って変わって機嫌が良さそうですね》


天川が自分のクラスに戻る途中。

アルマがそう語り掛けてきた。天川はこれからのことを思考しながら歩いていたが、所々口元を歪めることがあった。それを見てそう感じたのだろう。


《ああ、中々に収穫があったからな。俺の予想通りだった。そもそもこのストップウォッチで指定された秒数を止めるという課題は『時の試験』の合否を決めるものではない…それが10秒だろうが、数時間だろうがな」


天川の返事にアルマも頷く。


《それを確かめるために敢えて先回りをするような質問をしたわけですね。あの六文銭という女性は、挑発的な態度が好みのようですし》


そこまで読んであの態度だったわけじゃない。と天川はやれやれといった仕草を見せる。


《『なぞなぞ』を出す側にとってはな。簡単に問題を解かれても悔しいもんだし、回答者が答えに全く辿り着きそうもない状態が続くのも存外退屈なもんさ。…まあ思った以上に『ヒント』は貰えたかな?》


実のところ、単純に六文銭の態度が鼻について若干良くない態度をとっていた天川だった。

しかしま、アルマの考え通りなら怪我の光明と言えるだろう。


《して天川。その《なぞなぞ》の答えとやらにたどり着けそうなのですか?》


アルマの問いに天川はまだまだ分からねえと答えながらも、笑みを見せる。

ただそれは。

爽やかな笑みとは程遠い、暗く…ぐつぐつとした笑み。


《…しかしだ。あの女の言っていることを鵜呑みにするなら、あの女にとって俺は『見込み』があるってことだ。モールでの絡みも含めてな。…努力する余地が残っているということはとてもいいことだよなあ…なあ?アルマ》


流し目でアルマを見ながらそう聞いてくる天川に、はあーと呆れたようにため息をつくアルマ。


《せっかくのポジティブな発言も、そんな淀んだ笑みでは台無しですよ?天川は決して正統派主人公にはなれませんねえ》


言いながらも。それでこそ天川なのですがとアルマは内心笑うが予想外の返事が返ってきた。

それを聞いた天川は突然憑き物がとれたかのように、ぽかんとした表情を見せた。


《…正統派主人公、ね。本当は熱血主人公とか『そういうの』。憧れてるんだけどなあ》


《…》



ーーーーーーーーーーーーーーー



放課後。

部室(教室)

今日は由利先輩の姿が見えなかった。

前日将棋でフルボッコにしたのが堪えたのだろうかと少し心配になったがスマホにメールが来て

今日は遅れるとの旨がスタンプ付きで綴られていた。

普段あの態度のわりには可愛いところもあるんやなーと思いながら一人、ストップウォッチを10秒で

止める練習を続ける天川。厳密には一人ではないが(ややこしい)


《…天川。なぜストップウォッチを10秒で止める練習を続けるのです?自身で言っていたではないですか。これは試験の合否を決めるものではないと》


天川が座る席の隣で、お行儀よく座りながらそう問うアルマ。

天川は頬杖をつきながらつまらなそうに計測を続ける。


《合否を決めるものではない…が、六文銭の望む『答え』にたどり着くための『手段』の一つであることには間違いないからな。そうでなければこの課題をやらせる意味がない》


言いながら、ストップウォッチを止める天川。秒数は9.80秒と表示されていた。


《仮にそうだったとして、だ。ここからさらに仮説。実は『誤差1秒以内ではなくジャストタイム』でストップウォッチを止めることが合格条件だとしたら?》


天川の仮説にああ、なるほどとアルマは頷いた。


《言われてみれば『属性選別』時にデモンストレーションで、六文銭が10秒ジャストで止めていましたね。あれが伏線と考えればまあ…しかしそれでは矛盾が生じます》


アルマの疑問符に天川はわかってるよと答えながらも、ストップウォッチで10秒計測を続ける。


《誤差1秒で止めようがジャストで止めようが、指定された秒数を止めること自体に変わりはないからな。恐らくストップウォッチを『ただ』ジャストタイムで止めたところで…それが『答え』とはならないだろうな》


そう言いつつも計測をやめない天川を見てアルマは得心した表情を見せた。

『そもそもこのストップウォッチで指定された秒数を止めるという課題は『時の試験』の合否を決めるものではない』と言ったのは天川自身であることと、それでも計測の練習を止めない天川を見て察したのだ。


《つまりジャストタイムで止めること自体が答えではありませんが、答えにたどり着くために必要なことであるといいたいのですね》


天川は頷いた。


《ああ。真意はまだわからないがな。まあ、これを繰り返している内に何か思いつくかもしれないっていう希望的観測もあるけど》


天川はそう言いつつ、計測を続ける。

六文銭の言動行動全てに意味があるとするならば…既にヒントはちりばめられている。

あとはそれをどう組み立てるのかだが…そもそもピースが足りているかの問題もある。


(…『【時】にふさわしいかどうか試してやろう』ね)


繰り返す度、徐々に徐々に正確になっていくデジタルを見ながら、六文銭の言葉を思い出す天川だった。












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