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18,天川なんて嫌いです!!

「蓮沼。例の物を用意してくれ」


体育館の壇上で六文銭がそう指示する。

蓮沼先生はやれやれと言った感じで体育館の倉庫に入っていった。

壇上は六文銭が割った水晶の破片でえらいことになっていた。

ただ同時に。

その行為で少し気分が晴れた生徒も多くいた。そしてそれが狙いだったのだろうか。六文銭は満足そうに『無』属性だった生徒たちを再度見渡した。


「先ほど言った通り、私の『試験』は誰でも参加できる。『無』だろうが何だろうが関係なくな。そしてやりたくなかったらやらなくていい。それもお前たちの『自由』だ」


ここで。

蓮沼先生がカートを押しながら倉庫を出てきた。

そのカートには大量のストップウォッチが乱雑に積み込まれていた。

体育館内の全ての人物が?の表情になった。(ちなみに教頭は水晶を割られたショックで失神し、保健室に運ばれていった)

蓮沼先生が途中でカートを止め、壇上に上がり、六文銭にストップウォッチを一個手渡す。


「試験と言っても簡単なことだ。ストップウォッチを見ずに誤差1秒以内で10秒経ったら止める。それだけ…こんなふうに」


六文銭は壇上でストップウォッチを生徒たちに向けて大きく前に突き出し、計測を始める。

勿論六文銭側からは数値は確認できない。

10秒後。

カチッとタイマーを止めた六文銭。


「ほれ」


と、六文銭はストップウォッチのデジタルも確認せずそのまま、一番手前にいる生徒にそれを軽く投げ渡した。


「…!?すげえ!!十秒ジャストだ!0.01秒も狂ってない!」


他の生徒もマジかよ!?と確認すると本当に十秒ジャストだった。

はいはい、静粛にーと六文銭が教頭の声マネをしながらふざけたように手をぱんぱんと叩いた。


「さて。ちゃんとルールを説明する。1、今見せたようにストップウォッチを見ずに10秒で止められるようになること。2,誤差1秒以内。3、その他、ストップウォッチ以外の時計、またはそれに準ずるものを別に用意して時間を確認することは禁止とする。…以上だ。出来るようになったら、私の待つ教室にこい。いつでも試してやろう」


これ以上は何も言うことはないと言わんばかりに、体育館から退場しようとする六文銭。


「…時魔法の権威であらせられる六文銭舞雪が用意する試験と聞いてどんなものかと期待したけど…期待外れだったわね、くだらない」


『命』属性の顧問である伊達先生が敵意むき出しと言った感じで、そう六文銭を睨みつけた。

六文銭となにか確執でもあるのだろうか。


「…ああ、誰かと思えば伊達君か。相変わらず『死人』の影を追っているのかい?それこそくだらないよ。せっかくの『命魔法』が泣いている」


六文銭が飄々としながらそう返すと、伊達先生の病的な白い肌がわずかに紅潮し目を見開いた。


「…てめ」


「あー!!!あー!!ストップストっプ!!!!」


ここで蓮沼先生のが慌てて止めに入り、事態は収束した。


全く反省の色を見せずにこの場を立ち去ろうとする六文銭は、ああいい忘れてたと生徒たちに背中をむけたまま口を開く。


「この試験に関して『安易に他人から助言を聞かない』ことをおすすめしておく…『答え』にたどり着きたいならな。『既存の情報に囚われず』に道中を楽しめ」


それを聞いた生徒たちは、ストップウォッチで10秒計測するだけなのに助言なんて必要なのかと全員?マークを浮かべていた。

しかしそんな様子の生徒達を気にもせず振り返らないまま

六文銭は体育館を後にした。



《…天川、なにやら面白そうなことになってきましたね!》


これまでのやり取りを天川は見ていたが、何も頭に入ってこなかった。アルマがなんか語り掛けてきたが答えるのも面倒くさい。さっさと帰りたい。

時の試験なんてどうでもいい。どうせ自分には突破なんかできない。

天川以外の生徒たちは挙ってストップウォッチを手に取り、さっそく練習を始める者たちもいた。

一方の天川はストップウォッチを手に取ることはしなかった。


《…天川》


アルマは寂しそうな顔をしながら、天川の後をついていった。



ーーーーーーーーーー


天川の教室。

授業中。

天川の前の席は三好。右隣は望月、後ろには海野がいた。

今は空席になっている。

なんでも一か月以上『属性選別』遅れたせいもあり、早速属性魔法の授業を受けることになったからだ。

3人とも『属性選別』が終わるなり、その顧問に連れていかれたので天川が接触することはなかった。

…まあ、接触したくなかったけど。

同情や憐みの目で見られるのは、ある意味暴力を受けることより嫌いだ。

…転生してからも結局『こういう』辛い目に合うのか。

はーあと頬杖をついて明後日の方向に顔を向けていると


「天川!なにぼーっとしてんの!この問題、解いてみなさい!」


と、蓮沼先生から激が飛ばされた。


《天川!天川!答えはですね…》


アルマがいつものように答えを教えようとすると


《あー、別にいいよ。…授業の度、こき使って悪かったなアルマ》


と力なく答える。


《…天川》


「まー、でもそうやって問題は解いちゃうだろうから…あなたは…」


そうやれやれと言った感じでいる蓮沼先生。


「すみません。何も考えてませんでした」


普段の天川アルマだったら答えを即答していたが。

今日は答えるどころか気の抜けた…というより舐め腐った返答を聞いて、蓮沼先生は激怒し思わず


「…!?もういいわ!!席に戻りなさい!」


と怒鳴ってしまった。

わかりましたと無表情で自分の席へ戻る天川の背中をみて、蓮沼先生は思う。


(…なに柄にもなくへこんでるのよ!いつもの生意気なあの態度はどこいったの!?…馬鹿!)



ーーーーーーーー



放課後。


《…天川?部室(教室)はそっちではありませんよ?》


《んー、気分じゃない。…ああ、由利先輩と将棋したいなら一局くらいなら付き合うよ》


踵を返そうとした天川だったが、ああ、と足を止めた。


《流石に今日は勘弁してくれ。いるかどうかはわからないけど、今あの三人の顔を見たらガチでへこみそうだ》


望月、三好、海野。天川以外は属性持ちの才能を秘めていた。

自分には何もなかった。

分かっていたことだけど、あんまりだ。

前の人生で辛い事には耐えてはきたけど。

やっぱりきついものはきつい。

挫けそうだ。


《天川~、そんなあなたに朗報ですよ朗報~。私に能力を授かればいいです!そうすればすべての属性持ちにだってなれますよー!》


いつまでもふさぎ込んでいる天川を見かねて揶揄するかのようにそう提案するアルマ。

こういえば、天川だったら『そんなしょうもないことで能力なんかもらうかバーカ』と言い返してくるだろう。

しかし天川は


《…ああ。そういやそうだったな。…意地張ってないで、そろそろお前に能力を貰って、この世界で無双してもええかなーなんて…》


とまたも気弱な感じに答えた。するとアルマの我慢してきた感情が爆発し




《天川!!何をいつまでうじうじしてるんですか!?》




念話であるが、大音量で天川の脳内に響くように語りかけた。


《…!?》


《いつものあなただったら!今頃、『時の試験』に向けて最大限に思考を巡らしているんじゃないのですか!?例えそれがなくても!『無』属性だったからといってまだまだわからんとか!こんなしょうもないことで能力なんか貰うかバーカとか!そういうどこまでも『捻くれている』のが『天川翔』でしょう!?」


両手がグーになり、泣きそうな顔で天川にそう訴えるアルマ。



「今の天川なんて、嫌いです!!」


…。




あー最悪だな俺って。


こんな美人を悲しませるようなことをするなんて。

しかもいい女だ。なんで転生の女神なんてやっているのだろう。もったいない。

本当にいい女だ。



《…アルマ。嫌いって言われるのってすげー…なんていうか…相当にキくな》



これが他のやつならなんとも思わないけど。


《でもおかげで…目が覚めたよ》


そういって天川は自分の顔を両手でぱんぱんと頬が赤くなるまで叩いた。

顔が赤くなったものの、無表情ではあるが瞳に力強さが戻った天川。



《…天川!》



自分の想いが通じたと感じ、ぱあと笑顔になるアルマ。

うん、やっぱりアルマには笑顔が似合う。と天川は思った。


《アルマ。体育館で六文銭が言っていた内容を覚えているか?恥ずかしい話だが、あんまり聞いてなかったから…覚えている限り全て聞かせてほしい》


それは。

天川が考えを改め、時の試験に挑戦することと捉えたアルマは自身満々に応える。



《…一言一句覚えていますよ。私の記憶力を舐めてはいけません》


《そっか。じゃあとりあえず部室(教室)に行くか?アルマ》


《…はい!!》




ーーーーーーーーーー



「遅かったじゃないか!あれ?今日は一人なのかい?」


由利が既に部室(教室)で将棋の棋譜を並べていた。

奇麗な黒色のロングヘアー。背は天川と同じく170くらいある。すでに女性として出るところがでており、三好とは違う、可愛いのではなく、奇麗と言える美少女。

既に吹っ切れた天川は事の顛末を由利に伝える。


「なるほど。だから今日は天川一人なのか。まあその方が私にとっては都合がいい。さっそく指そう」


いうが早いか、駒を初期位置に戻す由利。

慰めや憐みといったことを全くいうことなく、ただただ、天川アルマとの対局にわくわくしている感じだ。


「…先輩。先輩は将棋が本当に好きなんですね」


由利の様子を見て思わず天川がそう聞いてしまう。

すると意外な返答が帰ってきた。


「いや、嫌いだよ。正確に言えば指していた『環境』がね…。君と蓮沼先生以外とは指す気はないよ…さあ、始めよう」


《アルマ頼む》


『環境』とう言葉を発して、由利の目が暗くなった。天川はこれ以上突っ込むのはやめておこうと、無言で駒を進める。


「ちなみに私も『無』属性だから。なにかわからないことがあったら教えてあげるよ?勿論その他の教科もね》


その代わり将棋をもっと指してくれるならねと、そう冗談ぽく笑う由利。

天川の心が癒える。最初合った時は印象最悪だったが、この人は人の気持ちを考えて発言できる。


「…お願いします」


天川もようやくここで笑顔が戻った。下種だけど、正直由利が『無』で嬉しい。

まあ、由利はそんなこと気にしなそうだが。


「あー!!また負けた!!もう一局!!」


「いいですよ」


と、二人の時間がしばらく続き。

部室(教室の)ドアが開いた。


「天川せんせー!!よかった!間に合った!」


海野が入室してきた。

155くらいの小柄な矮躯。ブレザー。長めの髪だが、奇麗に整われていた。明るくなった表情はまさに童顔のそれで、『そういうの』が好みのお姉さんはたまらないであろう顔つき。


「聞いてよもー!あの上杉っていう先生まじでやばい目で僕を見てくるんだよ!鬼怖いよ!」


と天川にすり寄ってきた。


「…災難だったね。よちよち」


と冗談ぽく海野の頭をなでる天川。

その後遅れて、三好、望月が入室してきた。


「ほらねー!天川せんせいは『こんなこと』でへこたれないよ!おふた方!」


何故か海野が自慢げに三好と望月に向けてそういった。

…実際はへこんでいたが黙っておこう。


「ねえ、天くん。あーしたち…友達のままだよね?」


と、不安そうに天川に聞いてきた。

 

「そうだよ」


と天川は返せた。

返すことが出来た。


《アルマ》


《なんです?》


《本当にありがとうな》


《べ、別に!落ち込んでるあなたんて気持ち悪くて見たくなかっただけです!》


《お前のツンデレは可愛いな》


《呪い殺しますよ?》


《本望だよ》












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