欠落
わたしたちが向かい合ったとき、少し下から、あなたはいつも私の目をその深く、好奇心に満ちた目で見つめる。その目は潤んだように透き通っていて、その奥できらきらと光る、あなたの優しさが見える。けれども、私は視線をあちらへやってしまう。きっとあなたはそれに気がついていて、わたしの目が、またあなたの目に帰ってくるのを待っている。
わたしは、あなたの優しさにおずおずと少しの言葉を発する。
「最近はどうですか。ぼくの方は前より良くなったと思います。」
あなたはただ「うん」と言い、また、少しそらされた私の視線の帰りを待つ。ときどき、わたしは少し気の利いたことが言えて、あなたはくすくすと笑う。