玩具の城 エピローグA
僕は青いロボットの夢を見ていた。
僕にとって元に戻らないもののひとつ。
けれど、悲しい思い出なのに、この夢は悪くないと微かな意識の中で思っていた。
捨ててしまった事実。
欲しかったものが理想とは違った現実。
その理想と決別しなくてはならないこと。
潰れてしまった思い出の場所。
戻らない時間。
何をとっても何ひとつとして解決していないし、好転もしていない。
今回のことが何か僕の後悔を和らげてくれたわけでもない。
それでも少しだけすっきりした。
あの時、やはり泣いてしまっていたのだと思う。
ずっと溜まっていたものが、ようやく全部出たのだと。
鼻の斜め上。両眼の下の辺りがひくひくする感じはもう無い。
夢見心地で、いつも青いロボットに会っている。
謝ることもある。
けど笑うこともある。
そんな普通の夢。
もう死んでしまったあのロボットを夢の中で玩具にするのは自分勝手かもしれない。
でも僕は都合良く解釈して進むことにした。
だから、青いロボットの夢の終わりは、
いつも、笑顔で……
「……ん、むぅ」
カーテンから差す日差しが眩しい。
時計に目をやるともう昼前だった。
休日と言えど昼前になると身体は動くのだ。特に今日はやるべきことがある。
枕元の携帯電話を取って、ベッドの上に座る。
昔の記憶を辿って、携帯のキーをタッチしていく。意外にすいすいと数字が浮かんできたが、最後の0を打つ直前になって指が止まってしまう。
自分の弱さから逃げるように天井を見上げると、部屋右奥の机に青いものがある。
その青色は昔からカッコよくて、大好きで、やっぱり僕も負けていられないと思うのだ。
「ありがとう」
僕はキーを押した。
「もしもし。あ、ばあちゃん? 久しぶり。元気してた? こっちは元気」
「うん、うん。そうだね。ところで……」
どうせ昔に戻れないなら、
「今日さ……」
止まるか、
「ばあちゃんの家、行って良い?」
いや、進むしかない。




